職員の読書日記 職員の読書日記03

このページでは、職員の読書日記を紹介いたします。
発達協会の職員である私たちが、出会った本の感想などを紹介するページです。


第3回
「皮膚感覚の不思議」
山口 創 著/講談社/924円

(社)発達協会 神谷指導室 御園生裕子(精神保健福祉士・保育士)

「ここを触られるのをすごく嫌がるんです。」というような保護者の方からのお話を聞くことが多い中で、触覚についての知識を深めたいと思い、出会ったのが本書です。「触れる!、痛い!、痒い!、くすぐったい!、気持ちよい!、皮膚感覚と心」の6章から成る本書を読み、これまで聴覚や視覚に比べ、なくなったら困ると心配したことのなかった触覚が、いかに大切なものなのか、特に子どもと接する中でいかに重要な感覚なのかを知りました。
聴覚を通す声かけや、視覚を通す見本を見せることよりも、まずは手を添え、一緒に動かして教えることが、一番、子どもに伝わりやすいことは既に感じ、実践していましたが、この時も触覚が関わってきます。本書の中でも、折鶴の折り方を覚えることを例に、実際に手を動かして認知してこそ「身体で覚える」、「身につく」ことになると述べられています。今後も、一方的な説明をしたり、大人がやってしまったりするのではなく、「子ども自身が触って、動かしてできた」という経験を増やせるような指導をしていきたいと、再確認しました。
また、指導の中でできたときにハイタッチをする、反応が乏しい子にはくすぐって笑顔をひき出す等、触れることで喜びを共有しやすく、誉めていることを伝えやすいことも感じていました。その点も、くすぐり遊びのようなスキンシップは絆を深め、満足や喜びを与え、将来の対人関係の形成にまで影響を与えるというような本書の記述から、自分の指導に裏付けを得られました。よく笑う方が学習能力に長けているという実験結果も書かれており、笑顔で共感する大切さも改めて感じました。
冒頭に紹介した「触られるのを嫌がる」という触覚に対する過敏さについても、脳の仕組みの説明から理解を深められました。指導室の中で、触覚過敏への働きかけとして良いと言われていた「エプロンのポケットに入っているオヤツを取り出す遊び」や「圧をかけて落ち着かせること」の有効性も紹介されており、納得できました。
その他、痛みに関しても色々興味を惹く記述がありました。痛みには民族差や性差があること、子どもは親の対応を見て自分の痛みやケガの重大さを解釈していること、「痛いの痛いの飛んでいけ〜」の効能等、心理的要因の影響が説明されていました。また、痛みは客観的にわかるものではないため、痛みの経験が少ない子どもは他人の痛みもわからなくなってしまうというのが心に残りました。最近は苦痛を味わう経験が取り除かれていることが多いので、危害が及ぶ刺激から逃れる反応が遅く、かつ不十分になりやすいとのこと。更に、自らの痛みを和らげる方法を学べないだけでなく、他人の痛みに対する理解や共感も難しくなっているそうです。「「快」だけに偏ると、たとえば偏食や我がまま、自己中心的な心に育つ危険がある。」と述べられています。
本書を読むことで「皮膚感覚から心を育てる」という真意を理解できました。特に子どもを育てる方々にお薦めの一冊です。




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