幼児期についての相談   
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 年中の女の子です。まだ生活面のことでできることが少なく、トイレが自立していなかったり、嫌いな食べ物もたくさんあったりします。
 最近、家の中で、寒くても暑くてもお構いなしに、服をぬいでしまい困っています。何度も着せるのですが、そのたびに大泣きをしてぬいでしまいます。何がそんなに嫌なのか、対応法がわからず、途方にくれています。ほかのことでも嫌なことだと騒いでなかなか応じないのですが、どのように教えたらよいのでしょうか。

 その後、お嬢さんの様子はいかがですか? お母さんがお子さんの理解しがたい行動に戸惑い心細く思われていること、お察しします。
 きっとエネルギーあふれるお嬢さんなのでしょう。衣服を着るのを嫌がるとのことですので、肌に触れる感触が苦手なのかも、とも思われますが、おそらく彼女は人からの働きかけの受け入れ方がわからないのだと思います。
 本当はお嬢さんも大騒ぎなどしたくないのでしょう。でも自分でやれることは少ないし、人から教わったことはないし、どうしたらよいかわからない状態なのだと思います。
 混乱の時期のお子さんと向き合う大人のつらさは、子どもを励ますにも注意をするにしても、共感を持って伝え合えないことだと思います。でも彼女にも成長の道すじが備わっています。泣きでしかうまく表現できない彼女に両親の力添えで、今どうすればよいかをねばり強く教えてあげてください。


●人を意識させるやりとりを
 彼女の場合、いきなり服を着せて押さえこむなどしたら、乱闘(?)になりかねません。好きな遊びを利用しようとしても、たぶん言うことを聞いてくれません。そこで大人がリードしつつ、子どもを巻き込み一緒に取り組める題材として二つの例を紹介します。
 体を通じたやりとりとして、たとえば「腹筋」があります。最初は子どもはやる気はありませんから、すっかり大人が手をひいて動かしていきます。泣いていても10回やれたら「えらかった、マル」というのを繰り返します。子どもの共感を得られるのは先と思われますが、徐々に慣れて、何日か行なううちに、子どもが泣かずに起きてくる、という展開が待っています。
 また「身辺自立」のことでも、何かひとつ目標を持ちましょう。たとえばお子さんにオシッコが出たかの自覚があるのでしたら、「トイレでの排尿を目指す」というように。その場合まずは排尿の間隔をつかみ、タイミングをはかって一定時間トイレで過ごします。コツは失敗を承知のうえですぐにあきらめないことです。「きっとやれる」、こうした大人のねばりと願いが、ついにシャーと成功する日につながります。
 生活のなかで、子どもと真剣に向き合うと、子どもは大人に一目をおいて、泣き通すだけではなく、自分でやったり気持ちを鎮める経験をします。大人も、子どもの小さな変化やがんばりを実感する経験をすると思います。


●衣服をぬいでしまうことの対応
 よく泣くお子さんのようですから、体の緊張が強く、また衣服の感触などが不快という面もあるかもしれません。大人の膝の上に彼女を座らせて、手指をクルクル回したり、「あぐらそり」で、腹筋をじっくり伸ばすのも有効でしょう。これらは本来、リラックスが目的ですが、彼女は始めもだえてしまうかもしれません。でも大人に身をゆだねられるようになると、体の力が抜け、徐々に刺激を受け入れられるようになります。
 さて、本題の衣服ぬぎへの対応です。何かに抵抗して着ている服をぬごうとする場合について。彼女には、ぬいで発散するのではなく、がまんをすることを経験してもらい、その時やるべきことを示したいと思います。対応は、その瞬間をとらえて、「ぬがないのよ」と彼女の目をみて、ジワーッと彼女の手を押さえます。力をゆるめてきたら、手を離して様子を見ますが、おそらくまたぬごうとしますので、しばらくは繰り返します。少し落ち着いてきたら、「マルね」と伝えつつ、今度は手をとって、おもちゃを片づけたり、ゴミ捨てをさせたり・・・・・・抵抗とは異なる方向へ目を向けさせるように促します。


●自分でやる、参加することを目指して
 生活のなかで、大人の指示に応じて一緒にやれる場面をつくりましょう。
 10カウントの間、いすに座っていられる、ものを持っていられる、「ちょうだい」に応じて渡せる、動作のまねをする、人にものをとどける、お片づけをする・・・・・・人から学ぶ入口を順々につけてください。人を意識できるようになるとホッと笑顔になったり、困ったり、表情もさまざま出てきます。
 一緒にやれることが増えてきたら、苦手な着替えにも取り組みましょう。「お世話されるお嬢さま」にはしないことが鉄則。やれるところがきっとあります。やれるところをさせ、ほめて認めて・・・・・・を繰り返します。身辺自立やこの時期に獲得したことは、たいてい後戻りをしません。本当はやれるようになりたかったのね、と後になってきっと思われます。がんばってください。

相談員:田宮 正子(発達協会)言語聴覚士・社会福祉士


Q19

 2歳になる息子のことで相談します。ことばは出ていませんが、大人に何かしてほしい時は、手を引っぱって連れていきます。
 今、困っているのは、人みしりや場所みしりが激しいことです。はじめての所や病院など、苦手な建物に入る時は、泣いてしまいます。泣いている時にだっこしてよいものかどうか迷っています。ほかにも、道順や電気をつけたがるなど、自分の思いどおりにならない時も泣いてしまいます。家など泣いても迷惑にならないところでは、放っておきますが、外出先では、要求をのんだり、家に戻ったりしています。
 また、冷蔵庫に何かおいしいものが入っていると思うのか、1日に何度も確認したがります。確認して、「ないよ」と見せるのですが、またすぐに大人を呼びにきます。どのように対応したらよいのでしょうか。
 家庭でいろいろ取り組んでいきたいと思っていたところ、お手伝いをさせるようにアドバイスされました。なかなか息子にできるものを思いつきません。簡単にできるお手伝いなど家庭でできる取り組みをいくつか教えていただければ幸いです。

A19

1、人や場所みしりの激しさについて
 お子さんは、家族やお家の中での過ごし方には馴染んでいるので、そこでは息子さん自身が予測できるように日常は過ぎていきますし、自分の要求の通し方や、それに対する家族の対応も「ちゃんとわかっている」ので、そこは「安心していられる場所」なのですね。
 安心できる「場所」は、お家の中に限らず、今まで何度か行って「楽しかった」経験をしている近所の公園とか、ご近所のお家とか、行きなれていて予測できる所や人たちにと、広がっているのではありませんか。  お子さんは今までの経験を通して、安心できる状況と、不安・緊張を強いられそうな状況が、より鮮明にキャッチできるようになったということなのですから、成長の証しだ、と私は思います。ただし、それだからよかった、よかったと喜んでばかりはいられません。これは次なるステップへのスタートなのだと考えましょう。  お子さんは、「よくわかるようになった」のですが、まだ「十分にはわかっていない」というところなのでしょう。だからこそ「わからせてあげる」ことが大事なのですね。
 お子さんが、予測できない所や、あるいはイヤだった記憶と結びつけてしまう場所で激しく泣き叫ぶ時、お子さん自身は不安な思いに押し潰されそうになっているのでしょう。でもこれから先、その`泣きaに負けて引き返すわけにはいかない状況(たとえば、ケガや病気で病院に行かざるを得ない場合や、役所や銀行に行かなければならない、など)が、しばしば起こるでしょう。
 まずお母さんが、出掛ける前から「また泣くんだろうな」と不安になって、緊張しないように努力してください。お子さんは、お母さんの緊張を敏感にキャッチします。「これも、この子の世界を広げてやる大事なチャンス。泣くのなら泣きなさい。それでもお母さんは予定どおりにしますよ」くらいに開き直って出掛けましょう。お母さんが毅然としていることです。
 目的の場所で、お子さんが激しく泣いて戻ろうとしたら、しっかりと抱いてあげて、一緒にその不安を乗り越えてあげるつもりで、そこに入っていきましょう。なんとか泣きやめさせたいとことばで言いきかせても、それは"火に油"。"聴く耳を持たない"お子さんには何の効果もなく、お母さんが疲れるだけでしょう。  お子さんの「泣き」に振りまわされず、お母さんが主導権を持って対応すること。その経験の中でお子さんは、「泣いても自分の思いどおりにはならないんだ」ということを学びます。そして、まわりの人や状況に対して、更にしっかりとアンテナを働かせるようにもなっていくでしょう。

2、「世の中のことは、すべてボクの思いどおりになる」の思いこみを変えよう
 道順や電気など、自分の思いどおりにならないと泣く、冷蔵庫の中を何度も確認したがるなど、思いどおりにならないと「泣く」という手段に訴えていますね。「家では泣いていても放っておきますが……」と、お母さんは書いていらっしゃいますが、その「放っておく」という対応の中身が少々気になります。
 お子さんが泣き叫んだりして、要求を通そうとする時、いつも一貫して、その要求に応じない、という対応をしているのでしょうか。時にはお母さんの方が根負けして、お子さんの要求に応じたりしていないでしょうか。泣いても無視されて、このテはダメか、と思い始めた頃に、「泣き」が効果をあげて思いどおりになる、ということになると、「泣き」は長びくでしょうね。電気はつけるべき時にだけつけるもの、冷蔵庫も一度は確認してもいいけど、何度も繰り返してはいけない、など働きかける側が、徹底して対応していくことで、息子さんは自分本位ではなく、周囲の状況や人に応じることを学ぶのだと思います。人や場所みしりについて述べたこととも関係するのですが、お家の中でお母さんの指示に応じるようになると、外でもお子さんに振りまわされなくなるでしょう。

3、「お手伝い」で学ばせたいこと
 
お子さんがまだ2歳、ということを考えると、お手伝いと言っても「○○をパパに渡してきて」とか、「そこの○○を取ってね」といったことくらいでしょうね。ことばの指示と一緒に手を添えて、させていくこと。そして必ず「ありがとう」「えらかったねえ」など、しっかりと誉めてあげてください。「認められる嬉しさ」を体験することが大事なのです。
 人からの働きかけに応じる経験が、「働きかけに応じよう」とする意識を育て、ことばの理解も広げていくでしょう。それが、発語の土台づくりにもなる、と思います。

 石井 葉
 (保育士)
 (社)発達協会等で長年にわたり、子どもたちの療育・親指導にたずさわってきた。現在、
 (社)発達協会副理事長。

 


Q18

 息子のことで相談させてください。4歳の男の子ですが、会話らしい会話ができないので、通っている保育所で発達相談をすすめられました。発達検査を受けたところ、1年半の遅れを指摘され、「このまま行けば普通学級では学べますが、親子共々かなりの努力が必要です」と言われました。診断は、ちょうどグレーゾーン状態のようで、あえて言うなら「言語発達遅滞」といったところだそうです。
 これから、物事の善悪等も教えていかなくてはならないのに、会話ができないし、教えても本人には理解ができないので、私自身、時々カーッとなり、つい怒ってしまいます。また「この子はどこも受け入れてくれないのではないだろうか?」などと思う自分が嫌になります。
 心理の先生から「かなりの努力が必要」と言われるのもわかるのですが、焦りから何をどう努力したらいいのかわからなくなります。
 あと2年で、小学生になります。地域では、まだまだ、発達に問題を抱える子どもたちのための受け入れ態勢が今ひとつ整っていないようですし、これからの長い人生を思うだけで、私のほうがバテてしまいそうです。まず何から始めればよいのか、いま考えなければならないことは何か、教えてください。

A18

●精一杯の子育てを!
 お便り受け取りました。あなたの戸惑いや混乱が伝わってきます。わが子の遅れやハンディを知らされた時の親御さんの気持ちは他者には計り知れないほど辛く、苦悩に満ちたものだと思います。
 親も大変だと思いますが、さまざまなハンディを持ちながら暮らしていく子どもたちの苦労や戸惑いは大きいものです。
 あなたの息子さんも友だちに話しかけられて、なんと答えればいいのか、自分の気持ちも伝えられず、どうすればいいのか、戸惑いのなかで暮らしていると思います。
 息子さんのさまざまな困難や大変さを受け止めて子育てしてあげましょう。
 「『すでに障害を負って生まれてきたのであるなら、残っている健康な脳の機能をフルに生かして発育を助け、彼ができるだけ自由に楽しく生きて行けるように、精一杯の子育てをしよう』と決心しました。」
 自閉症の息子さんを立派に育てあげた小児科医の河島淳子先生は講演集の『よりよき家庭療育をこころがけて』の中に述べています。
 子どもは親のきっぱりとした子育てのおかげで生活力をつけ、充実した人生を歩んでいけるのです。

