医療ミニコラム



病気への対応や、検査のこと。医療に関する情報をお伝えします。

薬物療法が必要なときとその実際 

■耳の働き(聞こえ)とことば

■小児の失語症および失行、失認について

■ことばをつかさどる脳の働きの話

■小児の言語障害の種類と原因

■てんかんの治療

■肥満について

■便秘について

■ひきつけ

■てんかん

■頭を強く打ったとき

■子どもの心身症

■うまく症状を訴えられない子ども達の不調や痛みを知る



★薬物療法が必要なときとその実際 
発達障害のある子どもたちのさまざまな問題についての対応では、理解あるかかわりと環境整備や生活指導が中心となり、多くの場合、薬物治療は必要にはなりません。ただ、問題となる症状のために、家庭生活や集団生活、そして学習することも困難で、二次的な障害がつよく懸念されるとき、あるいは、薬物療法が必要な精神疾患と思われるときは、副作用に注意をしながら、薬による治療を併用することがあります。以下、症状別に治療の実際を簡単に述べます。

1.感情のコントロールがかなりむずかしいとき
まずはどのようなわけで情緒が不安定になっているのか考えます。

[広汎性発達障害あるいはその要素がある場合]@思い通りにいかない、スケジュールの変更などで見通しがつかない不安からくる反応、A苦手な刺激(特定の音など)への過敏な反応、B昔のつらい経験を思い出しての反応(フラッシュバック)があります。このような場合は、主にドパミン神経の働きを弱める薬(抗精神病薬:リスペリドン、ピモジド、ハロペリドール、クロルプロマジンなどのいわゆる安定剤)を少量使います。フラッシュバックには脳内のセロトニン作用を強める選択的セロトニン再吸収阻害薬(SSRI:フルボキサミン、パロキセチンなど)が有効なことが多いです。

[多動性障害あるいは多動傾向がある場合]じっくり考慮することなく怒ってしまうことがあります。思い通りにいかなかったことがきっかけとなることが多いですが、自分が意識せずに迷惑行動をとり、それを注意されたことを被害的に受け止め、怒ってしまうこともあります。このような場合は、中枢神経刺激剤(リタリン)により、制御しやすくなることが多いです。過敏や興奮しやすさ、心理的緊張が目立つときに中枢性α2刺激薬の塩酸クロニジンや少量の抗精神病薬を使うこともあります。

[精神的な病気のために感情がコントロールしにくいと思われる場合]@統合失調症では、幻覚や妄想のためにつよい不安や恐怖感がおこり感情のコントロールを失いますが、抗精神病薬が有効です。A気分障害(うつ病、躁うつ病、躁病)でも感情のコントロールはできにくいです。とくに子どもや大人でも情緒面の発達が未熟な人は、うつ状態でも攻撃的になったり、いらいらするといったことがしばしば見られます。こんなときは、従来の抗うつ薬、SSRI、抗不安薬(ベンゾジアゼピン系薬物)、一部の抗てんかん薬、ときに抗精神病薬が効果的です。躁状態には炭酸リチウムが効果を示しますが、腎障害などの副作用があり、血中濃度を見ながら使います。

[てんかんと関連する場合]てんかん性脳波異常が著しいために情緒不安定になることがあります。稀には怒りの症状がてんかん発作そのものであることもありますが、このような場合は抗てんかん薬(カルバマゼピン、バルプロ酸など)で改善が期待できます。

2.多動、不注意、衝動性が著しいとき
中枢刺激剤であるメチルフェニデート(リタリン)が約8割で効果を示しますが、活動的な良い面もなくす可能性があるので慎重に使います。具体的には、一般的に1回投与量0.3〜0.5mg/kgを朝1回、あるいは朝昼の2回服用します。有効なのは服用後4時間前後ですので、状況によっては午後少量を追加することもあります。副作用に食欲不振、吐き気、頭痛、動悸、興奮、チックなどがあります。
その他、少量の抗精神病薬、抗てんかん薬が有効な場合があります。

