医療Q&A


クスリのこと、病気のこと、医療に関する質問にQ&Aでお答えするページです。
これからも、さまざまなテーマでのQ&Aをお伝えしていきます。

●Q1  自閉的な子どもの診断・診断名について

●Q2  自閉症と知能の遅れの関係について


●Q3  発作・脳波などについて

●Q4  ひきつけについて


●Q5  多動な子どもへの薬の効果について

●Q6  不器用さへの薬の効果について

●Q7  血液検査について

●Q8  心電図について

●Q9  脳波について

●Q10 子どもたちへの薬物療法



Q10  子どもたちへの薬物療法

 今年から発達障害を持つ子どもたちの通園施設で働きはじめました。わからないことばかりの毎日で、とくに悩んでいるのが、医療面の対応です。
 通っている子どもたちの中には、薬を飲んでいる子も多くいます。何の薬か親御さんに聞くと、同じ薬なのに目的が違うこともあります。発達障害に対する主な薬とその効き目について教えてください。
 また1度に何種類もの薬を飲んでいる子もいますが、副作用がないのだろうかとも心配になります(ご家族の方からも心配という声を聞きます)。その子どもにとって、薬を飲んだほうがよいか、あるいは飲まないほうがよいという判断はどのようにするのでしょうか。
 素朴な疑問で申し訳ありませんが、教えていただけると幸いです。

A10
●はじめに
 通園されている方の診断名としては、広汎性発達障害(自閉症を含む)、精神遅滞、言語遅滞、多動性障害など多岐にわたるかと思いますが、薬物療法の対象になるのはてんかんの合併があったり、行動的、情緒的に問題があったり、睡眠障害があるなど生活上支障がある場合です。
 てんかんの合併がある方は発作を抑える抗けいれん剤が必要ですが、パニックや自傷、他害、こだわり、多動、不眠などについては、生活リズムを整えることや園や学校での対応の工夫など十分手を尽くしても支障を来している場合に薬物療法の対象となります。ただ薬はあくまで補助手段かと思います。かなりの割合で効くと思われる抗けいれん剤でも難治てんかんの方は発作が完全には抑えられないこともあります。
 副作用もご心配かと思いますが、副作用を恐れるあまり本人の学びのチャンスを狭めてしまわないように、薬物療法については施設の職員の方なども主治医とご家族との、密な連携が必要かと思います。

●薬物療法の実際
 行動や情緒の問題、てんかん発作、睡眠障害などは脳に関連した精神科的症状です。このような精神に作用する薬を「向精神薬」と言います。精神機能や行動に影響を与える薬物の総称です。向精神薬には@抗精神病薬A抗うつ薬B抗躁薬(気分安定薬)C抗不安薬D睡眠薬E抗てんかん薬があります(「抗」とつくのは諸症状に抗するという意味です)。一般的には@〜Dは安定剤という言い方もします。薬には強い作用をするものから穏やかな作用のものまであり、症状にあわせて選択します。また漢方薬の中にも安定剤的な作用を持つものもあります。漢方だから副作用がまったくないということではありませんが、比較的マイルドかと思います。

(1)行動・情緒の問題(パニック、興奮、暴力、イライラ、自傷、他害、こだわり、多動、不眠など)
 安定剤を選択します。気持ちが落ち着くことにより問題行動が軽減されます。睡眠薬ではないのですが結果として睡眠も落ち着いてくることが多くあります。ご質問の中に「同じ薬なのに目的が違うこともある」とありましたが、パニックが主症状の場合や、不眠が主症状の場合にも同じ安定剤を使うこともあります。こういう場合は純粋な睡眠薬より安定剤のほうが効果がある場合があります。ほかにも感情調整作用があるカルバマゼピンやバルプロ酸は抗てんかん薬ですが、気分安定薬としても使います。またSSRIという薬はうつ的な症状の改善以外にも、強迫神経症の治療や、AD/HDの方で易怒性の強い場合にも使うことがあります。こういった種類の薬は神経伝達物質であるドーパミンやセロトニンといった物質の代謝に関与しますので、症状が出る時の仕組みに共通点があれば、同じ薬が多様な症状に効くことはあり得ることです。