●幼児期に必要な子育ての基本
 診断され、遅れを知って「何かしなければ」と思って、専門家に尋ねても「かわいがってあげなさい」と言われるだけ、また、あなたのように「かなりの努力が必要です」と言われても、どんな関わりをしたらいいのか教えられず、途方にくれてしまうことも多かったと思います。
 30数年間、私も試行錯誤しながら子育てのお手伝いをしてきましたが、育っていった人たちを見てきて、「幼児期の子育ての基本」は「あたりまえなこと」を根気よく働きかけていくことでした。
 親たちや周囲の人々が「生活力をつけてあげよう」ときっぱりと心を決めて育てられた子どもたちは、成人して自立し充実した日々を過ごしています。
 「子育ては子離れ」、いつの日にか親の手から離れて成人していく息子さんが、自分の力で生きられるよう、幼児期はその「基礎固め」と考えて育てられたらと思います。

@体力と動ける体と手を育てる
 これからの長い人生を生き抜いていく体力と動きやすい体を育てていく。
 日々の暮らしの中で歩くこと、運動トレーニング、手を使ってできる遊びや手伝いなどを根気よく続けていくと、確かな体力とともに、強い意志と集中力も育ちます。

A人の働きかけに応じる力を育てる
 会話が苦手な子は、マイペースで周りの状況がわかりにくいので、運動・遊び・生活の中で人の働きかけに応じるかまえを育てていきます。
 丁寧にことばも教えていきましょう。
 ことばは専門家だけが教えるものではなく、親や家族が日々の関わりの中で働きかけ、子どもは使えるようになります。

B生活リズムを整える
 脳の機能がよりよく働くように、幼児期に生活リズムを整えることが大切です。日中は、さまざまな遊びや活動をする(戸外にも積極的に出すこと)、早寝早起きをしてよい睡眠を確保する、食事・排泄など規則正しい生活習慣を身につけさせていきます。

C自分のことを自分でする力を育てる
 着替え・排泄・食事など自分の手を使って身辺自立をすすめます。手を添えて丁寧にやり方を教えていくと必ずできるようになります。

D好き嫌いなく食べ物を食べる
 いろいろな食物が栄養になって、体や脳の機能を高めていきます。私たちが出会った多くの子たちは、とても頑固な偏食でした。親たちも苦労されましたが、粘り強い働きかけで子どもたちは、何でも食べられるようになりました。体力もつきましたが、困難を乗り越えていける強い意志も育ちました。

 どれも「あたりまえなこと」ですが、実際、働きかけると、なかなか大変です。「すんなり」とはいきません。
 歩いたり、体を動かしたりするのを嫌がって抵抗する子、さまざまなことで働きかけをしても、少しも関心を示さなかったりする子もいるでしょう。
 相当の覚悟で臨まないと子どもに負けてしまいます。時にはあなたのようにカーッとなってしまうこともあるでしょう。でも、親が投げ出してしまったら、子どもは成長できません。子どもの発達を信じて、根気よく働きかけ、育ててあげましょう。

 入学のこともご心配でしょうが、取り越し苦労はせず、今は、やるべきことを淡々と進めていけるといいですね。その結果、2年後に考えればいいと思います。
 「子育て」は長丁場です。時には息切れすることもあるでしょう。また孤独な思いになることもあると思います。ご家族や友人にも相談して力になってもらいましょう。また、具体的なことで困ったら、またこのコーナーにお便りをください。およばずながらお力になれればと思います。
 息子さんの将来を信じ、日々の暮らしを大切にして育てられますように!
 お身体を大切に。お返事まで。

辻 滋子(発達協会)保育士


Q17

  5歳になる息子のことで相談させてください。息子は軽度の知的障害があります。いま気になっていることは、とてもマイペースでわがままな行動をとりやすいことです。
 幼稚園での様子を先生に聞くと、先生が部屋に入るように言っても砂場で遊んでいたり、みんなでお遊戯をしている時に本を読んでいたり、周りのすることにまったく無頓着で、先生の話も聞いていないそうです。また先生が注意しても、素直に聞かずに怒って騒いだり、言い返したりするそうです。
 園のように騒ぐことは、家ではありませんが、知らず知らずのうちに息子のペースに合わせているせいかもしれないとも思います。
 友だちも減ってきているようですし、このままでは小学校生活も心配です。マイペースさをくずし、自分勝手な行動をとらないようにするために、親子でできる取り組みがあれば教えてください。

A17

 「見て、僕ってすごいでしょ」と目をキラキラさせていた子が、今度は「先生、抱っこして」と涙目で甘えてきます。4〜5歳の頃は気持ちのままに振る舞う自分中心の時代です。でもこの子どもたちも、幼稚園などで集団生活を送るなかで、わがままを言ったり甘えても、思いどおりにならない時があるという体験をします。人との関わりを通じて、小さながまんを経験したり、その場のルールを守ること、自分を表現するのも周りと折り合いをつけつつ、ということを学んでゆくのです。
 今回のお子さんは「とてもマイペースでわがままな行動をとりやすい」とのこと。勝手なことをした時に先生に注意され、かえって騒いだり言い返したり、まるで自分の行為を妨害されたと抗議しているかのようですね。他の子なら自然に周囲の状況を感じとるようになりますが、彼はそこに弱さを抱えているのかもしれません。  自己主張も強いので、大人はつい子どものペースに振り回されてしまいます。大人が対応を振り返ることは、子どもとの良き関係を築くうえで大事な視点だと考えます。
 では対応を具体的に提案します。

●周りの事情を知らせ人に合わせる練習を
 人との関わりには、ことばに限らず人の表情やその場の空気を感じるような非言語情報をつかむ力も必要になってきます。周りに合わせることが苦手な彼は、わかりやすい状況を用意することが大きなポイントになるでしょう。
 対応としては、まず家庭内のルールをはっきり示してゆくことです。そしてそのルールや人に合わせて、自分の気持ちをコントロールする力をつけてゆくことを目指したいです。
 親御さんがルールをつくり、子どもがそれに応じられるようリードをしてあげましょう。
 いくつか例をあげてみます。
・必ず片付けをしてから食事にする
・食前に待つ練習をする、順番にものを使う
・1番〜2番〜3番〜、と区切るなどしてやることをわかりやすく伝え、そのとおりに行動する(文字で示して子どもに覚えさせると自分のこととして取り組みやすいようです)
・おかしや冷蔵庫のなかのものを食べたい時や、パソコンなど特別なものを使う時は、大人に尋ねる

 始めは、大人の指示を聞けなくて騒いで抵抗するかもしれません。その時、大人は譲らずにきっぱりと「あなただけで決められないことがある」ということを教えましょう。彼が騒ぎをやめて、渋々指示に従いだしたら「それでいいよ、えらいね」とすかさずほめてあげてください。
 彼が大人の様子をうかがい、「やったよ、いい?」などのやりとりが出てきたら、人と関わる世界に踏み出したことになるのでしょう。

●日々の生活のなかに題材をみつけて
 
もうひとつの視点として、日常のことを大人が小さい時からきちんと伝えてゆくことが必要かと思います。食べること、着ることなど、それなりにやれているので……と生活のことは自然にやれるようになる、とお考えの方も多いようです。けれど振り返ってみると、私たち大人も社会で通用する作法というのは、かつて親から教わったり周りから学んできました。
 周囲の情報を自分から取り込んだり人から学ぶことが上手ではないタイプだからこそ、大人のほうから意識的に先々に役立つ生活の技やマナーを伝えていきたい、と考えます。そして教え伝え合うなかで、人と関わる入口も広げていきたいと思います。
 小学校も高学年になって、ごはんは犬食い、着替えは部屋の真ん中でどかっと座り込んで、排尿時はパンツをすっかり下ろしてお尻を丸出し……。こうしたお子さんに出会うとどこから手をつけようか? と私たちも困ってしまいます。生活習慣と言われるように、手や体が覚えるものは、幼児期から何を積み重ねてきたかで、大きくなってからの様子がまったく違います。目標に向けて一歩ずつ、方向性のある関わりを実践されることをお勧めします。
 たとえば苦手なものも応援されて食べる、かきこまないで食べる、一定の場所で着替えをする、ズボンのチャックから排尿するなどが、目標になるでしょうか。
 スモールステップで細やかに見る視線を持たれると、子どもに物事を教える時にきっと役立つと思います。その際に手から手へ伝えるやりとりをぜひ。「そっと置くんだよ」「ギュッと力を入れて」など手を添えて伝えます。「おっとと、こぼしちゃった」「今度は上手にできたね」。小さな手のぎこちなさを感じるとともに、親子のコミュニケーションも生まれてくると思います。お子さんに一目もニ目もおかれるお母さんになってください。

 「賢い母は、生活のなかで子どもを変える」。これは幾度となく私がこの仕事のなかで先輩に聞かされたことばです。そして、まさに実践をされている素敵な親御さんたちにも出会えました。周りの状況をつかむ力が弱い子どもたちだからこそ、しっかりと子どもの道しるべになって、その場の状況に合わせること、やりとげることなど「自己コントロール」の力を日常の題材を利用して育まれてこられた方々です。人と関わるうえで大切な基礎となる「自己コントロール」の力を、幼児期から親御さんのもとで育ててください。
 ぶつかりあいもあるでしょう。けれど、お子さんと丁寧に関わる経験を重ねることで、彼のつまずきの理由や行動のスタイルが読め、気持ちを感じたうえでのやりとりにつながると思います。マイペースで人からやらされることが嫌いな子が「お母さんにほめられてうれしい」「がんばって気持ちよかった」と親子で喜び合えたり。様子がきっと変わってくると思います。お子さんが大人を頼りにして健気さを見せてくれると、張り合いも生まれてくるでしょう。どうぞがんばってください。

田宮 正子 (発達協会)言語聴覚士・社会福祉士

 


Q16

 私の子どもは1歳4ヶ月になる男の子です。3ヶ月前に、発作を起こしたため病院で診察を受けました。診断は「ウェスト症候群」とのことで、現在、抗てんかん薬を服用しています。
 しかし、今のところ思うように発作は止まりません。またそのことによる今後の発達の遅れについても心配しています。
 息子は、いろいろな物に対して興味を持っており、とくに兄の声はとても好きなようです。自分で歩くこともでき、人を追ったりします。気になっているのは、ことばがないこと(「うー」という声は出ます)、あやしても笑顔があまり見られないこと、まったく人の仕草を真似しないことの3点です。
 今の子どもに対してできることは何か、今後どのような状態になっていくのか、アドバイスをいただければと思います。

A16

●ウェスト症候群とは
 今回は1歳すぎのお子さんについてのご質問ですが、ウェスト症候群は、ほとんどが乳児に見られ、年長児や成人には存在しないてんかん症候群で、@点頭発作(短時間、体を硬くして屈曲するような発作)、A精神運動発達の停滞、B脳波上ヒプスアリスミアと言われる著しいてんかん波があるという特徴を持っています。
 てんかん発作が起こってくる前から、発達が遅れていることが少なくありませんが、この病気になり、発作が軽減しないうちは、発達が停滞します。しばしば発達の退行(やっていたこともできなくなること)も見られます。ほとんどの場合、基礎に発達の遅れなどを引き起こす脳の障害があり、これが原因となって、このような発作が起こると考えられています。この原因がはっきりしている場合は「症候性」、はっきりしない場合は「潜因性」と言います。

●治療
 50年弱の歴史を持つACTH療法が、今でもウェスト症候群の最も有効な治療法と考えられています。ACTHは副腎皮質ステロイドの分泌を促す下垂体ホルモンで、その筋肉注射を行ないます。以前よりは少量使用となり、副作用(高血圧、肥満、易感染性、興奮など)も少なくなっています。
 また、わが国では、ビタミンB6療法が10%に有効と言われ、まずはじめに試みられることが多い療法です。一部の抗てんかん薬は20〜30%に有効、その他、免疫グロブリン大量療法、TRH筋注療法、Lドーパが有効な場合もあります。主治医は症状や脳波を見ながら治療法を工夫されているものと思います。

●予後(これから予想される経過)
 予後にかかわる第一の要因は、このような発作を起こす原因となった脳の障害の状態です。たとえば、重症の仮死で生まれて脳の損傷が強ければ、発作の経過にかかわらず、知的な面、運動面ともに大きな障害を残すと思われますが、基礎になる明らかな脳の障害が見つからず、発作が起こりだす前の発達に問題がなかったような場合は、比較的発作も抑制されやすく、後に障害を残す頻度やその程度は軽いと思われます。

 ただ、全体としては、90%に知的障害が残ると言われていますので、他のてんかんより、発達に重大な影響があると言えます。基礎疾患とはいえ、発作が軽減しないうちは発達も停滞してしまいますので、早く発作が止まったほうが発達は促進されると考えられます。また、知的障害の他、多動、自閉傾向、易興奮性を来たしやすいとも言われます。このことへの配慮も必要です。
 発作の経過としては、半数で発作の再発を認め、また、長期的には半数以上が他のタイプのてんかんに移行していきます。