3.睡眠障害が著しいとき
入眠剤(抗不安薬と類似点もあるベンゾジアゼピン系薬物)を使うのが一般的ですが、不安や抑うつ状態があって眠れない時は、抗不安薬や抗うつ薬、興奮が著しくて眠れないときは、抗精神病薬を使うこともあります。催眠作用のある脳内ホルモンといわれるメラトニンは効果があれば、副作用をあまり心配せずに使えます。尚、メラトニンは薬剤として認可されていないため、使えない医療機関が多いと思います。われわれのクリニックでは、説明した後、ご家族やご本人から同意書を得て使用しています。睡眠覚醒リズムがくずれているときは、このメラトニンのほか、ビタミンB12の効果もあることがあります。          

4.不安やうつ症状がつよいとき
不安や恐怖を抑える抗不安薬、あるいは、不安も弱め、抑うつ気分を軽減するSSRI、セロトニンのみでなくノルエピネフリン作用も強めるSNRIなどの抗うつ薬を使います。つよい症状の場合、ときには、抗精神病薬をつかうこともあります。

5.その他                     

[強迫性障害]
SSRIが効果的です。

[解離性障害]
症状により、抗不安薬、抗うつ薬、抗精神病薬が使われますが、自己防衛的な意味合いもある症状なので、薬物療法だけでは大きな効果は期待できません。

[チック]
抗精神病薬が使われることが一般的ですが、それほどつよい症状でなければドパミンの少量で効果を示すことがあります。後者の方が、子どもでは副作用の心配がありません。短期間であったり、日常生活や心理面での支障がなければ、薬物治療の必要もありません。

[過呼吸症候群]
一般的には抗不安薬を必要なときに屯用、あるいは持続的に使いますが、うつ症状や不安が強いときは、SSRIも効果的です。

[摂食障害]
SSRI、抗不安薬、抗うつ効果と精神安定効果、また食欲増進作用もみとめられるスルピリドで効果が期待できます。
以上にあげた薬の他、気分を和らげ、不安を軽くするため、副作用の心配が少ない漢方薬を単独あるいは補助的に使用することもあります。


(社)発達協会王子クリニック 石崎 朝世(小児科医)


★耳の働き(聞こえ)とことば
(1)難聴の種類
 耳が聞こえない、聞こえにくい(難聴)と言語発達に重大な影響を及ばします。音を開くということは耳だけではなく脳で認知してはじめて意味合いをもってきます。聴覚は単に言語だけの問題にとどまらず言語も含めた精神発達に重要な役割をしています。

 高度の難聴であれば音に対する反応がわるい(ない)ことで比較的早い時期に発見されますが、軽度の難聴ですと呼び声に反応するため発見されにくく、言語発達の遅れが明らかになって初めて難聴の・存在に気づかれることが多く、早期発見が望まれます。

 さて、難聴の種類には、伝音性難聴と感音性難聴とがあります。その前に簡単に音の伝わり方を述べますが、空気中を伝わってきた音は耳の穴から入り、鼓膜までの通り道である外耳道を通って、つきあたりにある鼓膜を振動させて次の中耳へと行きます。
 中耳にはツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨という三つの小さな骨があり順次振動が伝わり、次に内耳のりンパ液を振動させます。ここまでが伝音系で、音波という物理的エネルギーが振動という形のまま伝わる部分で、これ以降振動は生物学的エネルギーであるインパルス(神経信号)に形を変えて神経を伝わっていきます。

 リンパ液の振動は、内耳のラセン器(感覚細胞から成る)に伝わり、さらに感覚細胞の根元にきている聴神経である蛸牛神経に伝わります。それから何回か神経を乗り換えて、脳幹部を通り、最終的に大脳の聴覚に関係している側頭棄の聴覚領に達し、音として感覚、認知されます。
 後半の内耳の感覚細胞から大脳皮質までの聴覚神経系を感音系といいます。

 ということで、伝昔系の部分に問題がある難聴を伝音性難聴、感音系の部分の場合は感音性難聴と診断されます。伝音性難聴と感音性難聴を併せもつこともあり、混合性難聴といいます。感音性難聴の中でも大脳皮質に起因する(皮質性難撃聴覚の認知障害は、聴力は保たれている=音はきこえるけれど認知できないため音を理解できないという状態です。