(2)睡眠障害
 
睡眠障害の治療には、睡眠薬のほかにも安定剤やメラトニンを使います。メラトニンは医薬品ではありません。そのため保険対応はできないのですが、不眠や睡眠リズム障害には有効です。

(3)てんかん
 てんかんの合併のある方には、抗てんかん剤は必須です。てんかん発作型や脳波異常のタイプにより薬剤を選択します。てんかんの予後は発作の型、頻度、脳波異常の程度によってちがいますが、2年ほどで服薬を中止できる良性のものから、4〜5年必要なもの、また難治てんかんと言われる治療の難しいものまであります。
 難治てんかんの場合は薬の量も種類も多くなることがありますが、薬についての治療の原則は、なるべく少ない種類で効果のある最低量が理想であり、QOL(生活の質)を落とさないことが重要です。

(4)多動性障害
 典型的なAD/HDの方にはメチルフェニデート(商品名:リタリン)が七割は有効と言われています。リタリンはその是非について、いろいろな論議がある薬ですが、薬によって落ち着きをとり戻し、結果としてお子さんの成長につながればよいのではと思います。またAD/HDではないけれども多動性を持っている方の中にも、リタリンが有効なことがあります。

(5)その他
 自閉症の治療としてエルドーパ、ビタミンB6、SSRIなどが試みられています。

●副作用のこと
 どんな薬でも、副作用の出る可能性が絶対ないということはありません。また薬の効能書に、出現率が0.1%にも満たない可能性のおそろしい副作用まで書いてあるのを見ると、服用する気になれないのは当然だと思います。ましてや何種類もの薬を服用していれば心配は倍加されます。なかには副作用止めの薬を飲まないとならない薬もあり、今度はその薬の副作用まで心配になってしまうということもあると思います。
 しかし、薬を服用することによって発達や生活の妨げになっていることが軽減されれば本人も生活しやすくなります。学びのチャンスが得られて成長の後押しとなり、その結果、社会適応の手助けとなるかと思います。
 薬は出るかもしれない副作用というリスクと有益性を天秤にかけて、有益性が上回る場合に使います。そして服薬に際しては、効果の判定と副作用のチェックのために医師の定期的な診察や6カ月〜1年に1回の血液検査(人により脳波検査も)が必要です。
 薬のことで(もちろん薬のこと以外でも)心配なことは本人やご家族といっしょに主治医に相談されて、双方向性の関係を築いていってください。

回答者:王子クリニック 洲鎌 倫子(小児科医)


Q09   脳波について
A09
●「脳波」とはなんですか?

簡単に言えば、脳から出る電気を大きくして、波形として記録されたものが脳波です。

●脳から出る電気というのは?
少し難しくなりますが、脳と脳の細胞について簡単に説明しましょう。
 脳というのは大雑把に言って、脳幹と小脳と大脳という3つの部分に分けることができます。脳幹というのは脳という木を支える幹のようなもので、その上に小脳、大脳が乗っかっています。その大脳の部分は厚さ5〜7ミリの大脳皮質で覆われています。その皮質は神経細胞が集まってできているのですが、よく人の脳には120億の細胞があるとか、140億の細胞があるとかいうのは、ここの細胞の数のことを言っているわけです。

●その脳細胞と電気とはどんな関係があるんでしょうか?
 人間の脳はいろいろな情報を集め、それからまた全身へ指令を出すという役割を持っているのですが、そういった、何かを感じたり、見たり聞いたりする時、それに対して指令を出す時、脳細胞が活発に活動して、電気が生じます。この電気が他のいろいろな部位の脳細胞に伝達されていくのです。脳波検査で記録する電気とはこれらの細胞から生じる電気なのです。

●脳というのはコンピューターのようなものですか?
 電気回路でつながれているコンピューターとはちょっとちがうのですが・・・・・・。脳細胞から脳細胞へ、また次の細胞へシナプスという連結部を通して電気が伝わっていくのですが、多くのシナプスでは細胞同士がくっついているわけではないので、そこに化学物質が働いて、細胞との橋渡しをします。