●今やるべきこと
 まずは、主治医に十分お子さんについての情報を伝え、お子さんに合った治療をしていただきましょう。主治医には発作のみでなく、表情、活気、行動面、情緒面、眠気など、さまざまな変化を伝えたほうがよいと思います。
 発作がよくなりはじめたら、治療とも平行して、お子さんの発達の状態をチェックしつつ、お子さんに合った刺激や遊び、やりとりを通して、発達を促していきます。お子さんに入りやすい刺激を探すことも必要です。ご質問のお子さんのように兄弟や他の子どもからの刺激はよい効果を生むことも多いです。ことばでのやりとりがむずかしければ、スキンシップや視覚的な手段を使ってかかわることなど、どんな状態でも人とのかかわりを促していくことが大切です。

 また、どんなお子さんの発達時期にも必要ですが、五感を使い刺激と相互に反応しあうような遊びや経験を多くしましょう。たとえば、氷にさわったら冷たかった、何かに触れたら音がしたという触れ方が違ったら違う音がした、というような単純なことから、犬をなでたらすりよってこられた、誰かに触れたら振り向かれて声をかけられた、何かやったらほめられたなどのさまざまな経験です。ビデオを独りで長時間見る、あるいは、ただ教え込むことなど一方的な刺激ばかりでは真の発達にはむすびつきません。

●これからやっていくこと
 ウェスト症候群にかぎらず、てんかんがあると、ご家族はてんかん発作の状態にのみとらわれて、普通の子育てやしつけがおろそかになり、しばしば過保護になったり、過干渉になったりします。このために発達を妨げたりすることがないように心がけなければなりません。
 ただ、再発が起こりやすく、他のタイプのてんかんに移行もしやすいウェスト症候群では、発作や脳波を観察していくことや治療の継続がしばしば必要なので、定期的な主治医への受診や相談が長期にわたって継続できる体制をつくることが大切だと思います。

石崎 朝世(医師・医学博士)


Q15

 つい先日、3歳になったばかりの子どもについての相談です。息子は重度の知的障害があり、ふだんからとても落ち着きがありません。元気がいいのは良いのですが、眠くなった時や疲れた時、そして思い通りにならなかった時に、輪をかけて動きが激しくなり、でんぐり返しをしたり、グルグル回ったり……と、手がつけられなくなります。
 寝る時には、ギューと抱きかかえ動きを止めて寝かせるようにしていますが、ほかの場面では激しい行動をどのように止めればよいでしょうか。
 またこのような行動をとらないようにしていくためには、どのような関わり方やトレーニングが必要でしょうか。

A15

●なぜ動き回るのか
 人の身体は、もともと自動的に動くようにできています。発達するにつれて、必要のない動きを止めて、必要な動きだけするようになります。この動きを止めたり、自分の考えた通りに動かす力(コントロール力)がうまく育っていないと、本人の意志とは関係なく、不必要な動きが出てしまい、本人のみならず、周りをも困らせることになります。
 特に、眠い時や疲れた時などは、コントロールする力が弱くなっています。また、思い通りにならなかったときも、気持ちがたかぶってコントロール力が弱くなります。ふだんはそれほどではなくても、このような時には、動きだけではなく、騒いだり、パニックを起こすことも多いと思います。体のコントロール力は、気持ちのコントロール力にも関係しています。
 コントロール力の弱い子は、感覚が適切に取り入れられない、筋肉を緊張させたり緩めたりがスムーズにできないなど、体に問題を持っていることが多いですね。

●急場の対処法
 動き回っている子に対して、「静かにしなさい」と言って、静かになるようなら、わざわざ相談する必要はありませんね。小声では止まらず、大声ではかえって動きが激しくなりますので、直接体を止めるようにします。小さい子なら、強く抱き止めるくらいですむかもしれませんが、力の強い子では、振り切ってさらに激しく動き回られてしまいます。寝かせられる所なら、寝かせてタオルケットなどをかぶせ、その上から馬乗りになって止めることもできますが、外で動き回られたら、止めることが難しくなります。普段から、体を止める練習をしておくことが大切です。

●ふだんの練習法
 とっさの対応が難しくなる前に、ふだんから体を止める(体と心のコントロール力をつける)練習をしておきましょう。運動では、決められた(ルールに沿った)動き、目的をもった動きが原則です。勝手に動いているのは、運動ではありません。その意味では、どの運動を練習しても、コントロール力の練習にはなりますが、ここでは体を止める練習を中心に紹介します。時間は短くても構いませんので、毎日続けてください。

@感覚の統合
 感覚が適切に脳に届いていない人は、周りの状況がわかりにくく、周りに合わせて動く力が弱くなります。敏感過ぎることが目立ちますが、逆に感覚が鈍いこともあります。どちらの場合も、その感覚を体験させていくことで、適切な感覚が脳に届くようになります。感覚の中でも、触覚、前庭覚(揺れの感覚)、固有覚(手足の位置感覚)などが大切です。乾布摩擦やマッサージ、ブランコで揺れたり、ゴロゴロ回転したり、狭い所をくぐり抜けたりという運動が、代表的です。

Aあぐらそり
 動きを止めるにも、緊張を緩めるにも有効です。図1のように寝て、じっとしています。ただ寝ているよりも、腹筋や股関節の緊張が緩みやすい姿勢です。股関節が固く膝が開かない子も、そのまま寝ていると、緩んで開いていきます。力ずくではなく、リラックスして止まるのが目的です。
 止まっていることが目的なら、10数えるくらいから始めます。緊張を緩めることが目的なら3〜5分は寝ているようにします。

 

 

 


図1

Bガリバー
 止めること自体が目的です。最初は片手を机の上にのせて、止めることから始めます。子どもにもよりますが、10くらいを目安に始めてください。片手ができたら両手を止める。仰向けに寝て両手を止める、次に手足を止める。さらに目を閉じ、口を閉じるなど、細かい所も止めるようにします。
 正座の姿勢や、立ったまま1分以上できるように練習してください。


C膝立ち
 図2のように両膝で立っているだけですが、意外と難しい子がいます。これも10数えるくらいから始めてください。1分できたら卒業です。

 

 

 


図2


倉持 親優(言語聴覚士・健康運動指導士)


 娘は5歳(幼稚園の年長)です。重度の精神発達遅滞で、言葉の理解もまだです。はっきりわかっているのは、本人の名前ぐらいです。知能は1歳前後で、運動能力は1歳半ぐらいと言われています。手の使い方もまだまだで、小さなものを親指と人差し指でつまむことがまだできず、服の着脱もなかなかすすみません。娘は本当にスモールステップの発達なので変化がわかりにくく、介助の減らし方、身辺自立の進め方が難しいです。
 今とくに気にしているのが、排泄のことです。3歳の時、通園施設で1年間パンツでトレーニングし、4歳の時、保育園で布のトレーニングパンツで半年間定期排泄をしていました。家では半分おむつにたよっていました。今年6月から家では夜以外パンツで、園では9月からパンツで過ごしています(外出先ではおむつを使用しています)。
 時間排泄はほとんど成功するのですが、ほぼ1時間おきで、(もつときは2時間以上だいじょうぶですが、今は連れていくとほとんど、少しでも排尿します)食後は15分後、30分後と連れていき、その後から1時間おきになります。少し多めに水分を取ったときは、1度失敗すると、5〜10分おきに3、4回漏らしてしまうときもあります。このまま、失敗をしないようにと、1時間おきにつれていくと、あまり我慢ができないようになるのでしょうか? よろしければアドバイスをお願いします。

 

 おむつをはずしてあまり間のないお子さんなのかと推測します。おしっこをためておくという働きがまだ十分でないお子さんでしょうか。
 「トイレで必ずおしっこをする」という習慣をつけるためには、おもらしの失敗はさせたくないですし、間隔が短くては生活の流れが途切れがちになり、悩むところです。

 おしっこが出やすくなるのは、おおよそ、食事の後、冷えた時、泣いた時、体操などで腹圧がかかった時ですので、その時は用心して短めの間隔でトイレへ行くことになります。
 でも、尿量によっては、間隔をあけて、少し尿を貯めさせても良いと思います。初めは、タイミングをよくはずされます。行ったばかりなのに大量のおもらしをされるとがっかりなさると思います。

 そうしたしんどい経験を元に、どのくらいの間隔がよいのか探ろうと、あるお母さんは、1日の排尿の時間とおおまかな量を記録しておられました。計ったようにぴったりの時間には出ませんが、大体の傾向が見えてきます。
 この子は、トイレで成功する回数が増えたので、「おしっこはトイレだけでする」という習慣が徐々に身についていきました。また、すぐにはもらさず、体にそぶりを出すようになったようです。
 お母さんも時間と本人の様子をにらめっこしながら、まだ大丈夫なのか、急ぎなのか、そぶりがつかめるようになってきたといいます。

 それから、運動の面で幼さを残しておられるようですので、筋肉の緊張やコントロールの弱さもあるかもしれませんね。
まず取り組みやすいのは、よく歩くことです。『歩きの効用』については、月刊「発達教育」の2002年10月号の「一人でできるをめざして」のコーナーで触れたのですが、気持ちも活発になってきますし、基礎的体力・筋力もついてきます。
 1時間ぐらい歩き回ると充分歩いた感じになりますが、ゆっくり巡っていると大した歩行量にはなっていません。万歩計をつけると目安になります。欲を言えば目標1万歩ですが、自分から動くことが少ないとなかなか到達しないので、それを目指しつつ記録していきます。
 脚の力が弱いと脚が突っ張るように力も入りやすいので、よく歩いたらマッサージなどで緩めてやります。
 また、腹筋を鍛えたり(図1)、括約筋など骨盤底筋を鍛える体操(図2)も試していくとよいですね。
 腹筋運動は、初めは手を引いて引き起こしますが、起きることがわかったら背中の下に座布団などで補助をつけ、自分で起きるようにさせます。手は前に突き出していても構いません。反り返って起きるのではなく、丸まるように起きるのが注意点です。骨盤底筋の体操は図のものが本人にはわかりやすいでしょう。仰向けから膝を立て、お尻をぎゅっと持ち上げます。力の方向を教えるためにお尻をつついたり、「おなかペッタンね」と目標に手の平を示して、上げたり下げたり練習します。

 トイレに座れば少しでもおしっこをするということですから、お子さんは、第1関門は通過しています。
 次は大量のパンツを準備しながら、時間帯を考慮しつつ、そぶりをキャッチしてトイレにダッシュということもあるかと思います。お母さんの運動神経も鍛えられますが、前記の運動で本人の運動機能を高めることも並行してみて下さい。

 「明けない夜はない」と私たちの先輩がよく言います。粘りを必要とする時によく聞きました。毎日の繰り返しなので、本当にいつまで続くのかと思うのですが、行きつ戻りつしながら、お子さんは変化していきますし、変化させていくことができると思います。

相談員:武藤 英夫(発達協会)臨床心理士


Q13

 息子は幼稚園の年少です。身辺面のことなどは自分ででき、こちらの言うこともだいたい分かっているようなのですが、いまだにことばがありません。
 現在、家の中ではそれほど問題はないのですが、園の中で困っていることが二つあります。
 @一対一で話を聞くことはできても、全員に対して話した場合、我関せずで、一人で勝手な行動をしているようです。
 A一人の子に対して、どうしても気になるようで叩いたり問題行動があるようです。何か原因があると思うのですが、息子は口で説明することができず、先生は頭を痛めているようです。
 このような息子にどのように対応したらよいでしょうか。

 

A13

 お子さんの園での行動についてのご質問なので、直接お母さんがお子さんと関わる中でのことではない点が、返事を書くにあたって気になります。園の考え方とか、先生とお母さんとの関係がどうなのかなど(なんでも話し合える関係なのかどうか)わかりませんので、どうしたものかと迷いましたが、一応お答えを書いてみようと思います。

@クラス全員に対して先生が話すのを聞いていない、ということについて
 一対一だと自分が注目する対象が明確なので、相手の言っていることに集中できるのですが(相手からの働きかけが自分にだけ集中するので逃れようがなく、言われていることにちゃんとアンテナを向ける)、皆に向かっての先生からの働きかけは、「自分にだけ向けられる」時と違って、当然弱まります。そうすると、それに向かって「自分からアンテナを張ろう」とする意識が弱いので、「聞いていない」ということになります。

 まだお子さん自身が「まわりの人や状況に合わせよう」とする意識(社会性)が弱いので、外側から自分に向けられる働きかけが弱まると「自分本位」が優先してしまうということなのだと思います。自分にだけ向けられる先生の話は理解して応じるのでしょうから、「理解する力」はしっかり育っているということがわかります。その力を「自分からまわりの人や状況に合わせよう」とする方向に発揮させるように働きかけていくことが、今大事なポイントになりますね。
 現状では、まだ先生が皆に向かって話したことは聞いていないということですから、先生にお願いできるのでしたら、「皆に話した後、彼にはもう一度話してもらう」ようにしてもらい、「何するんだっけ?」とその内容を復唱させるなどして、「しっかり聞く」意識を育ててもらえたらと思います。もちろん、お母さんも、日常お子さんに「しっかり聞く」ことをいろいろな場で工夫して学ばせていくことが大事です。何かを言いきかせた後、「お母さんは今、何て言った?」とか「これからどうするんだっけ?」などちゃんと聞いていたかどうか確認していくことです。  