*参考文献:田中 美郷編著『小児のことばの障害』(医歯薬出版) 
田中 美郷著『小児感音難聴』(小児科診療Vol56.1993)
鈴木 篤郎著『耳鼻咽喉科学入門』(南山堂)
 
発達協会王子クリニック     洲鎌 倫子


★小児の失語症および失行、失認について
 失語症、失行、失認は、皆、大脳の連合野が局部的に障害されたときにおこります。
 小児失語症は、言語獲得後の損傷によってもたらされる言語的シンボル(language symbols)の理解と形成の障害です。言語理解に比し、言語表出面に障害の著しい「運動性失語症」(前頭葉運動性言語領域の障害)と自発語は保たれているが人のことばを理解しえない「感覚性失語症」(側頭葉感覚性言語領域の障害)があります。

 小児では感覚性失語症といっても発達途上であり、理解が十分でなければ、言語衝動も少なくなり、表出言語も増えず運動性失語症に近い病像になります。

 予後を左右するのは、発症年齢と脳の損傷の範囲と程度です。一般に5歳ごろまでは言語機能が脳の一定領域に固定していないので代償機能が働き回復しやすい。もちろん脳の損傷の範囲が大きく程
度がひどければ回復は困難です。

 構音失行(発語失行)は、話しことば(speech)の障害で、ことばに関する運動プログラミング段階の障害です。呼吸、発声、構音器官の筋運動には異常なく、構音、プロソディ(韻律)に限られた障害がある状態です。発達途上にあらわれる失行は一般には予後良好といわれています。

 失認といわれるもののうち、言語に関係する聴覚失認は、音を知覚することはできますが、その性状を聞き分けて理解することができない状態をいいます。頻度は稀です。

*参考文献:田中 美郷著『小児のことばの障害』(医歯薬出版)
半田 肇監訳『神経局在診断』(文光堂)

 社発達協会王子クリニック   石崎 朝世

 
★ことばをつかさどる脳の働きの話

ことばでのやりとりには、いろいろな過程があり、その過程で脳はいろいろな働きをします。
 脳の働きを簡単に紹介しますと、認知する(聞いてわかる)過程では、まず音を聞き、次にことばの音素として認知し、さらにことば全体、発語全体をとらえ、また視覚的に到達する情報(文字)をも効果的に統合して理解し、抽象的思考へと変換させます。
 表出する(話す)過程では、話そうという欲求を深め、また目的観念を生じさせます(概念形成段階)。
 次に発生に要する身体の器官を空間的にも時間的にもうまく使い、予めプログラミングされた様式に従ってことばを話させます。
 これらの働きをするための中心的役割を果たす脳の領域はある程度想定されていますが、厳密にその役割が脳の一定の部位だけに局在しているわけではありません。特にことばを理解する、抽象的思考への変換、概念形成は前頭葉、側頭葉を中心とした大脳全体の機能と考えられます。
 さらに複雑な心理過程と関連した言語活動全体はまさに脳全体のダイナミックな営みそのものと言えます。
 構音(発声)には、錐体路系、錐体外路系、小脳といった運動を制御する中枢も密接に関与します。

*参考文献:田中美郷編著『小児のことばの障害』医歯薬出版

(社)発達協会王子クリニック 石崎朝世(小児科医)

 
★小児の言語障害の種類と原因
 

小児期の言語障害は、大きく、「言語:language」の障害と「話しことば:speech」の障害に分けられます。
 前者は、言語そのものが発達していないために話せない場合で、聴覚障害(難聴)、精神遅滞、自閉症、小児失語症、特異的言語発達障害によるものがこれに属します。
 後者は、言語そのものは発達しているのに言葉が話せない場合で、難聴や精神遅滞のはい脳性麻痺、運動性言語遅滞、発声器官や麻痺の機能障害による構音障害、発語失行、口蓋裂、吃音などによるものがこれに属します。
 対応の仕方、治療・訓練の仕方を考えるときに、この両者を分けて考えたほうがよいのですが、実際にはこの両者は合併して存在することが多いのです。また障害の程度から見ると、小児では一般に前者の言語の障害によるほうが重い障害になります。言語の障害があると結局、話しことばによっても、また書字などによってもコミュニケーションが困難になるからです。
 またもうひとつ忘れてはならないのは、不良言語環境による言語発達の遅れです。よほどひどい環境でなければ、これだけで言語障害を呈することはありませんが発達障害がある場合、環境要因が言語の発達に特に大きく影響する可能性があります。