●脳波検査は痛くない?
 そうです。脳波を取ることは、別に痛くもかゆくもありません。頭にちょっと薬を塗って電極をペタリとはりつけるだけです。ただ、うごいたりすると脳波はうまくとれません。動かずじっとしていてくれればいいのです。といっても、ここが一番難しいのですが。でもだんだん検査がどんなものかわかってくると、静かに寝ていられるようになっていきます。

●脳波検査では何がわかるのでしょうか?
脳波検査をすることでこのような脳の病気がわかります。また、病気そのものだけでなく脳の活動状況がよくわかります。特に、脳細胞が突発的に異常な活動を起こしてしまうてんかんについては、よくわかります。

●脳波検査は、どのようにするのですか?
 前回お話ししたように脳波検査は決して痛いものではありません。ふつう脳波を記録する場合、安静覚醒時閉眼状態といって、ベッドに横になって目をつぶって静かにしている状態の脳波をその人の基本リズムとします。
 この状態と睡眠時の脳波と両方が検査できればよいのですが、遅れを持った子ども達の場合には、難しいことが多いので、検査の前日から寝不足の状態にしてきてもらい、検査を行います。ぼんやりと起きた状態で検査を始め、検査中に寝てくれればしめたものという訳です。起きている状態での検査が難しければ、睡眠時だけでも検査をします。
 けれども、子ども達も病院というふだんとは違う状況の中で興奮気味で、寝不足でもなかなか寝つけないこともあります。そういう時は、仕方がないので睡眠薬などを使い寝かせて検査をします。

●遅れを持った子ども達にとって、脳波検査の役割とは?
 遅れを持った子ども達にとっては、必ず受けておいた方がいい検査のひとつです。というのは、脳波に何らかの異常がみられるということが少なくないからです。気づかないで、小さなてんかんの発作を起こしていることもありますし、発作という形になって現れなくても異常波がでていることもあります。
 また、異常波の種類によっては、ときにはこれが発達の遅れの原因になっていたり、遅れを大きくしていることもあります。ですから、脳波検査によっててんかんの治療だけでなく、発達の遅れそのものの治療に結びつくこともあります。

●服薬の期間はどのくらいなんでしょうか?
 それはケースバイケースですが、短くて4〜5年と考えておいた方がいいでしょう。一般的に服薬の期間は長いということ、それから、服薬をやめる時には薬の量を徐々に減らさなくてはなりません。お医者さんは、発作の有無、脳波の異常波の有無などを参考にして慎重に減量を考えます。勝手にやめてしまったりしないようにお医者さんの指示に従ってください。

●服薬が長くなると薬の副作用が心配ですが・・・・・・。
 そうですね。薬には必ず副作用がつきものです。けれども、副作用以上に、発作をコントロールする必要がある場合は、どうしても服薬しなくてはなりません。ですから、尿検査や血液検査を定期的に行うことが大切です。
 また、これらの検査以上に子ども達の状態の変化を見ることが大切です。てんかんの薬でよく見られる副作用の眠気やふらつきが非常に強くなったとき、行動の異常(いらつきやおちつきがないなど)が前よりも目立つようになったとき、時には期待に反して発作が多くなることもありますが、このようなときにはかえって効果よりも害の方が多いので、分量を加減したり、薬を変えたりします。

●脳波検査の頻度は?
 治療中は、薬があっているかなどを調べるために必要に応じて検査をしていきます。
 てんかんの疑いがある時やてんかんと診断された場合は、薬を開始した時期、薬を変更している時期、脳の状態の変化が著しい乳児期は数ヶ月毎に、その他の時期は半年から1年毎に検査するのが一般的です。

回答者:王子クリニック  石崎 朝世(小児科医)