 ともかく、かなりマイペースなお子さんのようですね。「自分もこのクラスの仲間だ」と思う意識が育ってくると(これは社会で生きていく上でとても大事なことです)、先生が皆に向かって言われたことはよくわからなかったとしても、皆の動きを見て「あ、クレヨンを取ってくるのか」とか「あ、庭に出るんだな」とか判断して、そのように真似て行動するのですが、「自分勝手な行動をとってしまう」ということですから、この「マイペース」を変えていくことを考えないといけないわけです。お家でもお子さんの言いなりにならず、勝手な行動を許さないような働きかけもしていかないと、園だけでは改善していかないでしょう。  

 でも、園に行くようになって、お子さんはずいぶん変わったのではありませんか? そこでは、お家よりずっと多くの「思い通りにならない経験」があるでしょうから、かなり成長が実感できているのではないかと思います。それをさらに伸ばしてあげるためにも、お家での対応も工夫をしていくことが大事だと思います。要求をさっと満たしてあげるのではなく、「○○をしてからね」と応じさせたり「○○をしてはいけません!」と言ったら絶対にさせないでガマンさせるとか、「○○をしよう」と言ったら必ずさせるとか。そして、ガマンできたこと(ガマンせざるをえないようにしたのですが)、お母さんの指示に応じてやったこと(応じさせたのですが)、を「えらかったね。がんばったね」としっかりほめる(心からほめることです)ことを忘れずにやっていくと、もっと成長すると思います。

A友達を叩くという行為について
 お子さんがターゲットにしている子は決まっているようですね。誰彼なしにするのではなく、やったら倍返しされそうな自分より強い子にはやらないのではありませんか?「自分本位には状況判断もしっかりしている」のではないかと思います。どんな理由があるにせよ、「人を叩く」という行為は絶対にいけないことですから、これは厳しく注意していただくように、先生にお願いしたらと思います。「言ってもわからない子だから」と思って、叩かれた子にガマンさせるようなことは、「この子は危険な子」「わからない子なんだ」というレッテルをお子さんに貼ることになります。叩こうとするときをつかんで、お子さんの動きを止めて「いけない!」「叩いたらダメ!」と強く(お子さんがハッとするように)注意するのが一番良いのですが、叩いてしまうことの方が多いでしょう(先生はお子さんだけを見ているのではありませんから)。そのときも、しっかりとお子さんと向き合って「叩いたらダメ!」と注意していただけたらと思うのですが。

 お家の中ではそういうことはないのですか? 思い通りにならないとき、お父さんやお母さんを叩くということはありませんか? 「家族だからまあいいや」と許していたりすると、外でもやるということになります。お家の中で、お子さんを「お殿様」にしてご両親がお子さんに振り回されているようだったら、この関係を変えていかないといけないと思います。
 これから大きくなるにつれ「人々の中で生きる」部分が多くなっていきます。そしてそこには、皆が気持ちよく暮らしていくためのルールがあって、それを守って私達も生きているわけです。お子さんは今、園という子ども社会でその「ルールを守る」ことを学んでいるわけですから、それをより多く学べるようにしてあげたいと思います。「学べる力」を持っているお子さんを信じて、頑張って働きかけてください。

 ご質問の内容のわずかな情報からの返事なので、「的外れ」になっているかもしれませんが、今まで子どもたちと歩いてきた年月の中で「大事だ」と思えることについて書きました。


 2歳1ヶ月の、多動傾向と診断された息子のことでご相談します。
 以前よりは多動も少しずつ落ち着いてきていて、買い物などでいなくなってしまうことはなくなってきました。また言葉も遅かったものの、最近は彼なりの二語文で、親ならわかってあげられるくらいのお話もできるようになってきています。

 お聞きしたいのは「叱ること」についてです。
 身のまわりのことに取り組んでいますが、手先がまだ不器用で、例えば食事で箸がうまく使えず、息子自身もイライラして、お皿ごとバーッとひっくり返してしまうことがよくあります。そういうときはやはり叱るべきでしょうか。

 またもうひとつ、やはり公園などで思い切り遊ばせてやることは大切でしょうか。困っているのは、お友だちとのトラブルです。自分より強そうな子にはされるがままなのに、弱そうな子はわかるようで、おもちゃを取ってしまうなど乱暴してしまうことが多く、だんだん周りのお母さんたちにまで、直接息子が叱られるようになってしまいました。叱られてばかりいるのでかわいそうで、私のほうも公園に行きづらくなり、今はひとつ違いの姉と2人で遊ばせています。でもいずれ姉も他の友だちと遊びたくなってくるでしょうし……。どうしてやればいいでしょうか。

 丁度このくらいの子どもはわかっているように見えてわかっていない事が沢山あり、身体の動きも万遍なく発達しているわけではなく部分的に未熟な事も多いものです。その為に周りとぶつかりトラブルが度々起こるし、手その他がうまく使えないといった悩みも生じます。
 あなたの息子さん(仮にM君としましょうか)の現在の根本的な問題は心身共にコントロールする力の弱さにあると思います。叱るかどうか迷う前に、まずどこに問題があるか考え、それに対する対策を工夫することでしょう。子育ての基本は私たちが親にしつけられたことを下敷きに当たり前のことを当たり前に身につけることから始まります。つまり、M君のお姉さんのときと同じです。

 子どもは幼ければ幼いほど物事も世の中も自分中心に見てしまいがちです。だからこそ様々な場面を経験させて社会性を育てて「自分とは?」を認識させていかなければならないのです。家庭生活から出発して、公園・公共の乗り物・スーパーや食堂やお店・集団生活など、学びの場は限りなくあります。
 公園で「思い切り遊ばせる」とはどんな事でしょうか?それは「ルールを無視して、したいようにさせること」ではない筈です。誰でもその場にあったルールを守って過ごしています。自己抑制のきかないわがままな子にはブレーキをかけてやらなければなりません。いけないことをした時は毅然として叱ってたしなめる。「叱られて可哀そう」ではなく、叱られるようなことはさせないこと。していいかどうかがわからない事にはルールに従うように教えること、公園も学びの場と考えることです。
 お皿をひっくり返す、自動販売機の前で「買って買って」と泣き騒ぐ、親をたたくなど、お母さんが「これはさせてはいけないこと」と思うことに対しては、迷わず自信を持って叱ることです。子どもにとって手足が思うように動かせないのはイライラすることですから、テーブルをたたいたりお皿をひっくり返したりもします。でもその度にそんな事を叱られたりたしなめられたりしてわかっていくのです。何も言われなければ「これはやっても良いらしい」と誤解してしまう未熟者たちです。

 公園は、いろいろな人との付き合い方や遊び方、ルールを学べる所です。人のものを黙って取らない、人を押さない、順番を守るなどそこでしか学べないものがあります。「皆に叱られて可哀そう」と被害的にならないで「教えて貰った」と考えましょう。本人に悪気がなくても周りには大迷惑であることが案外多いものです。お母さんもM君に教えたり叱らなければならないことがたくさんある筈です。また、周りの親子のやりとりの中から気付かされたり学ぶことも沢山ある事でしょう。いけないことに対して、きちんと叱ることはとても大切です。
 そしてもう一方では「それではどうするのがいいか」を教えることも忘れてはならないと思います。トラブった時が教え時です。時にはお母さんが一緒に仲間に入ってM君に遊び方ややりとりの仕方を教える、また時にはM君が自分で仲間に入れるように仲介役を果たすのもひとつの方法です。家の中でお姉さんと2人で遊んでいる時は確かに静かで、叱られるような事は起きないかもしれません。でも、それはM君が嫌がることが避けられがちで、彼のわがままを通しているからではないでしょうか? お姉さんは我慢強くなりますがM君はどうなりますことやら……。お姉さんもM君もどんどん外へ出して大いに刺激を与え、学び吸収する機会を増やしてあげてください。

 手が不器用と言われるM君、多分身体全体のコントロールもまだまだ未熟なのでしょう。磨き甲斐がありそうですね。手も体も使うほどに動きが良くなります。彼は間もなく3歳ですから「手」を鍛えるには丁度良い時です。M君の現状に合った目標を定めてじっくり取り組ませると良いでしょう。
お箸の練習、よく頑張っているようですね。ご本人も上手く使えるようになりたいのでしょうが思うようにいかなくて、焦がれてしまうのですね。大変ですが、続けていけば必ずクリアーできます。食事のときだけでなく、小さく切ったスポンジをお皿からお皿へ箸で移すといったゲームなどお母さんと競い合ってはどうでしょう?
 〈歯磨き〉〈洗顔〉〈入浴〉〈髪をとかす〉も手を使うもの。ボタンかけやシャツのすそいれ、紐むすび、衣服の脱ぎ着のなかでも手・指は驚くほど活躍しているのです。遊びや家事のなかでも、〈つかむ〉〈押す〉〈引っ張る〉〈広げる〉があったりして考えてみるといろいろあるものですね。おかずの入った器をそっとテーブルへ運んだり、しっかりお絞りタオルをそぼることは微妙な手の動きを促します。お姉さんといっしょに、お母さんといっしょにお家の仕事をするのは誇らしく嬉しいものです。うんと巻き込んであげてください。

 家の中、外ともに、本人中心ではなく皆と一緒に生きていける力を育てていくこと。まだ小さいから、わからないから仕方ないと思わないで前向きの子育てをなさってください。
 忍=忍耐強く最後までやり通す。
 根=根気強く努力する。
 芯=芯の通った意欲を持つ。

 この3つを柱にどうぞ。

相談員:神田 武子(発達協会)保育士



Q11

 私は保育園の保母をしており、4月から5歳児クラスを担当しています。
 私の担当しているクラスの発達に遅れのある女の子のことでお伺いします。Bちゃんは言葉の遅れはあまりないようで、保母と話をしたり、簡単な指示を聞くことはできます。自分から友達に話しかけることは少ないのですが、友達と遊ぶのは大好きなようです。
 しかし、手先が不器用なため、ボタンをはめたり、靴下をはいたりするのが苦手で、保母が手伝ってやらせようとすると、「やらない」と言って、寝っ転がったり、まったく関係のない話をしてごまかしたりします。少しずつできることは増えていますが、本人の「がんばろう」という意識が薄く、うまくやらせることができなくて困っています。
 来年は就学を控えているので、身の回りのことだけは一人でできるようにしたいと思っているのですが。良いアドバイスがあればお願いします。

A11

赤ちゃんの時代から子どもの成長を見守っていると、周囲の大人の行動から、多くのことを「まねて」試行錯誤しながら自分のものにしていっているのに感心させられます。
 大人と同じようにお箸を使おうと悪戦苦闘し、お茶碗ももって食べようとします。ズボンをはこうと挑戦し、片方の穴に両足を入れて、大人の笑いを誘います。
 このようにして、子どもは「まねる」ことから「生活習慣」の力を徐々に確実なものにしていきますが、その意欲を高めていく原動力は、失敗する場合も含めて、大人の「ヘェーたいしたものだ」という賞賛のまなざしや言葉、笑顔などなのでしょう。その評価が嬉しくて子どもは励むのでしょう。
 こうして繰り返す練習が技能面も発達させ、やがて「一人でできる」ようにしていきます。「一人でできるんだ」という自信、誇り、それはこれからも、「人として生きる」ために、たくさんのことを学ばなければならない子どもにとって、非常に大切な「学ぶ姿勢」となります。
 大人の側が、特に「教える」という構えを持たなくても、子どもの側が「まねて挑戦する」ことに意欲的で、大人はできない部分で手を貸したり、修正してやるだけで、「自立」を獲得していく子ども達がいる一方で、依存的で自分でやろうとしない子ども達がいます。この違いが出てくる要因は一概には言えませんが、今までに出会った、障害を持つこの多くは「してもらうことに慣らされ」て、「やってもらう気楽さ」に安住してしまっているように思います。このような「ボタンのかけちがい」はどうして起こるのでしょう。
 大部分の子ども達は、ある時期、「自分で」というサインを出していたのではないか、と思います。ただそのサインは弱かったでしょうし、手指の働きも不器用、集中力も瞬時に途切れるということで、親が見守る限界を越え、待てずに手を出してしまい、いつのまにか「何もできない、してやらなければならない子」にしてしまったのではないかと思います。
 親自身、「生活習慣」をそれほど発達にとって大事なことと考えず(自分自身を振り返ってみても、特に学んで身につけた、という記憶がないので)、その上、我が子が障害のある子だと知ると「そのためにできないのだ」と考え、「自立」させることより「世話をする」方向に受け止めてしまった、ということも原因として考えられます。
 ご質問のBちゃんは、「着脱」が嫌で、寝転んだり、関係ないおしゃべりでごまかそうとするとのことですが、他の場面でも苦手なことなど、こうした「逃げ」は多いのではないでしょうか。
 「ことば」の有無は、障害の有無を見る大きな決め手となりますから、子どもが「話せる」ということは大きな喜びとなります。親が喜ぶことは、子どもの喜びとなりますから、せっせとその力を磨きます。それは大変すばらしいことですが、一方で「話せる」ことが免罪符になって、「わがまま」や「逃げ」が許されてしまうことが、往々にしておこります。
 Bちゃんの場合も、親御さんは「生活習慣」がそれほど大事だとは考えず、着せたり食べさせたりすることが、愛情だと思ったのか、そうするほうが面倒じゃないと思ったのかわかりませんが、ともかく「世話をして」しまっていたのでしょう。彼女が「話せる」ことに安心し、他の面では「赤ちゃん扱い」をしてきたのでしょう。
 その中で、彼女は寝転んだり、関係のないおしゃべりでごまかす手段を巧みに使って「苦手なことから逃げる」ことを学んだのでしょう。苦労してボタンをはめたり、かかとが難しい靴下にチャレンジして、「すごいねぇ、やったね!」と賞賛される喜びを経験することもなく、人から期待され、それに応える誇らしさも体験しないままに、「面倒くさいことは自分でしない」ことだけを学んでしまったのでしょう。
 というわけで、彼女への接し方は、寝転がることも、関係のないおしゃべりも無視して、やらなければいけないことは妥協せずにさせて(一緒に手を添えてでも)「ヤッタネ!さすがお姉さんだ」と認めてあげる機会を作っていくことだと思います。
 「あなたはできるはずよ」と信じた接し方、それが彼女に「認められる」喜びを知らせ、自信を育てるでしょう。それが「意欲」になっていくのだと思います。