*参考文献:田中美郷編著『小児のことばの障害』医歯薬出版

(社)発達協会王子クリニック 石崎朝世(小児科医)
 

 
★てんかんの治療
1.抗けいれん剤による治療
 てんかん患者さんの70〜80%は、抗けいれん剤(発作を抑制する薬)で発作を止めることができます。抗けいれん剤はてんかんそのものを治す薬ではないのですが、発作をおさえたり、予防したりすることによって発作をおきにくくします。てんかんの原因になる病気の有無や、発作型、発作の頻度などはひとりひとりちがいますし、薬に対する反応も異なりますので、適切な薬を適切な量、適切な期間のむことが大切です。抗けいれん剤はたくさんの種類がありますが、どの薬から使うかにはおおまかな基準があります。なるべく少ない種類の薬(できれば1種類)を、効果のある最少量で、しかも副作用の出ない量でのむのが理想ですが、充分量をのんでいるのに発作がとまらない場合や、副作用がでてしまった時などは、ちがう薬に変更するか、もう1剤加えたりします。
 さて、抗けいれん剤をのみ始めることになったら、まずのみ忘れないことが大切です。風邪薬など他の薬との併用もかまいません。むしろ抗けいれん剤をその時だけ急にやめたりしては、発作をおこしかねません。ただしいくつかの薬は、服用中の抗けいれん剤に影響を与えることがありますので、医師に申し出たほうがよいと思います。
 抗けいれん剤は1日2〜3回のみます。長時間効いている製剤なども開発されており、1回でいいものもあります。実生活に即したのみかたでないと結局効果があがらなかったりするので大抵は、1日2回ですが、難治なものや、1日中平均的に効果をあげておきたい時などは、3回以上のこともあります。食後の服薬が副作用を防ぐ意味でも、より長い時間効果をもたせる意味でも望ましいのですが、食事がとれない時でも抗けいれん剤はのみ忘れないようにしないと効果が落ちてしまいます。
 抗けいれん剤をいつまでのむのかということについては、大体発作がとまってから3〜5年は必要です。早めに服用をやめるとやはり再発率も高いようです。
 副作用としてとくに抗けいれん剤が過量な場合や多剤服薬している時に、眠気が強い、ぼんやりしている、反対に興奮したり多動になったり、からだがふらついたり、学力が低下したり、食欲がなくなったりといった症状や肝機能障害がでることがあります。

2.その他の治療
 点頭てんかんという特殊なてんかんでは、ACTH療法というホルモン療法が効果的です。その他のてんかんでも使われることがありますが、ビタミンB6が効果を上げることもあります。
 最近は漢方も使われるようになりましたが、それは単剤というよりも附加的に使われる薬です。小柴胡湯合桂枝加芍薬湯(しょうさいことうごうけいしかしゃくやくとう)、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、などが使われます。
 外科治療では、最近またその有用性が言われるようになってきましたが、手術というものは本人にとっても家族にとっても大変なことですので最終的な方法です。しかも適応になる例は非常に限られます。

(社)発達協会王子クリニック 洲鎌 倫子(小児科医)

 
★肥満について
 肥満が関与して成人病につながることはよく知られており、特に高血圧、高脂血症から動脈硬化、成人型糖尿病、脂肪肝などが高率に発生することが知られています。

予防と治療
●運動療法
 急激な運動を短期に行うよりは、軽度〜中度の運動を持続的に行う方が皮下脂肪の燃焼には効果があるといわれています。
●食習慣
 乳児期に食べが悪く、体重増加が悪い場合でも、無理やり食べさせる必要はありません。あまり積極的に食べないために、食べやすい炭水化物主体の、口当たりが良く軟らかいものばかり与えがちですが、将来偏食傾向を招きやすいので、繰り返し何でも食べさせるように心がける必要があります。
●薬物治療
 肥満に直接対する薬物治療は、原則として行いません。運動療法や食事療法の調節で、肥満の治療を行うのが原則です。

東京小児療育病院 山田 和孝(小児科医)