  
Q8  心電図について
A8
●心電図をとるのはどんなときですか?
子どもでは、口唇や爪が紫色(チアノーゼ)、元気がない、顔色が悪い、体重が増えないなどの心配なことがあり、原因がわからないとき。また軽い運動なのに、やたらにハアハアしていたりとか、胸をおさえて苦しそうだったり、こんなときには心電図をとったほうが良いと思います。
 それから、ダウン症など染色体異常があるお子さんには、合併症として心臓に疾病がある場合がまれではありません。染色体異常が発見されたらなるべく早い内に心電図などの心臓の検査をしたほうがよいでしょう。
 またリウマチや川崎病などをした人がその後遺症で心臓病になることがあります。
 その他に成人(病)の健康診断では必ず検査します。

●心電図は何を現すものですか?
私たちの心臓は筋肉(心筋)でできていて、それがポンプのように全身に血液を送り出しているのですが、その心筋をうまく動かすために生じる電気的興奮により発生する電気現象を記録したものが心電図です。
そして、その測り方によって、心臓の位置や傾きがわかります。また、心房や心室の肥大もわかります。それから、不整脈がある場合、その原因についての診断の助けにもなります。その他、心筋梗塞についてもわかりますし、薬物治療の効果や影響についても心電図の波形から調べることができます。

●心電図はどうやってとるのでしょうか?
胸をはだけて、ゆったりと横になってもらいます。このとき靴下や、ベルトなど身体を強く締めつけるものははずしておくようにします。それから、手足と胸にクリームのようなものを塗り、その上に電極をつけて測定します。電極といっても、脳波検査と同じで全く痛いものではありません。この検査もただじっと寝ていてくれればいいのです。脳波検査よりもずっと短い時間で終わります。

●心臓に異常があると診断されたらどんな治療が考えられますか?
薬物による治療や、外科的手術などあります。心臓の病気というと、ひどく大変なことと受け止められがちですが、軽ければ経過を見るだけで治療は必要ないこともありますし、運動制限も特にない、ということもあります。
 しかし運動制限のあるなしは、それぞれの状態によって当然違うものですから、よくお医者さんと相談してみてください。勝手な判断で無理をさせたり、また大事にしすぎることはしないように。


回答者:王子クリニック  石崎 朝世(小児科医)

  
Q7 血液検査について
A7
●血液検査を行うのはどんなときですか?

 病気の診断が必要で、これが診察などの他の手段だけでは不十分な場合に行います。また病気の重症度を知る目安になり、きちんと経過を追う必要があるときに行います。特に貧血、肝臓の病気、糖尿病、痛風、高脂血症では役に立ちます。
 様々な発達障害の原因が、血液検査でわかります(甲状腺機能低下症、アミノ酸代謝異常症、染色体異常症など)。これらが治療につながることもあり、一度はきちんと検査をうける必要があります。
 また病気の治療のために薬をつづけて飲む場合は、副作用の有無やその程度を知るために行います。

●検査の結果でてきた数値の読み取り方については?
 数値の勝手な読み取りは危険です。主治医の説明をよく聞いてください。

●正常範囲ならば安心してよいのでしょうか?
 多くの場合はそうですが、血液検査の値だけでは正常と判断できない病気もあり、これも主治医の総合判断をよく聞く必要があります。

●抗てんかん薬を服用しているときに血液検査を行うのはどうしてですか?
 薬の副作用がでていないかをみるためです。ときに肝機能障害、白血球減少、カルシュウム低下などが起こる可能性があります。また服用している抗てんかん薬が有効といわれる濃度に達しているか、あるいは体にとって有害な高濃度になっていないかも血液検査で知る必要があります。

●てんかんなどの病気がない場合でも定期検査が必要ですか?
 特に症状をうまく訴えられない子どもたちでは、心配な状態がある場合、診察の他、経過をおって検査をすることがあります。成人の場合、血液検査では、多くの成人病の早期発見に役に立ちますので、定期的に行う必要があります。

●注射を怖がってしまう場合に、他の検査方法が可能でしょうか?
 診断や治療にどうしても必要な場合に限り、最低限の検査にしますが、血液検査にかわるものはありません。

●注射をいやがる子は?
 必要なときはおさえつけても採血します。しかし、できるだけ本人が納得するよう、安心するよう工夫をし、抵抗を少なくして行います。強い力で抵抗し、暴れるとうまく採血できないばかりでなく、危険です。


回答者:王子クリニック 石崎朝世(小児科医)

  
Q6 不器用さへの薬の効果につい

 多動とは対照的に、一つ一つの動作がゆっくりで、不器用、様々な刺激への反応も遅いのでなかなか仲間にはいることができないという子どもがいます。お薬などで対応できる可能性がありますが?      