相談員:石井 葉(発達協会)保育士


Q10

私には、自閉的な発達障害を持った7歳の長男と5歳の長女がおります。
 長男は小さいときから落ちつきがなかったり、いたずらが激しくてとても苦労しています。自閉的なのでなるべく要求は受け入れ、優しく育てていましたが、ますます行動があらたまず、先日も妹が大切にしていたものを壊してしまいました。
「お兄ちゃんはわからないでやったのだから我慢してね、ごめんね」と私が慰めたのですが、妹のほうはどうしても諦められないのか「もう、お兄ちゃんとは住みたくない!お母さんはいつもお兄ちゃんのことばっかり・・・」と言い出す始末です。妹にも心かけていますし、兄の理解者になってほしいと思いますのにショックです。
時には姉のように世話をやいてくれて、やさしいのですが、こうしたことを言う妹をこれからどうして育てて、兄のことをわからせていったらいいのか、多くの兄弟たちはどんな育て方をされているのか、教えていただきたいと思います。

A10

兄弟姉妹のことを考えるとき、子どもをどう育てようとするのか、どんな大人になって欲しいのか考えていくのは大切ですね。
 兄思いのやさしい人に育ってほしいと願っているのに、お母さんの願いと反対に、そうしたことを言う娘さんが心配になられるのでしょう。
 でも、よく考えてみますと妹さんの言葉は当然で、あたりまえのことを、言っていると思います。誰だって大切なものを壊されたりしたら嫌だし、住みたくないと思います。勝手に妹のものをさわったり壊したりしたのに、いつもお母さんはお兄さんの側にたってしまう。それに対する娘さんの怒りなのではないかと思います。今までのような関わりでは、ますます、兄と妹の間は離れるばかりです。
 子どもを育てるとき、私たちが心がけていかなければならないことは、なるべく子どもたちにわかりやすい関わりをしていくことと、ハンディがあってもなくても、人としては許されない行動や、あたりまえに身につけていかなければならないことは丁寧に教えていかなくてはならないことです。
 お母さんの中には、自閉的といわれるとそうした日常生活のこともわからない子どもと考えてしまい、「家族が我慢するしかない」「好きにさせるのが大切にすること」と思い込み、懸命に家族の理解を求めようとする方が多いのですが、そうすればするほど家族は無関心、無理解になりやすく、兄弟たちはお母さんの思いから程遠い育ち方をしてしまいがちです。

 自閉的な子は、物事の成り立ちや様々な生活上のルールを理解しにくく、くり返し経験して学習していかなければなりませんのでつき合っている方は「わからないのかな?」と思ってしまいがちですが、まわりの人が諦めない限り、かならずわかってきます。
 今、あなたが心を決められて生活の中で、きちんとした対応をされれば、そうしたお母さんを見て妹さんはお兄さんの障害を理解していかれるでしょう。
 「姉さんはどんなことをするのも時間がかかるし、勉強も私の10倍もやっているのになかなか覚えられないので、気の毒だなと思います。でも、一生懸命するからえらいと思います」と、ある妹は感想を述べていました。

 頭でっかちに言葉で教えることでなく、生活の中でお互いの真剣なやりとりの中で育っていくものです。5歳になった妹さんも、ものごとを理解できるようになっています。あなたの対応を正しくしていけば、必ずお兄さんのことも理解し、障害を持っていても努力していく兄の姿から学ばれていくと思います。
 たくさんの兄弟姉妹とつき合ってきましたが、よい理解者になって、障害を持った子たちから、人としての生き方を学ばれて、いい仕事や家庭を持たれ、親たちの確かな協力者になられています。
 障害のために、体や手足がうまく動かない子たち、視力や聴力や様々な感覚が働きにくい子どもたち。障害を持ってしまったのは子どもたちの預かり知らないことですから、子どもをうけとめ心をこめて育てていかれることですが、「大切に育てる」というのはどんなことでも許すことではなく、より生きやすくするために生活の手だてを学ばせ、家族や地域の人々の中であたりまえに暮らせるように考えていくことだと思います。
 障害を克服して、けなげに生きている同胞と生活を共にして、兄弟たちは誰よりも深くハンディのある人たちの理解者になっていきます。

 「父母は兄が生まれるまで、障害をもった人々とは無関係だったけれど私たちは幼い頃からずっと、障害をもった人たちを知り、いいにつけ悪いにつけ無関係ではありえなかった」という自閉児を兄にもった妹は「教育者になろう!」と決心され養護学校教師になりました。
 なるべく、あたりまえにそして根気よく関わって、お子さんたちと生活されるといいと思います。
 からだがよわくても
 ちえがおくれていても
 どんな子どもでも
 みんなおなじ人間
 うつくしい心をもった人間や
 そしてぼくのともだちや
『みんなみんなぼくのともだち』より(偕成社)。
 止揚学園で兄弟のように一緒に育った福井善人君の詩です。

『さっちゃんのまほうのて』先天性四肢障害児父母の会 田端精一・野辺明子・志沢小夜子、共同制作。
『わたしたちのトビアス』『わたしたちのトビアス大きくなる』トビアス兄弟著(いずれも偕成社)。
 家族や兄弟たちが、生き生きと子どもの様子を書いた絵本です。ほのぼのとしていて私たちをはげましてくれます。他にも沢山兄弟たちに読ませたい絵本が出されています。娘さんとゆっくり読まれるのもいいですね!

 相談員:辻 滋子(発達協会)保育士


Q9

 私は保育園で保育士をしています。保育園では統合教育をしていて、障害を持った子どもを受け入れています。園としては、家庭と連絡をとり合い、園全体でその子たちのハンディを克服するための努力をしています。子どもたちも少しずつ成長しています。
 今回ご相談したいのは、私のクラスの4歳になる男の子のことです。
 彼は話もしますが、理解力が弱いように思いますし、友だち関係がうまく成り立ちません。身辺のことも大人の介助が必要です。
 このお子さんの状態を、母親は直視出来ないようです。そのうち追いつくのではないか、と思っているように思います。
 このような親御さんに対して、どう接したら良いか、悩んでいます。お子さんの様子をありのまま伝えた方がいいのか、親御さんを励まし、私の意見や提案を聞いてもらうにはどうしたらいいのかいろいろ考え込んでいます。
 このような親御さんと接する際に注意することを含め、親御さんへの具体的な接し方を教えてください。

A9

 体に障害がある、視力・聴力などに問題がある場合、親は苦しみながらも、早い時期から子どもの問題を受け止めて、必要な手立てを考え、トレーニングを始め、子どもがハンディを克服して生活しやすくするための努力をしていきます。
けれど、あなたの担当のお子さんのように、そこそこ体も動き、ことばがあって、問題が見えにくい子の場合、親は子どもの問題を受け入れにくいものです。「目が覚めたら、他の子と同じように行動したり、おしゃべりしている」と期待して、子どもの遅れや問題を否定し、我が子の現実の姿を見られず悩んでいます。
子を思う親の心情を思えば、問題や遅れを指摘しづらいものです。けれども、早い時期に問題を把握して適切な扱いをしていかなければ、将来困るのは子どもです。

1.親との信頼関係を築くために
 子どもができないことがあるのは、様々な理由があると思います。発達につまづきがあるため、親は懸命に関わってきたのですが、思うように成長できず、内心とても困っているのです。こうした親に熱心さのあまり急ぎ過ぎて、意見や提案を焦ると親を落ち込ませてしまい、協力関係が結べなくなります。
 私の経験になりますが、「うちの子は少しのんびりしているだけです」と防衛的だった母親が、2ヶ月程で打ち解けて、子どもの問題をきちんと話せるようになったのは、保育園でできなかったことが少しずつでき、子どもが生き生きと登園しているからでした。
 親は子どもの少しの成長でも嬉しく、生きがいを持ちます。小さな変化が親の心を開き、子どもの成長の糸口が見えてくると親も打ち解けて、家でのことなど話してくれます。
 親の性格やそれまでの生き方や考えかたも影響しますので、なかなかわかってもらうまでは苦労しますが、多くの親たちが、「はっきり子どもの問題を指摘されると辛いけれど、あいまいにされて大切な時期になにもしなかった月日は子どもに悪かったと思います」と言うのを聞くと、親にはきちんと認識してもらった方がいいと思います。
 まず、子どもの園での様子を参観してもらって、子どもとの関わり、身の回りの始末、遊びなど具体的にどう関わっていくのか知らせ、家庭と保育園で同じに対応していけるようにしたいですね。
 身辺のことも、マイペースなことも、家庭での丁寧な働きかけでかなり改善します。親との信頼関係は保育士が子どもと真剣に関わっていると必ず築けます。

2.子育ては、周りと比較せず、その子自身の成長を考えていく
 あなたのご質問の中にも母親が「そのうち追いつくのではないか」と思っているらしいとありますが、親たちは比較したり、追いつけ追いこせの現在の教育環境の中で「もみくちゃ」になっています。
今の社会の風潮が、知的に高いこと、力のある人が評価を得て、遅れやハンディがあることがマイナスの評価をされがちなのですから、そうした中で育った親たちは「知的に少し遅れがある」など考えただけでも辛く、落ち込んでしまいます。
 そうした親たちと向き合う時、私たち自身も考えをしっかりもっていなければなりません。障害や遅れがあっても同じ人、様々な可能性を持っている子どもたちなのです。子どもが困っていること、身につけなければならないことを取りこぼすことなく、丁寧に見つけて、練習やリハビリをして、子どもが少しでも生活しやすくしていくことが大切です。
 障害があってもなくても、子ども自身のそれぞれの育ちを信じ、今ある問題を指摘して、その子の「今日より明日が良ければ良い」と育てていけるよう、親と小さな発達を喜び、共有できる関係を結べるといいですね!
 
 同年齢の子どもと比べ、できないことを調べて参考にするのはいいのですが、時間をかけ練習を積み重ねていけば、日常生活に必要なことや社会性は学んでいけます。根気よく、親と確かな考えを持って、子どもを育てていきましょう。
 こどもはそれぞれ良いものを持っています。それを引き出し、充実した生活ができるよう育って欲しいと思います。
 まず、保育士が確かな考えを持っていれば親は心を開き真剣に子育てをしていかれます。その子のことを本気で心配して、なんとか親と協力していきたいと考えておられるあなたです。必ずわかってもらえることでしょう。
 幼児期は、人の「始めの一歩」の時期です。その時期の確かな関わりが、その後の成長になっていきます。子どもにとって必要なことは当たり前に身につけていくこと。クラスの子と共々に当たり前なことをきちんとやれる子に育てていかれますように!