 
★便秘について
運動不足になり気味な、ダウン症などの発達障害児は、便秘傾向が強く療育上の大きな障害の一つとなっています。そこで今回は、便秘の治療法を取り上げたいと思います。
便秘は一般に器質性便秘と機能性便秘に大別され、機能性便秘はさらに弛緩性便秘、痙攣性便秘、直腸性便秘(排便困難)に分類されます。

治療法
治療の基本は、器質性便秘を除いてなるべく薬物に頼らず、排便習慣の改善、心理療法、運動療法や食事療法を行うことです。
●規則正しい排便習慣(排便はなるべく朝食後に)
規則正しい生活、適度の運動と休養、十分な睡眠が望ましい事は当然ですが、最も重要な事は規則正しい排便習慣です。
朝食後、たとえ便意がないときでも、決まった時間に排便を行うようにしましょう。
●心理療法
 患者さんの中には、重大な器質性疾患(癌など)が有りはしないかと不安を抱く者が多く、その場合は検査を速やかに行い、器質的病変の無い事をよく納得いくように説明し、時には心理療法を行うのが効果的です。
●運動療法
 運動は血液循環をよくすることにより大腸を活発にし、弛緩性便秘だけでなく、痙攣性便秘に対しても、精神的負担を除く意味でも有用です。ダウン症児は全身の筋緊張が低下しており、かつ筋力も弱いものです。腹筋群は筋緊張が低下し、筋力も弱くかつ腹直筋解離のため、腹部を突出させているダウン症児は多くみられます。腹筋力をつけ筋の緊張を高め大腸の動きを良くするためにも、運動療法は重要となります。一方、寝たきりで移動できない患者さんに対して、腹部をマッサージするだけでもかなりの効果が期待できます。
●食事療法
 食事療法の基本は規則正しい食生活と野菜、脂肪、良質の蛋白、水分などをバランス良く取り、少食にならずかつ過食にならずです。

東京小児療育病院 山田 和孝(小児科医)

 
★ひきつけ
 ひきつけ、けいれん、発作、などいろいろな言い方がされますが、意味は同じで、突然に意識を失い、体の自由がきかなくなる状態のことをいいます。意識は完全になくなるものから、ボーッとする程度のものなど様々で、体のほうも突然ひっくり返って手足がガクガクするものや、動作が数秒止まるものなど個々でちがいます。
 "ひきつけ"というのはひとつの症状であり病名ではありません。
原因はたくさん考えられます。熱性けいれん、てんかん、髄膜炎、脳炎、頭部外傷、脳血管の病気などなど。たとえば風邪をひいた時に熱が出ますが、熱は咳やハナミズなどいろいろな症状のひとつで、ほかの原因でも熱がでるように、ひきつけという症状をもつ病気はイコールてんかんだけではありません。ですから、はじめてひきつけた場合はいろいろな検査が必要であり、原因をつきとめなければなりません。病気によってその後の治療が異なってくるからです。
 さて、ここではひきつけた時の対処の仕方について述べたいと思います。だれでもはじめてひきつけたところを見たらびっくりするし、あわてるなといわれても無理な相談かもしれません。でもまずは「あわてるな」です。落ち着いてください。
そして口の中に指やタオル、箸など入れないでください。舌を咬むことはないので、そういったものを入れるのはかえって危険です(発作の開始時に咬んでしまうことは稀にありますが、最中にはありません)。衣服をゆるめて楽な姿勢でねかせます。吐いた物をのむと窒息していしまうので体ごと横向きにします。そして余裕があったら時間をはかってください。さらに手足を突っ張っていたとかガクガクしていたとか目は上を向いていたとか、左右でちがいはなかったかなど様子をよくみてください。
 熱性けいれんではほとんどのひきつけは数分で止まり命にかかわることはまずないのですが、5分10分と長引く場合はほかの病気が原因かもしれません。指示を仰いでください。
 ひきつけが30分以上続くとけいれん重積といい緊急な治療が必要です。けいれん重積の原因としてはてんかんが多く、急性脳症、脳炎、髄膜炎がそれに次ぎます。ジアゼパムなどの静脈内投与や全身の管理が必要です。まずはけいれんを止めて、原因となった病気の治療を並行して行います。