A6
 原則的には薬物治療の対象にはなりません。日常生活の中でいろいろな経験を積ませ、それにより少しずつ自信をつけていくことが大切だと思います。このようなタイプは、一般的には個性のひとつといえるのですが、ときには、知的な発達の遅れのためにそのような行動をする子どもがいます。また、もう一つのタイプとしては、大きく動き回るような多動はないけれど、じっとしているようでも、よく観察すると、椅子には座っていながら絶えず体のどこかが動いている、注意の集中ができない、そのために早く行動できない子どもがいます。このようなタイプの場合は、多動性障害と同様な治療が有効なことがあります。されにもう一つの場合、特に思春期以降の青年・成人で、前にはそんなことはなかったのに、なかなか動かない、表情が乏しい、または緊張した表情をしているといった場合は、うつ病や精神分裂病などの精神疾患的の可能性があります。ストレスなどで、精神疾患的になることもあります。このような状態では、薬物治療の効果があることが多いです。

 
回答者:(社)発達協会王子クリニック       石崎朝世(小児科医)
          (社)発達協会王子クリニック       洲鎌倫子(小児科医)

 
Q5 多動の子どもへの薬の効果について

 多動の子にお薬がきく、ときいたことがありますが、それはどのようなお薬でしょうか?

A5
  多動、衝動性、注意集中困難の治療に一番用いられる薬は中枢神経刺激剤で、その代表がメチルフェニデート(リタリン)です。70〜80%の子どもに効果があるといわれています。中枢神経系で、特に神経伝達物質の一つであるドーパミンの量をふやします。ノルエピネフリンの上昇も効果に影響しているといわれています。これらにより、衝動が抑制され、集中力の持続が強化されます。その他、認知機能や微細運動機能の改善がなされるといった報告もみられます。覚醒効果があり、従来より、ナルコレプシー(眠くてたまらないという睡眠発作をおこす病気)によく使われています。神経を亢揚させることもあり、軽度の鬱病にも用いられています。厳密な効果時間は数時間ですが、朝に服薬して一日のはじまりを落ち着いて過ごすと、そのまま一日中うまくいくことも多いです。従って飲み方は、通常朝1回あるいは朝、昼の2回です。また、リタリンは落ち着きのない子のすべてに効くのではなく、多動性障害(ADHD)の多動に効きます。自閉症などその他の原因の多動にはあまり効きません(ただし、自閉症の子どもが多動性障害を合併していることがあり、このタイプにはしばしば効果があります)。
 他の薬では、L-ドーパの少量をリタリンで効果が十分でなかった人や自閉症の多動に使い効果をみることがありますが、リタリンほどの有効率ではありません。イミプラミンなどの抗うつ薬が効くこともあります。易興奮性や乱暴などの症状が目立つ場合、ハロペリドールなどの安定剤を少量用いることもあります。我々のクリニックでは、興奮性を軽減するため、漢方薬を使うことがありますが、子どもによってはよい効果があります。
 ただし、これらの薬の効果は一時的なもので、根本的に治す薬ではありません。服薬と平行して、自分で行動をコントロールする力を養うこと、また少しでも落ち着いたときを利用し様々な学習を積み重ねること、自信をつけていくこと、などの指導や教育的配慮が必要なことはいうまでもありません。

回答者:(社)発達協会王子クリニック       石崎朝世(小児科医)
     (社)発達協会王子クリニック       洲鎌倫子(小児科医)