相談員:辻 滋子(発達協会)保育士


Q8

 11月で3歳をむかえるA君が、私ども療育機関へ通ってくるようになってから、約2ヶ月がたちました。お母さんは、彼の「言葉のおくれ」、「やれる力があるのに、興味がないことだと嫌がってやらない」、「子ども同士で遊べない」、などの悩みを持って来所されました。

 現在は、人とのやり取りの基礎となる「聞くかまえ」を育てることを目標に、号令に合わせて自分の身体を目的的に動かす「運動」、協応動作、手指機能の訓練もあわせてねらいとした「生活習慣」、などを主にしたプログラムを行なっています。
 A君は徐々にですが成長し、大人とのやりとりを楽しむことも増えてきました。歌に合わせた手遊びや、号令をよくきいて動くこと、見て真似することなど少しずつ上手になっています。
 以前は、「働きかけるに応じる」ことを、泣いて嫌がったり、すわりこんで動かなくなることもありましたが、現在はそうした行動もぐんと少なくなっています。
 
 お母さんも、家でまだ見え隠れする、「大きな声で泣き騒ぐ」、「嫌がって動かない」などの行動を許さない態度で健闘していますが、なかなか大変なようです。
毎日の買い物に連れていかざるを得ないのですが、必ずパン売場にとんで行ってしまい、買わないと大泣きをして騒ぐ、放って置くとパンを取って外にとび出す。そこで結局根負けして、買ってしまう、という繰り返しになってしまいます。
 大人が困ってしまうような場面で、思いを通してしまうこのような彼の行動に対して、どう対処していけば良いのか、具体的なアドバイスと、今後の指導のポイントなど、ご意見をおきかせください。

A8

 まず、パン売場でのA君の"思いを通そうとするあの手この手"の行動についてですが、最初お母さんは「買わないよ」という意志表示をするのでしょうね。そこでA君は、待ってましたとばかりにひっくり返って大泣き、それでも思いが通らないとみると、パンを取って外にとび出す、という実力行使。そしてついにA君の思いは達成、ということなのでしょう。

 お母さんも、なんとかしなければと一生懸命で、A君がひっくり返って大泣きしても、妥協しないで(以前はそうされたら大変、とA君の要求通りに応じていたのでしょうから)がんばっておられますが、今まで思い通りに要求が通ってきたA君は、なかなかその居心地のいい手段を捨てようとはしません。ひっくり返って大泣きしても駄目なら次の手、とアタマを使って、"目標達成"のための手段を講じています。
 今が"勝負どき"ですね。ここでお母さんが、「やっぱり駄目だ」とあきらめてしまったら、A君は何を学ぶでしょう。欲しいと思うものを手に入れるためにも、嫌なこと、やりたくないことから逃げるためにも、すべてこの手を使ってすませてしまうでしょう。
 人が自分に向かって言っている言葉に、注意を向ける必要もないし、人に自分の思いを伝える必要もない。そういうことが必要な世界は拒否してしまう、ということになっていくでしょう。
 先生の所では、泣き叫ぶことも座りこんで動かない、という手段も通用しない、と納得したところから、A君の目も耳も、外の世界にむかって動きはじめたのです。
 先生とA君の関係は、最初からその方向を目指して始まっていますから、彼の"納得"も早かったわけですが、お母さんと彼の関係は、「ボクの思い通りになる」という関係を、せっせと2年近く学ばせた後での切りかえですから、そう簡単にはいかないわけです。それをまずお母さんは、頭に入れておく必要がありますね。
 それと、こうした要求手段を、彼のためにどうしてもやめさせたい、という固い決意が必要だと思います。
 A君は、療育の先生とのやりとりの中では、この手段が通用しないということを、わずか2ヶ月で学んでいるのです。しっかりと、「わかる力」を持っている子です。
 こういう手段の有効性(?)を6年も7年も学んでしまった子の改善は至難の業ですが、A君はまだ、たったの2年、変えていく時間も短くてすみます。
 前段が長くなりましたが、具体的な手だての前に、"何故そうするのか"の意識が大事だと思うので書きました。
 さて、具体的にはどうするのかということですが、
 @お使いに出掛ける前に、「今日はパンは買いません」と、彼にむかい合って、しっかりと言いきかせる。
 Aパン売り場に駆け込もうとする彼の手を、すかさずつかんで、「今日はパンを買わない!」と、きっぱり言う。
 Bそこで彼が、ギャーと泣き出したら、小脇に抱えてでも(まだチビさんなのですから、できますよね)、通り過ぎる。
 C他の買い物ができなくても、その日は、ありあわせの品ですます。
 D家に帰っても泣き叫んでいたら、ご気嫌をとったり、叱ったりしないで、心ゆくまで泣かしておく。
 E泣きやんだところで、「Aちゃんはいい子だねえ」と、抱っこしてあげたり、相手をしてあげる。

といったやり方を、根気よく繰り返すと、やがて彼はパンやさんの前も泣かずに通るようになるでしょう。泣いている子を抱えて歩くと、行きかう人々の注目をあびるでしょが、まだ小さいA君ですから、まわりの目も寛大なはずです。
 「もう大丈夫」となったら、時には「今日はパンを買うよ。Aちゃんは、どんなパンがいいかな?パンやさんで見てみようね」などという日もつくりましょう。
 「お母さんは今日、パンを『買う』って言ってるのか、『買わない』って言ってるのか」と、彼の耳はお母さんの言葉に集中するようになります。お母さんの表情とか身体全体の動きとかに、彼の目は動くようになります。彼の心が自分をとりまく状況や、人に向かいはじめます。
 「パンやさん」は、ひとつのきっかけです。人とのやりとりの世界へ踏み出す、突破口です。子どもは大きくなるにつれ、少しずつ、複雑な人とのやりとりの世界へ出ていきます。そのための力を子どもは学び、育てなければならないし、親にはそれを学ばせる責任があります。
 「社会」で生きるために、何が必要なのかを、まず大人の側がじっくり見つめ、それを根気よく働きかけていきましょう。


Q7

 私は保育園で保育士をしています。保育園では統合教育をしていて、障害を持った子どもを受け入れています。園としては、家庭と連絡をとり合い、園全体でその子たちのハンディを克服するための努力をしています。子どもたちも少しずつ成長しています。
 今回ご相談したいのは、私のクラスの4歳になる男の子のことです。
 彼は話もしますが、理解力が弱いように思いますし、友だち関係がうまく成り立ちません。身辺のことも大人の介助が必要です。
 このお子さんの状態を、母親は直視出来ないようです。そのうち追いつくのではないか、と思っているように思います。
 このような親御さんに対して、どう接したら良いか、悩んでいます。お子さんの様子をありのまま伝えた方がいいのか、親御さんを励まし、私の意見や提案を聞いてもらうにはどうしたらいいのかいろいろ考え込んでいます。
 このような親御さんと接する際に注意することを含め、親御さんへの具体的な接し方を教えてください。

A7

 体に障害がある、視力・聴力などに問題がある場合、親は苦しみながらも、早い時期から子どもの問題を受け止めて、必要な手立てを考え、トレーニングを始め、子どもがハンディを克服して生活しやすくするための努力をしていきます。
けれど、あなたの担当のお子さんのように、そこそこ体も動き、ことばがあって、問題が見えにくい子の場合、親は子どもの問題を受け入れにくいものです。「目が覚めたら、他の子と同じように行動したり、おしゃべりしている」と期待して、子どもの遅れや問題を否定し、我が子の現実の姿を見られず悩んでいます。
 子を思う親の心情を思えば、問題や遅れを指摘しづらいものです。けれども、早い時期に問題を把握して適切な扱いをしていかなければ、将来困るのは子どもです。

1.親との信頼関係を築くために
 子どもができないことがあるのは、様々な理由があると思います。発達につまづきがあるため、親は懸命に関わってきたのですが、思うように成長できず、内心とても困っているのです。こうした親に熱心さのあまり急ぎ過ぎて、意見や提案を焦ると親を落ち込ませてしまい、協力関係が結べなくなります。
 私の経験になりますが、「うちの子は少しのんびりしているだけです」と防衛的だった母親が、2ヶ月程で打ち解けて、子どもの問題をきちんと話せるようになったのは、保育園でできなかったことが少しずつでき、子どもが生き生きと登園しているからでした。
 親は子どもの少しの成長でも嬉しく、生きがいを持ちます。小さな変化が親の心を開き、子どもの成長の糸口が見えてくると親も打ち解けて、家でのことなど話してくれます。
 親の性格やそれまでの生き方や考えかたも影響しますので、なかなかわかってもらうまでは苦労しますが、多くの親たちが、「はっきり子どもの問題を指摘されると辛いけれど、あいまいにされて大切な時期になにもしなかった月日は子どもに悪かったと思います」と言うのを聞くと、親にはきちんと認識してもらった方がいいと思います。
 まず、子どもの園での様子を参観してもらって、子どもとの関わり、身の回りの始末、遊びなど具体的にどう関わっていくのか知らせ、家庭と保育園で同じに対応していけるようにしたいですね。
 身辺のことも、マイペースなことも、家庭での丁寧な働きかけでかなり改善します。親との信頼関係は保育士が子どもと真剣に関わっていると必ず築けます。

2.子育ては、周りと比較せず、その子自身の成長を考えていく
 あなたのご質問の中にも母親が「そのうち追いつくのではないか」と思っているらしいとありますが、親たちは比較したり、追いつけ追いこせの現在の教育環境の中で「もみくちゃ」になっています。
 今の社会の風潮が、知的に高いこと、力のある人が評価を得て、遅れやハンディがあることがマイナスの評価をされがちなのですから、そうした中で育った親たちは「知的に少し遅れがある」など考えただけでも辛く、落ち込んでしまいます。
 そうした親たちと向き合う時、私たち自身も考えをしっかりもっていなければなりません。障害や遅れがあっても同じ人、様々な可能性を持っている子どもたちなのです。子どもが困っていること、身につけなければならないことを取りこぼすことなく、丁寧に見つけて、練習やリハビリをして、子どもが少しでも生活しやすくしていくことが大切です。
 障害があってもなくても、子ども自身のそれぞれの育ちを信じ、今ある問題を指摘して、その子の「今日より明日が良ければ良い」と育てていけるよう、親と小さな発達を喜び、共有できる関係を結べるといいですね!
 
 同年齢の子どもと比べ、できないことを調べて参考にするのはいいのですが、時間をかけ練習を積み重ねていけば、日常生活に必要なことや社会性は学んでいけます。根気よく、親と確かな考えを持って、子どもを育てていきましょう。
 こどもはそれぞれ良いものを持っています。それを引き出し、充実した生活ができるよう育って欲しいと思います。
 まず、保育士が確かな考えを持っていれば親は心を開き真剣に子育てをしていかれます。その子のことを本気で心配して、なんとか親と協力していきたいと考えておられるあなたです。必ずわかってもらえることでしょう。
 幼児期は、人の「始めの一歩」の時期です。その時期の確かな関わりが、その後の成長になっていきます。子どもにとって必要なことは当たり前に身につけていくこと。クラスの子と共々に当たり前なことをきちんとやれる子に育てていかれますように!

相談員:辻 滋子(発達協会)保育士


Q6

私の息子は4歳になりました。3歳の時、言葉が遅いので診ていただいたら「軽度の自閉的傾向」とわかりました。
 小さい頃は普通だと思っていたのですが、人見知りはなく、指差しがないこと、言葉の遅れと目を合わせないことがありました。同い年くらいの子どもたちとあそばせても、一人だけ小石を穴の中に入れたり、放っておけばずーっと同じことばかりしていました。

 2歳前後から、近所のスーパーに行く道がちがうと泣きわめいてひっくり返り、地面に頭をわざとぶつけたりし、とにかくいつもと少しでも場所や環境が違うとパニックを起こしていました。

 3歳の時、保育所に入所しましたが、入園式から各行事にいたるまで、とにかく私の息子だけ泣き叫んでひっくり返っていました。どうしてよいかわからず、叱ったりなだめたりしましたが、ますますひどくなり困ってしまいました。保母さんと話し合い、何か手に持たせておくと少しは安定することがわかりました。しかし、あいかわらず病院や行事の時やスキー場などではいつまでも泣き叫び、出かけるのが嫌になるくらいです。でも、これを少しでも軽減させるにはいろいろな経験をさせるしかないと思い、なるべく出かけるようにしています。

 昨年より療育指導を受け始め、この頃はこちらの言っていることも少しずつ理解できるようになり、ひっくり返ったり頭をぶつけたりすることはなくなってきました。言葉も二語文が出てきました。ただ大声で泣き叫ぶことだけはなかなかなくならず、個別に対応すればできることでも集団の中では泣いて嫌がりやろうとしません。時間をかけて慣らしていけば、徐々になくなり時間は短くなってはきますが、泣きながら覚えていくしかないのでしょうか。他にもよい方法があれば、アドバイスいただきたいと思います。