         発達協会王子クリニック 洲鎌 倫子(小児科医)

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★てんかん
1)てんかんとは
 人口のほぼ100人に1人といわれており、決してまれな病気ではありません。てんかんという病気は発作を主な症状とする慢性の脳の病気です。てんかん発作のおおもとの原因は、脳の細胞がいつもよりもたくさんの電気をだしてしまうことです。そしてその過剰な電気がいろいろな発作症状をひきおこします。脳の細胞は生きている限り微少な電気を出しています。この電気は非常に小さいので、頭に手を当ててみてもビリビリするわけではありません。

2)いろいろなてんかん発作
 てんかん発作は異常な電気活動のおきた脳の場所によっていろいろな症状や脳波所見を呈します。なぜ場所によってちがうのかというと、もともと脳の表面(大脳皮質)が、場所によってちがった働きをしていて、分業をしていることに関係しているのです。
 てんかん発作の原因となる病気(基礎疾患)は、脳炎の後遺症や頭部外傷など原因のはっきりしているものもありますが、多くのものは原因不明です。全く原因が見当たらず素因(てんかんになりやすい性質)によるものを特発性てんかんといいます。
 また、もともと脳に障害があるとてんかんをおこしやすいといえます。たとえば脳性マヒや精神遅滞、自閉症などです。

(社)発達協会王子クリニック 洲鎌 倫子(小児科医)

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★頭を強く打ったとき(緊急時の対応@)

 階段から落ちたり転んだりして、頭を打った時に、病院へ行ったほうがよいかどうかの判断は次の点を参考にしてください。

@頭を打った直後からぐったりして呼びかけにも反応しない時は、脳挫傷が疑われますので、すぐに救急車を呼んでください。
 A頭を打った時すぐに泣き、意識がはっきりしている場合。
 「こぶ」ができていたらタオルや氷嚢などで冷やします。「こぶ」は頭蓋血腫といって頭蓋骨の外側にできます。冷やすと数時間のうちに小さくなります。その後、ふだんと特に変わりなく遊んだり、食べたりしていれば、そのまま様子をみてください。

 ただし、次のような(B、C)場合もありますから、頭を打った日、時刻、その時の状況などは記録しておくとよいでしょう。
 B頭を打った直後は何ともなくても、数時間経ってから、吐いたり、いつもと違うぐずりかたをしたり、意識がはっきりしないような時は、すぐに脳外科のある病院を受診してください。頭蓋骨の下に血がたまってきた可能性があり、その場合、至急手術をする必要があります。
 頭を打ったときからじわじわと出血してきできた血の塊が、脳を圧迫して症状が出てくるまで4日〜7日くらいかかることがあります。従って、保母さんや先生など日中お子さんをみている人にも注意してもらうようお話ししておきましょう。
 C頭を打ってから1ヶ月以上立ってから吐き気や頭痛を訴えたり、ふらつきが目立ったり、左右の手足の動きがぎこちない様子の時は、慢性出血の可能性がありますので、脳外科を受診し、それまでの経過を説明して、検査をしてもらってください。

    (社)発達協会王子クリニック 竹内 紀子(内科医)

 
★子どもの心身症

心身症とは「身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態をいう。ただし神経症やうつ病など、他の精神障害に伴う身体症状は除外する。」と定義されています。小児についても心身症を疑う必要のあるたくさんの病気があります。
 一般に心身症を生じやすい本人側の要因としては、感情を表現することが苦手な「失感情症」や体調の維持に必要な身体感覚(空腹感、疲労感など)への気づきが鈍い「失体感症」があるのではないかといわれています。この要因のため、ストレスを表現せず、また苦痛、疲労などの感覚を自らも意識できず、困難な状況でも頑張ってしまって、病気を引き起こしてしまいます。従って、特に感情表現がうまくできないような子どもや発達障害のある方たちは、心身症を生じやすいといえるでしょう。また、外からのストレスが多い環境ではもちろんですが、一般的な意味での環境はそれほど悪くなくても、発達に遅れがあって状況が理解できなかったり、友達とうまくつきあえないタイプだったり、発達にひどくアンバランスがあったりしても、ストレスが大きく、このような子どもたちが、心身症を起こしてくることをクリニックでもよく経験します。
 心身症の場合、身体と心の総合的なケアや、心身のリラックスを図ることが必要なことはいうまでもありません。その治療法には薬物療法、カウンセリング、行動療法、自律訓練法、筋弛緩法などいろいろな方法がありますが、一番大切なことは、身近な人がその子どものおかれている状況を十分理解することと思います。また、心身のリラックスやストレス解消には、音楽や運動を利用するのも、よい方法ではないでしょうか。