 
Q4 ひきつけについて

 高熱を出したときに、ひきつけを起こす、とよく聞きますが、どれくらいの熱がどれくらい続くとひきつけを起こしやすくなるのでしょうか。また、そうしてひきつけを起こしたときの観察ポイントやその後の対応について教えてください。

A4
  熱性けいれんは38度以上の発熱に伴って起こるけいれんであり、発熱の原因は様々ですが、髄膜炎や脳炎のような中枢神経感染症は除きます。ほとんどが熱の上昇中あるいは高熱になってまもなく起こすことが多く、何日も熱が続いてひきつけるような場合はむしろ中枢神経感染症のような重篤な病気を考えなければなりません。短い発作では脳障害をおこすことはなく、てんかんへの移行とか知的障害には結びつきません。頻回な痙攣や1時間以上も痙攣がつづいたり、断続する一部の発作を除いて、予後は全般的には良好です。治療としてはなるべく熱をださないのが一番なのですが、そうもいかないですね。今は熱性けいれんをおこしやすい人に発熱時だけジアゼパム坐薬を予防的に使用することが広く行なわれています。
 実際、ひきつけてしまった時は、冷静にというのは無理かもしれませんが、持続時間やけいれんの状況を冷静に観察して報告してもらえると大変参考になります。大声で呼んでゆすったり、舌をかまないようにと口の中に指やスプーン、割りばしなどを入れたりすることは慎みたいものです。周りの危険物を除き、服をゆるめて、顔を横に向けるなどして(吐物を誤嚥して窒息しないため)楽な姿勢をとらせ、安静を保つようにして下さい。稀ですが顔色が悪くなったとき、けいれんが長引くようなとき(おおよそ長さの目安は、5分以上です)
は病院で処置が必要となります。
 てんかんでも発熱が誘因となって発作を起こすことはありますが、この場合は熱性けいれんとはいいません。熱の程度は人によってちがいますが、微熱でも発作は起こり得ます。

回答者:(社)発達協会王子クリニック       石崎朝世(小児科医)
     (社)発達協会王子クリニック       洲鎌倫子
(小児科医)

  
Q3 発作・脳波などについて

 もともと脳波に異常のあった子どもが、アニメーションのテレビ番組などを見るのは危険でしょうか。

A3
 ご質問は光の点滅など、視覚的に刺激的な番組という意味だと思いますが、光過敏てんかんやテレビゲーム(テレビ)てんかんでなければ、脳波の異常というだけで、即、アニメーションが危険というわけではありません。以前にテレビのアニメを見てけいれんを起こしたり、気分が悪くなったりということで数百人の子どもたち(大人も含む)が病院にかつぎ込まれて社会問題になったことはまだ記憶に新しいと思いますが、もともと脳波に異常のあった人や、てんかん発作をもつ人がどのくらい含まれていたかは、まだわかっていません。おそらく色々な悪条件が重なったのではないかと思われます。
 従来から光過敏てんかんやテレビゲーム(テレビ)てんかんという光刺激によっててんかん発作が誘発されるてんかんが知られていますが、日常の生活の中でいうと、木漏れ日、波間や雪面のキラキラした光やテレビ、テレビゲームなどが発作の誘因となります。テレビゲームてんかんは光刺激のみではなく、指標の追跡に伴う眼の動き、指でのゲーム操作、注意集中することによる精神緊張、驚いたり、ほっとしたりする感情変化、長時間のゲームによる疲労など様々な因子が関与していると考えられています。 光過敏てんかんでは脳波検査で光刺激(白色閃光点滅や赤色点眼刺激など)により脳波上に発作波が誘発や増強をみとめる光過敏性があることが診断上重要です。

回答者:(社)発達協会王子クリニック      石崎朝世 (小児科医)
     (社)発達協会王子クリニック      洲鎌倫子
(小児科医)

  
Q2
 自閉症と知能の遅れの関係について

 自閉症の人には知能の遅れはないのでしょうか?また知能の遅れなのかと個人差なのかをいつどのようにして診断するのでしょうか?                  

