職員の読書日記 職員の読書日記04

このページでは、職員の読書日記を紹介いたします。
発達協会の職員である私たちが、出会った本の感想などを紹介するページです。


第4回
「子どもの理解と援助のために 感覚統合Q&A」
佐藤 剛 監修/永井洋一・浜田昌義 編集/協同医書出版社/2,940円(税込)

(社)発達協会 王子指導室 瀬麻起子(作業療法士)

 私は現在、自閉症や広汎性発達障害を持つお子さんたちの療育を行なっていますが、大学生の時、見学実習で初めて自閉症や広汎性発達障害を持つお子さんたちと会った日のことを、今でもはっきりと覚えています。ほとんど知識のなかった私は、ずっとクルクル回っているお子さん、換気扇をずっと眺めているお子さん、粘土遊びを強く拒否するお子さんなどを目にし、とても不思議に思いました。「一緒に遊ぼう」と笑顔で近づいても全く相手にしてもらえれず、居場所を転々とするお子さんを追いかける一日でした。とても衝撃的でしたが、それと同時に自閉症や広汎性発達障害に興味を持ちました。その直後に出会ったのがこの本です。
この本は、三部構成になっており、第一部では実際の子ども達の姿を通して、なぜこのようなことが起こるのか、またその対処法が感覚統合の視点から述べられています。この第一部に「クルクル回ったりジャンプを繰り返す行動をするのはどうしてか」「つま先立ちをしているが矯正しなくてよいのか」「粘土や砂遊びが苦手で取り組もうとしない」など、私が不思議に思っていたことがそのまま書かれていました。「なるほど」と納得することも多くありました。それと同時に、お子さんの抱えている大変さも感じることができました。第二部では専門的援助としての感覚統合療法について実際どのようなことを行なっているのか、第三部では感覚統合と脳のしくみについて、脳の働きやその発達を踏まえて書かれています。全体的に難しい専門用語も比較的少なく、基礎知識がなくても納得しながら読み進めていくことができました。さらに第一部・第二部ではその質問に関連する質問がどこにあるのか記載されているので、一つのことについてじっくり知ることもできました。
実際に自閉症や広汎性発達障害を持つお子さんたちと関わる仕事に就き(感覚統合療法は実施していませんが)、困っているお子さん、親御さんを援助する上で、この本に出会ってよかったと思っています。親御さんが「〜ができないんです」と困っていらっしゃる実際の場面や他の活動場面でお子さんの様子を観察したり、お子さんと関わったりする中で、「〜ができないのは(〜がうまくいかない)のはどうしてか」ということを探っていく視点を持つことの大切さを、この本を読むたびに感じます。どういうところに困難さを抱えているのかが見えてくると、どういう介入をすればいいのか、どういう取り組みをしてお子さんの力を伸ばしていくのか、どういうふうに環境を整えていけばいいのかなど、具体的な援助の方法が見えてきます。
例えば、高学年のお子さんたちと調理に取り組むことがあります。その中できゅうりの輪切りがなかなかうまくできないというお子さんがいらっしゃいます。同じ「輪切りができない」というお子さんでも、"薄く"という基準がわからずきゅうりの厚さにばらつきがあるお子さん(A)、動き始める前の"溜め"がなくどんどん切っていってしまうお子さん(B)、動きがうまくいかず斜めに包丁が入っていってしまうお子さん(C)などがいらっしゃいます。Aの場合は、見本を見えるところに置いておいたり、具体的に「〜mmに切る」と示したりして練習をしています。Bの場合には、大人の「せーの」に合わせて包丁を下ろす(切る)ようにし"溜め"をつくる練習をしています。またCの場合には、包丁の背に人差し指をのせるようにし、包丁をそのままストンと真下に下ろして切る、持ち方と動きの練習をしています。

感覚統合について知りたいという方にはもちろんお薦めですが、発達につまずきのあるお子さんたちについて理解を深めたいと思っていらっしゃる方にも、参考になる一冊だと思います。




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