                 (社)発達協会王子クリニック  石崎 朝世(小児科医)

 

 
★うまく症状を訴えられない子ども達の不調や痛みを知る

 小さな子ども、あるいは年長児でもコミュニケーションやことばの発達が遅い子ども達は、病気の症状もうまく伝えられません。このような子ども達の体の不調をつかみ、適切な対応ができるように、重要な病気のサインや痛みのサインについてお話しします。

元気がない・活気がない
 子ども達にとって一番大切な症状です。発熱など他の症状があっても、元気があるうちは心配ないのですが、めだって元気がないときは早く治療を受ける必要があります。これは漠然とした症状なので、身近な家族などの観察が重要です。

食欲がない
 これが明らかなら、何かのサインです。病院の外来で一番多いのは喉が赤く腫れている場合、次に胃腸炎、次いでその他諸々の病気のときに見られます。ときには心理的なSOSサインのこともあります。

トロトロしている 
 このような状態が続くときは、緊急に医師の診察を受ける必要があります。一番多いのは、何らかの原因による脱水です。点滴をうけると速やかによくなります。次いで、かなりの高熱が続いたり、病気が重いために消耗が激しいときです。ときには、脳炎、髄膜炎、一症状であることがあり注意を要します。また、薬の副作用も念頭にいれておかなければなりません。尚、けいれん発作やその後でこのような状態になることもあります。

不機嫌 
 これも注意すべき症状です。子どもがきちんと話せれば、何か訴えているのかもしれないという目で観察しなければいけません。もともと情緒が不安定な子どものいらいらや不機嫌は、つい心理的なもの精神的なものとかたづけがちです。重要な病気のサイン、痛みのサインである可能性も常に念頭におかなければいけません。

顔色が悪い 
 平素、さまざまな顔色の子どもがいるので、やはり身近な人の観察が必要です。これが明らかなときは、病気であることが多いのですが、チアノーゼ(*)や全身蒼白など著しい場合は別として、これだけでは何ともいえません。
(*循環障害や酸素不足で皮膚や唇の色が紫色になること)

吐き気・嘔吐 
 胃腸が悪いときの症状ですが、子どもは他の場合でもすぐ嘔吐します。咳とともに嘔吐しやすいし、咽頭炎、肺炎、尿路感染(腎?炎など)でも嘔吐します。ときには、心理的な要因(環境が急に変わった、緊張することやショックなことがあったときなど)でも嘔吐します。しかし、激しく頻回なときは、脱水をおこす危険もあり、脳炎や髄膜炎の一症状のこともあるので、すぐ医師の診察を受けたほうがいいでしょう。

痛み 
 強い痛みがあれば、絶えず不機嫌、ひどければ顔色も悪くなります。弱い痛みのときは、遊びなどで気がまぎれることもあります。痛みの部位を知るためには次のことを参考にしてください。一般に痛いところに手がいきます。痛いところに触られると拒否したり、しかめっつらをします。また痛いところはかばって行動します。例えばおなかが痛ければエビのように体を曲げる、足が痛いときは足をひきずって歩く、手が痛いときはその手を使いたがらない、などのことが観察されます。ただし、自閉症の方や、重い知的障害の方は痛いところをかばった行動がみられるとも限りませんので注意が必要です。盲腸で腹膜炎になりかかっているのにしっかり歩いてしまったり、骨折した部位をかべにうちつけていたりしていた方がいました。

 以上、子どもの病気の重要なサインと対応について述べましたが、これらの症状がないときは、他に気になる症状があっても、それほどあわてることはありません。じっくりと経過をみながら対処してください。


(社)発達協会王子クリニック 石崎 朝世(小児科医)