職員の読書日記 職員の読書日記06

このページでは、職員の読書日記を紹介いたします。
発達協会の職員である私たちが、出会った本の感想などを紹介するページです。


第6回
「自閉症の社会学」
竹中 均 著/世界思想社/2,415円(税込)

(社)発達協会 神谷指導室 山田亮吾(言語聴覚士)

 療育を通してお子さんと関わらせていただく中で、日常的なルールがお子さんたちに通じなくて驚かされることがあります。そして、そういったルールを彼らに伝えようとすると、日ごろ「当たり前」と思っていたルールがいかに曖昧で複雑なものかを実感することがあります。この本は、そのようなルールが多く存在する私たちの社会を、自閉症の人たちの視点から捉えなおした本です。
 この本を読んで、改めて一般社会で生きていく上でのルールが目に見えにくく曖昧であることを感じました。たとえば、人との距離間です。人との距離感は、相手との親しさ、性別の違い、年齢、場所や状況によってその都度変化します。小さい頃はお母さんとぴったりひっついていてもおかしく思われませんが、年齢が大きくなると周りからは変な目で見られるようになります。また、同性と異性とでも違和感のある距離は違います。それらは当り前のようですが、改めて考えるととても複雑でしかも曖昧です。しかし一般的には、それぞれの距離感が具体的に決められているわけでなく「なんとなく」行われていることです。そのような「なんとなく」行われているルールを理解することが苦手な自閉症の方々は、そういったルールが理解できずに困難さを抱えることがあると本書は述べています。
 では彼らは、そうした社会のルールをどのように理解しているのでしょうか。著者は、彼らの社会化の道のりは〈普通の〉子どもの社会化の過程とは大きく異なると言及しています。〈普通の〉子どもたちが「なんとなく」理解する事柄を、自閉症の方々は「具体的な知識の積み重ね」により理解していくということです。確かに日頃の療育の中で彼らにルールを伝えていると、具体的に伝えることで伝わりやすいように感じます。先に例に挙げた、人との距離であれば、具体的に相手との距離を数値で示したり、近づいてはいけない人や場所を具体的に伝えます。日常生活における技能を伝える際も、歯磨きや着替えなど、具体的に手順を決めて伝えたほうが生活の中で定着しやすいように感じます。このように曖昧なルールや手順を「具体的な知識」に置き換えていくことが、彼らが社会に適応していく過程であると思われます。
 本書を読んで大切だと思ったことは、自分の「当たり前」が他の人にとっては「当たり前」ではないということを意識することです。「これは知っていて当たり前だから、なんとなくわかるだろう」と決めつけるのではなく、何が分からなくて、どのように伝えると分かりやすいかを考える姿勢の大切さを、改めて感じさせられた一冊でした。

 




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