A6

この子達とは長い間付き合ってきましたが、似たようなことで悩んでいる人のいかに多いことかと思います。道・場所・順序にこだわる、変更を受け入れられないなどの問題を抱えている子ども達。
 休日も「仕事に行って」と両親を追い出そうとする子。昼間、仕事の途中で家に立ち寄った父親を泣いて押し出そうとする子。
いつもと違うことが起きて大騒ぎになることもあります。突然の避難訓練にパニックになり、園舎から連れ出されまいと床に寝転んで大泣きした子。
あるお母さんからは「朝からワアワア泣くのでどうしたのか考えてみたら、いつもこの子が消していた階段の電灯を、今朝、お姉ちゃんが消したことが嫌だったのだとわかりました。それで、一度電灯をつけてやり、本人に消させたら、ケロッとしているんです。さっきの騒ぎはいったいなんだったの?と思ってしまいます。」という話を聞きました。そのほかにも、トイレの水の音、「ドアの閉まる音」「テレビ番組のテーマソング」が嫌で耳をふさいで逃げ出すなど、いろいろな子ども達。

 しかし、無人島や山奥で暮らすわけにはいきませんし、嫌なことがない生活などありえませんから、苦手なことにも適応できるようにしていかなければならないわけです。
 あなたのお子さんのこだわりや、抵抗が現われ始めたのは、周りが見えるようになり物事の関係や成り立ちがわかりだしたからですね。お子さんの抵抗がわずかずつでも減って、なく時間も短くなっているのは、お父さんやお母さんが泣いても嫌がっても外へ連れ出し、様々な経験をさせる、といった努力をされてきたおかげでしょう。

 気持ちを落ち着かせるために物を持たせるのも一つの方法ですが、いろいろな場面や行動を経験しながら、やってみたらそれほど怖くもなく、嫌でもなかったとわからせるほうがその後の生活を考えるとよいように思います。
 大泣きは、一緒にいる家族にとってとても耐えがたく辛いことで、逃げ出したくなるのはもっともですが、逃げていては未知のことや初めてのことへの不安は増すだけ。泣きや抵抗は覚悟の上で、徹底して立ち向かうと子どもも少しずつですが変わっていきます。叱ってみても混乱を大きくするだけ。とにかく経験させ、続ける。やってみて体験してわかり、学んで抵抗が徐々に弱められていくのだと思います。
 小児科医が子どもに注射をする時は「痛くないよ」とごまかさないで「痛いけどガマンしよう」と励ますとのこと。嘘は不信感を抱かせます。「嫌だけれどがんばってみよう」と励ましながら挑戦させることはどの子どもにも必要ではないでしょうか。

 地下鉄の大嫌いなBくん、おばあさんの病気見舞いに地下鉄に乗らなければなりません。「また泣くんだろう、いやだなあ、どうしよう」と迷いながら駅につくと案の定、Bくんはビエーッと声を張り上げます。「あー泣いちゃった、どうしよう?」子どもは大人の心のうちを察知して、静まるどころかもっと騒ぎが大きくなり泣きも長引いてしまいます。
 「やってみたけれど、やっぱり駄目だった、この子には無理かもしれない」と迷いあきらめる。子どもは泣いて騒げば何とかなる、この手が一番、とばかりに思い通りにあるまで一層がんばることになります。ここで私達は泣きに逃げこませないで、やるべきことを最後までやり遂げさせてしまいましょう。「やれた」「がんばれた」「こわくなかった」「大丈夫だった」という経験から自信が生まれます。

 子どもの力を信じきること、どうせ駄目だと思われていては子どもも自信が持てませんからね。
 こだわりやパニックに限らず、日常の生活の中でも「泣かない・がまん」の力をつけることはできます。なかなかはめられないボタンに「キレタ!」Sちゃん、シャツを放り投げたけれど、「もう一回やろうね」と先生に連れ戻されてギャアギャア泣きながら再度挑戦。(半分手伝ってもらって)最後の一つがはめられたころにはにっこりいい顔になっていました。順番を守る、家族がそろうまで食事を待つ、泣きたいけれど、ひっくり返りたいけどやらないなど、ガマンしたり周りに自分を合わせたりするチャンスはいろいろあるでしょう。
あらかじめその日の予定や変更することを本人に伝えておいてあげると、気持ちを切り替え、思い込みと違うことも受け入れやすくなります。

 これからも様々なことに出会い、たくさんの経験を通して未知の世界を受け入れられる力を育てていってください。

相談員:神田 武子(発達協会)保育士

  
Q5
 うちの子は、現在保育園の年中に通っています。3歳児健診の時に、まだ言葉が出なく泣いているだけで、医師の働きかけに何も応じませんでしたので「自閉傾向の発達遅滞」と診断されました。「今に何とかなるのでは」という、かすかな期待も打ち砕かれて、大変に落ち込んでしまいました。

 その時医師から、「子どもの言いなりに面倒を見ているだけではなく、いろいろと働きかけてやらないといけませんよ」とアドバイスを受け、保育園の入園もすすめられました。
 今は保育園にも受け入れていただき、私も前向きに考えて、できないことは教えていこう、と実行しています。

 しかし教え方が難しく、私が一生懸命やらせようとしても、手元を見ようともしません。何度も言うと最近は何とか始めるようになったのですが、目を離すとボーっとそのままでいたり、スーッとはなれていってしまいます。やる気のない様子に、こちらの教えようとする気持ちも、続かなくなってしまいます。反面、自分の興味のあることはよく見ていて、冷凍庫から勝手にアイスを出してきて食べていたり、玄関の鍵を開けて出ていこうとしたりします。その時に叱っても、平然としていて、叱られたことがわからない様子です。教えても無理なのか、それとも教え方が悪いのか、と思い悩む毎日です。教え方のコツというようなことがあるのでしょうか。ぜひ、アドバイスをお願いします。(家族)

A5
 お便りから受ける印象では、お子さんはエネルギーが少し弱いかなと思えますけれど、どうでしょう。不快だと思うような事をされない限り、静かでお母さんをギョッとさせるようないたずらも、周りの人に対して、身のすくむような思いをさせたこともなくすごして来られたのではないかと思います。赤ちゃんのように世話をして、育てていける年齢でもありましたしね。

 保育園でも保育の流れをストップさせてしまうような「困る行動」はなくて、少々、存在感はうすいのではないでしょうか。
こういうお子さんの「問題」は、ともすると見過ごされがちですが、実は「そこが重大な問題」と受けとめていく必要があるのだと思います。

今、お母さんが何を教えているのかわかりませんが、まず、「体を十分に動かさせる」事が必要だろうと思います。そのひとつとして、「歩くこと」。毎日30分は歩くことをおすすめします。これも子どもが勝って気ままに歩いて、それにお母さんが従うのではなく、一定の速度で歩くお母さんの速度に合わせて歩かせます。
子どもは、歩きたくなくて、抱っこを要求したり、泣いたりするでしょうが、「〜まで歩いたら、抱っこしてあげるよ」と手近な目標を決めて、そこまで歩かせて、「えらかったねえ、はい、抱っこしてあげるよ」とほめて抱いてあげ、「10数える間よ」などと約束して、はっきりと「1、2、3・・・10」と数えられたらおろします。これを根気よくくり返すのです。
はじめは、お母さんの提示しているルールはわかりませんし、泣けば思いどおりになる経験も積んできていますから、泣いて座り込んだりして、自分の思いどおりにしようとするでしょう。でもそこでお母さんが妥協しないで「歩かせる」のです。はじめは、時間ばかりかかって、たいして歩けないかもしれません。しかし、毎日根気よくくり返しつづけていく中で、だんだんにお母さんの提示しているルールを理解するようになり、ほめられることを喜ぶ表情も出てきますし、「歩くこと」に慣れて「歩くこと」が気持ちよく好きになっていきます。
「歩くこと」は、子どもの表情を引きしめ、目を生き生きとさせて来ることを、私は数多く経験しています。

こうした働きかけの中で、子どもは「人からの働きかけを受け入れようとする構え」「周囲への関心を広げ、その刺激を取り込もうとする姿勢」を育てていきます。
外へ出て行けば、公園や、土手や、開放されている校庭などがあるでしょう。鉄棒のぶら下がりをさせたり、花壇のヘリを落ちないように歩かせたり、土手や階段の昇り降りをさせたり、体全体をいっぱいに使うことで活気も生まれてくるでしょう。
そのつもりで見まわせば、学ばせる場はたくさんありますね。まずお母さんが目標を決めて、それをクリアーさせていきましょう。子どもの表情をよく観察していて、真剣な表情になっていくのを目安にしてゆきましょう。お母さんもおうちの中で、一向にのってこないお子さんと向かい合って気持ちを落ち込ませているより、精神衛生上よいのではないかと思います。

身体を十分に動かせば、食欲も出てきて、エネルギーも充電されてくるでしょうし、食べることに意欲が出てくれば、その場を活用して偏食の改善(苦手なものをチョッピリ、それを食べたら好きなものが食べられる。お母さんからうんとほめられる)や食事のマナー(ごちそうさままで席をたたない、道具を使って食事をする、などいろいろありますね)をしっかりと教えていきましょう。
 こうした、お子さんとのやりとりの中で、お母さんの指示に応じてがんばる、という流れができてくると、おかあさんが教えたい、と思っていることにも応じてがんばるようになりますよ。

 また、勝手にアイスを食べたり、玄関の鍵をあけて出ていこうとしたりすることには、本気で叱ることです。「わからないくせに、こんなことばかりする」なんて思わないことです。「絶対にわかるようにさせよう」と決心して、その場で本気で向かい合いましょう。お子さんは必ずわかります。
 一貫した態度で根気よく取り組んで下さいね。

相談員:石井 葉(発達協会)保育士

  
Q4                         

私の息子は現在5歳、幼稚園に通っています。小さい頃から落ち着きがなく、相談に行った医療機関では、注意欠陥多動症候群(ADHD)の診断を受けました。知的な遅れはないようですが、言うことを聞かず、困っています。
 いたずらも多く、妹が大切にしているおもちゃを妹の目の前でこわしたり、おもちゃをばらまいたりします。
 幼稚園でもお友達をたたいたり、いやがられることを平気でします。そのためお友達関係もうまくいっていません。相手がいやがっていることがわからないのでしょうか。
 母親である私も幼稚園の先生も注意するのですが、注意されたことに対して泣き騒いだり、全然聞き入れようとしなかったりして、いたずらも減りません。 
 このような子に対して、どのように対応したら良いのでしょうか。
A4
先日ある保育園で「製作が好きでとてもよく集中している子が唐突に立ち上がり、保育室を飛び出して廊下を歩き廻り他の部屋をのぞきに行ったりして、またふいっと帰ってきて黙々と製作を続けている。この子は一体なにを考えているのか不思議に思う」「長い時間じっとして居られないし、友だちとのトラブルも多い」と保育士さんたちはその子の接し方について悩んでいました。
 以前からこの様なこどもは、保育園・幼稚園・学校などどこにでもいました。時には問題児と言われたりして、その接し方や指導法などが検討されてきました。最近になってようやくきちんと〔ADHD〕と診断名がつけられ、科学的にも解明され始めていますがその指導法については千差万別で、試行錯誤を重ねているのが現状です。
 一般の人たちからは、この子たちの行動は親の躾けが悪いからだと思われがちですが、じつは「本人の脳の働きがまだ未熟なために、些細なことにもすぐカ−ッとなりやすいし、多動であるのも特徴のひとつ」と言われています。行動も感情も適当に加減出来ないし切り替えが下手なので、極端になりやすくとことん終りまで行ってしまうことになるのですね。ひとが大切にしているおもちゃを壊す、ちょっとしたことでも相手かまわずたたく、ひっかく、噛みつく。まわりのひとがどう思おうと気にしない。気に入らないとむしゃくしゃして机を蹴ったりひっくり返すといった行動もひき起こします。
 してはいけないと注意されても全く無視してしたいことをし続けるか、又は泣いて大騒ぎして思いを通そうとする子。嫌なことやしたくないことは暴力を振るったり暴れたり大泣きで逃げる子ども達を、「わからないのだから」「病気だから仕方がない」と騒ぎを起こさないように受入れたくなりますが、駄目なことは駄目と終始一貫譲らないで、子どもに振り回されないようにしなければと思います。自分に都合がわるいと騒いでその場から逃げようとする子どもを、慌てて早く鎮めようとしないで、じっくりと腰を据えて向き合うことです。そして本人に、どうすることが良いのか具体的に判りやすく教えてあげる。まわりくどくしない、ことばだけに頼らないでストレ−トに行動そのものを伝えてあげるとよいでしょう。人に迷惑をかけることだけは理由がなんであれ決して譲らず許さないで!
 自己中心的で、一方的に話しかけてきたり要求を出すだけの子どもたちには、人の話をしっかり聞こうとする構えを育てていくことも必要です。相手から自分はなにを求められているのか知ろうとするように、こちらに注意を向けさせる工夫がいります。大声で怒鳴るのではなくいかに心に響かせるかです。
 この子たちと接していると悩みは次々と出てきますが、諸々の問題を自分だけでなんとかしようと思わないで、学校や学童クラブなど諸機関の先生方と一緒に相談し合って、解決の糸口を見つけていくといいですね。なるべく一貫した方針でいくほうが子どもも混乱しないで済むでしょう。
 では、毎日の生活のなかでは実際にどんなことが役立つかと言いますと、やはりいわゆる「五感を磨くこと」からでしょうか。彼らは部分的には大変敏感で鋭い感覚の持ち主ですが、それには偏りがあって万遍なくというわけではありません。様々な感覚にゆさぶりをかけることは、未熟な脳のはたらきを高めてくれます。それで五感を磨くのは効果があると言われるのですね。
 食事について考えてみると、味覚には甘味辛味酸味などの他に味わいのような微妙なものが含まれますし、舌ざわりや喉ごしと言った簡単には説明のできないものもあって「味」ひとつを考えても複雑な感覚から成り立っていることがわかりますね。したがって皮膚感覚、視聴感覚、固有感覚などといった「五感」は、体をいっぱい使い身の回りのことが自分で出来るようにしていくなかで、培われていくものと言えます。着せてもらい、車で移動する様な生活では、ボ−ッとした感覚の鈍いひとになってしまうでしょう。
 それでなくても昨今では生活全体が便利になり体をあまり使う必要がなくなりましたが、文明が進んだ分本来持っていた感覚や体の機能は偏ったり落ち込んでしまったように思います。
 身辺面の他にも例えば、遊びで感覚を育てることができます。全身をぶつけ合う、押し合い、競う、協力する。人に触るのも触られるのも大の苦手な子が、鬼ごっこや押しくらまんじゅうを通して過敏な皮膚感覚が和らげられた、かくれんぼでじっとすることを学んだ多動の男の子、友だちについていこうと必死で溝を跳び越えた子、体の微調整力も育てられるのですね。群れて揉まれ磨かれて周りが見えていくに従い、自分を抑える力も徐々に育ちます。毎日の生活の中では難しい問題が一杯でしょうね。短期決戦とはいきませんが強い意思と根気で接していけばきっと道が見えてくると思います。
 どうぞ、お元気で。

