職員の読書日記 職員の読書日記07

このページでは、職員の読書日記を紹介いたします。
発達協会の職員である私たちが、出会った本の感想などを紹介するページです。


第7回
「ピーティ」
ベン・マイケルセン 作/千葉茂樹 訳/すずき出版/1,575円(税込)

(社)発達協会 南指導室 鈴木 友紀子(社会福祉士)

 何年かぶりに手にした児童書は、生まれながらに脳性まひがあったため、周囲から重い知的障害があり意志疎通ができないと誤解され、人生のほとんどを施設で過ごすことになったピーティの物語でした。
 「脳性まひ」は、妊娠中から出産直後に何らかの原因で脳に損傷が生じたことによって引き起こされる、運動機能に障害がおこる症状です。物語の舞台は1920年から1990年代のアメリカ。ピーティが生まれた頃は、脳性まひについてよくわかっておらず、差別的で誤解の多い時代でした。2歳で精神病収容施設に入ってから、自分の考えや思いを周りの人に伝えられず、孤独の中で長年過ごす様子は読んでいて悲しい思いにさせられます。そんな中でもピーティは、目にするものや耳にするもの、一つひとつに感動し、人やものとの出会いを大切に過ごすのです。

 読みすすめていく中で、大学時代の学友Aさんのことが思い起こされました。一番前の席で一生懸命にノートをとる姿を見て、彼女に出会ったばかりの私は驚きました。Aさんは脳性まひがあり歩くのが大変なほどでした。無知とは恥ずかしいことです。からだの動きにまひがある彼女が同じ講義を理解できるのか疑問に思ったのです。Aさんと話す中で、コミュニケーションが当たり前にできることがわかり、彼女への誤解は解けました。

 私は普段、知的障害や発達障害がある子どもの療育を行っています。「できないだろう」と思われていることも、周りの思いこみの場合が時にあります。例えば、着替えをすべて大人に手伝ってもらっているお子さんが、自分でできるよう、お手伝いする手を少しずつ離していくと、動きを覚え、徐々に「自分でやりたい!」意欲が出てきます。「できた!」という子どもの嬉しそうな表情は、お子さんに対する周りの人の見方を変えていきます。コミュニケーションが苦手なお子さんでも同様です。相手を知ろうと、思いを至らせ、伝え合うことはとても大切なことと日々感じています。

 物語の中でピーティも、彼の能力に気付き、思いを伝え合う友人ができます。お互いのことを分かり合おうと「あの手この手」で考え、動いていくピーティの姿は豊かであり、決してコミュニケーションは言葉だけではないのだと改めて気付かされました。

 物語の後半、1977年にピーティは州の施策で地域の介護ホームに移ります。「施設から地域へ」という現代の障害者の歴史もかいま見ることができる中、本当の意味で地域の中で暮らしていくということは何かということをピーティは教えてくれるのです。それは、ただ同じ社会の中にいればいいのでなく、周りと関わりを持ち続ける中で、お互いを知り、尊重し合う。そのことが、同じ社会、同じ地域で生きることになっていくということです。
 児童書でありながら、一つひとつの出会いを楽しむピーティの姿は、大人が読んでも生きる意味を考えさせられる、胸を打つ物語です。ぜひご一読下さい。

 

 




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