A2
 自閉症の75%は知能の遅れ(知的障害)があるといわれています。知能は、日々の行動から推測したり、知能発達検査で測定されたものから判断しますが、認知能力のアンバランスがある自閉症では、日々の行動からは推測しにくく、知能発達検査による判断が特に必要です。ちなみに知能指数(IQ)とは、知能発達検査でわかった精神年齢(知的発達年齢、月数)を歴年齢(月数)で割ったものに100をかけたものです。これが70に達しないものを精神遅滞(知能の遅れ)があると診断します。一般的にIQ70以下の人は、何らかの援助や配慮がないと、自立して社会に適応していくことは難しいと思われます。また、3歳を過ぎるとおおよその知能が予測できますが、ときには3歳で知能の遅れが疑われた子どもが6歳くらいまでに普通の範囲に追いつくこともあります。

回答者:(社)発達協会王子クリニック       石崎朝世(小児科医)
     (社)発達協会王子クリニック       洲鎌倫子(小児科医)

  
Q1 自閉的な子どもの診断・診断名について

 自閉的な子どもについて、自閉症、自閉傾向、広汎性発達障害など診断名をいろいろ聞くことがありますが、それらの違いはなんでしょうか。また年齢によって診断名が変わっていくということもあるのでしょうか?

A1
 世界で共通認識のもとに語れる医学的な診断分類として、世界保健機構(WHO)によるICD−10とアメリカ精神医学会によるDSM−Wがあります。公的には、これを用いて診断しますが、まだ一般的には十分知られていないこともあり、しばしば一般的なあるいは便宜的な用語が用いられます。また診断に自信がない場合、診断がまだ不明確な場合にあいまいな用語が使われることもあると思います。
 ICD−10によると広汎性発達障害の中に小児自閉症(自閉症)、非定型自閉症、レット症候群や小児期にいくつかの能力の退行(できていたことができなくなること)が明らかな崩壊性障害、アスペルガー症候群が含まれます(DSM−Wもほぼ同様の分類)。それらの内容を簡単に説明します(表1)。

表1. ICD−10による診断分類
広汎性発達障害
小児自閉症
非定型自閉症
Rett症候群
その他の小児崩壊精神病
精神遅滞および常同運動を伴う過動性障害
Asperger症候群
その他の広汎性発達障害
特定できない広汎性発達障害

 広汎性発達障害は(1)対人関係がうすくて社会性の発達が悪い、(2)ことばを始めとするコミュニケーションがうまくとれない、また(3)想像力に障害があって、興味が限局している、つよいこだわりがある、反復的な行動(常同行動)がみられることもあるという三つの特徴を多かれ少なかれもつ子どものことをいいます。その中で、この(1)〜(3)の特徴が著しい子どもは自閉症と診断され、ことばも顕著に遅れています。特徴はもっているけれども、症状がそれほどつよくない場合や一部の症状がめだたない場合は、「非定型自閉症」といいます。また広汎性発達障害の中で
知的な遅れや明らかなことばの遅れもないけれど、ほかの特徴はもっている場合、特に「アスペルガー症候群」と診断します。「アスペルガー症候群」の子どもは、ごく基本的な社会生活には適応できることが多いので、少し変わっている子どもという感じで成長していく人も多いようです。
 一般的には、自閉症といわず、あえて「広汎性発達障害」といった場合、前途の非定型自閉症を指すことが多いです。「自閉傾向」というのは医学的に認められた診断名ではありません。非定型自閉症を指したり、まだ診断が不確かな場合に用いたり、また知的障害(精神遅滞)が前面にでている障害で広汎性発達障害もあるときに、「自閉傾向のある精神遅滞」と表現したりします。小さい頃に診断が不確かで、自閉傾向というようにあいまいな診断をされていた子どもが、年長になり「自閉症」とされることもあります。どのくらいの症状で「自閉症」とするかは、医師によって多少の違いがあるので、診断名が変わってくることもあり得ます。

回答者:(社)発達協会王子クリニック       石崎朝世(小児科医)
     (社)発達協会王子クリニック       洲鎌倫子(小児科医)