相談員:神田 武子(発達協会)保育士

  
Q3                               

■幼稚園に通う私の娘には、行動が遅かったり、理解が低かったりするところがあります。そのような特性をもつ娘に対して、今までは、「どうしてこんなこともできないの」と思うこともありました。でも、今は、彼女が自立するために、一番の理解者となって、精一杯手助けをしていきたいと考えています。しかし、具体的な場面での対応に戸惑うこともあります。
 そこで、対応に困っている点について、お伺いいたします。

 @幼稚園でパニックになり突然泣き叫ぶことがあります。そのような時、園でどのように対処して いただくと気持ちが落ち着けるのでしょうか。
 A時々変な声を出すことがあります。外出時には周囲の迷惑になったりこちらも嫌な思いをします。どうしたらやめさせられるのでしょうか。
 B道路を歩く時、必ず私と手をつないで歩きます。一人歩きや交通ルールをどのように教えたら良いでしょうか。
A3
■お嬢さんが「障害」と呼ばれるハンデを負っている事実を認め、受け容れる。そして、私達が特に苦労したとも思わずに歩いていく道を、その「障害」の故に、何倍もの努力をして歩いていかなければならないことを運命づけられたお嬢さんの厳しい道を、「障害」なんかに負けずに、元気に歩いていけるように助けていく。そういう日々の方が、後ろを振り返って答えの出ない「どうして?」の中で悩むより、ずっと"生き甲斐がもてる人生"なのだと思います。   
 でも、そうは言っても、毎日のお嬢さんへの働きかけは根気のいる仕事です。すぐに結果が見えるというわけではありませんから、落ち込んでしまうことだってあるだろうと思います。
 どうぞ、そういう時には、お嬢さんのこれからの長い人生を考えてください。そして、その長い人生を生きる基礎づくりが「今」なんだということを考えてください。

 さて、ご質問に関して、お答えしていきたいと思います。お嬢さんにお会いしていないので、ひょっとしたら見当はずれになるかなという不安はあるのですが。

 @パニックについてですが、お家ではそういうことはないのですか。(お子さんの好きなようにさせていて、嫌がるようなことは避けるように接していると、パニックは起こさないかもしれませんね。)
 幼稚園でのパニックにも、お子さんなりには理由があったのでしょうが(周りの人にその理由が分からないだけで)、たとえどんな理由があったにせよ、「パニック」という形で表現するのは、"困った行動"になります。
 十分に自分の気持ちや状況を説明する手段を持っていない幼児はパニックを起こしやすいものですが、それで思い通りにならない経験や、そういう行動は許されないのだという経験を重ねることで、子ども達は、他のコミュニケーションの手段を学んでいくのだと思います。
 障害があるなしにかかわらず、それが原則なのでしょう。パニックへの対処が、それを助長するかどうかの分かれ目になりますね。
 まわりが、そのパニックに振りまわされてオロオロして、子どもさんの機嫌をとるようなことをしたり、パニックを起こしそうな場面を避けたりすることが、一番いけないことだと思います。
 パニックを起こしても無駄なんだ、と思わせてゆく対処を工夫していくことですね。
 静まるまで無視をする、静かになったところで「どうしたの?」などと抱いてあげるのはいいのですが、パニックの時に抱いてなだめたりしない方がいいのです。
 どんな状況でパニックになったのかが不明なので、不十分な答えになりますが、やらなければならないことをやるのがいやで、それから逃げるためにパニックになったのでしたら、静かになったところで、「やるべきこと」をさせていくことでしょう。手を添えてでも一緒にやらせて、「できたねえ」「がんばったねえ」と抱きしめてほめてあげるというようにして、「パニックに逃げない」、「がんばってほめられる嬉しさ」を経験させるというように接して頂けるといいですね。

 A変な声を出すことについても、基本的には同じことです。無意識に、その声を出す時の感覚を楽しんでいるのではないかと思いますが、「そんな声を出さない!」とか「おかしい!」と、その都度、お子さんがハッとするように注意して、その声を出していることを意識させ、自分から気をつけるように誘導していくことです。声を出すのを止めたら、すかさず「そう、声を出さないのね」と認めてあげることを忘れずに。

 B道路を歩く時、お母さんと手をつないでいると、お母さんのリモートコントロールの許、何も考えずに歩いていることになりますから、子どもさんは周りにアンテナを働かせる必要がなく、自分の頭を使わないことになりますね。一人で歩けば、周りに頭を働かせなければなりませんから、子どもさんの成長には大切な取り組みですね。まず、お子さんをお母さんの前にして歩かせましょう。いざという時、さっと後ろから介助ができるようにして歩かせましょう。買い物に行った時は、お嬢さんにも小さい物を持たせたりするのもいいですね。それを持ち続ける意識が大事なのですから。
 「ホラ、赤よ。止まって」とか「さあ青だ。歩いて」などと声かけと行動を一緒に教えて、繰り返しの中で信号なども覚えていくでしょう。

 言葉が足りない部分もあることと思いますが、何かヒントになれば幸いです。
 どうぞお元気で、お嬢さんとの"今"の日々をできるだけ前向きに考えながら大事にお過ごしください。


 
Q2
                   

■5才になる息子のことで、ペンを取りました。
 2才半過ぎまで順調に育っていたのですが、2才10ヶ月頃から言葉が次第に減ってしまいました。
今では、何も話せない状態です。ただ、何やら声を出して独り言は言っています。何か要求を出すときは私どもの手を引っぱったり、指さしをします。言葉が減ってきたと同時に、生活面にも色々問題が出てきました。落ち着きがなくなり、排泄もだめになり、食べ物も偏食がひどくなりました。最近食べ物は、どうにか食べる種類が増えてきました。医師の診断では、脳波の異常はみられないし、1才半前後までは言葉が出ていたので、自閉症ではないかということでした。

 今、投薬を受けています。これは、落ち着きがないので、落ち着かせるための薬ということです。昨年の3月より当市の母子通園施設に通っていますが、大きな変化は見られません。

わったことは・・・
○はげしかった高あがりが、じょじょに落ち着いて、あまりしなくなった。
○外へ出て歩く時、以前は我先に駆け出していたのが、今はおとなしく手をつないで歩くようになった。
○ひとつのものに集中する時間が長くなった。
○表情に明るさが見えて以前より生き生きと見える。
困っていることは・・・
○トイレを嫌がって困る。
○2才半ぐらいまでは何でも食べたが、それ以後はどんなに形を変えても、においをかいで食べない。
○遊んであげると喜びの表情をするものの、喜んでもう一度してほしいということがない。
 
 通園施設の先生方の話では、今の状態では、交流保育は無理ということでしたが、私どもと主治医の強い希望で10月より、保育所にいって交流させてみようということに成りました。
 どれだけどのような変化があるかわかりませんが、できるだけのことはしてやりたいと思っています。 このような障害を持った子に、何をどう対処すればよいのか、ご指導下さい。

A2

■ 私たちが関わっている自閉的な子どもの中にも2〜3才までは、順調な育ちだったのが、退行していった子もいます。子どもたちの発達を、親たちと願いながら、様々な努力をかさねながら、日々を過ごしていますので、その中での経験が、何かのお役にたてればと、お返事を差し上げます。

 「焦らないで」と言うほうが無理なことを承知で言うのですが、まず、今は落ち着いて、子どもの様子を的確に把握して、育児のおおまかな目標をたてていかれることだと思います。
 そして、自閉的な子どもの、障害や問題を正しく認識されて育てることです。
 以前できていたことができなくなったり、言葉が出なくなったりすると、環境や接し方が悪かったのではないかと思い、対応が甘くなり、子どもへの接し方があいまいになりがちです。
 また、自分を責めて自信を失ってしまいやすく、的確な育児ができにくくなる親もいます。
 あなたも、今、一番つらい時期でしょう。
 でも、気持ちをしっかり持って、正しく子どもの障害を見つめて、確かな育てをしていかれることだと思います。

 自閉症は、脳の働きが何らかの原因で障害を起こし、うまくまわりのことを認知できなかったり、働きかけに応じて物事をこなしにくく、体も心もコントロールがうまくいかず、子どもにとってはつらい発達障害です。
 なるべく早期に方針をたてて、確かな子育てをされることが大切です。

 *生活リズムをつくる
 *やるべきことを根気よく働きかけてやり通し、様々な経験をさせていく
 *体をしっかり動かすことと、体の緊張を抜くトレーニングを丁寧に続ける。
 *手をしっかり使って、遊び、手伝い、身辺自立を丁寧にすすめていく

 あなたのお子さんも、一時期退行なさったようですが、通園施設に入って、少しずつ、成長の兆しが見え始めています。通園することで、生活にリズムがつきいろいろな経験ができ、体のコントロールもよくなっているようです。 

 保育園入所のことですが、主治医にも勧められ、お母さん自身も希望しているようですし、少しずつ、やりとりの力も見えはじめていますので、入園にむけて前向きに取り組まれるといいと思います。
 私も毎月、東京の区立の保育園を中心に巡回指導活動をしていますが、自閉症児たちが、集団の中でさまざまな経験をして、成長していく様子を見ています。
 自閉的な子は、人との関わりが持ちにくいので、より多くの人との関わりを経験させることは必要です。その中で子どもは、もまれながら、あたりまえな生活を学んでいきます。
 *生活リズムがつく
 *体をたくさん動かせる
 *子どもたちから様々な刺激がある
 *学ぶモデルが身近にある(身辺自立、遊び、動きなど)
 *集団生活の中で、子どもの状態を観察して、どう育てるか考えていく手がかりをつかみやすい

など、子どもにとって、プラスになります。
 入園に当たって、先生とよく話し合っておくことが大切です。 特別扱いせず、なるべく、クラスの子と同じ行動をとらせるようにしてもらうことです。家庭でも、集団の中で見られた問題に、根気よく取り組んで、丁寧に学ばせてあげる努力は今まで以上にされることです。

 今まで、たくさんの子どもたちを見てきましたが、子どもたちはつらいハンディを乗り越えて、成長しています。 「喜びを喜びとし、悲しみを悲しみ、愛することと働くこと」ができるようになって、社会参加している自閉症児たちもたくさんいます。
 みんな、あたりまえな生活を、根気よく続けて、今があると思います。
 あなたも、なるべくはやく気持ちを整理されて、お子さんと共に、まわりのひとの応援も頼みながら、子育てという「大事業」にとりかかっていかれますように! 頑張ってくださいね!

相談員:辻 滋子(発達協会)保育士

 
Q1
■保育園の2才児クラスの担任をしています。その中のある子が、最近3才児検診でひっかかり、軽度の発達障害児と医療機関で診断され、お母さんが落ちこんでしまっています。保母としてお母さんをどう励まし、そして、本人の園での生活をどのように過ごさせたらいいのでしょうか?
A1
■重度の子の場合は、もう明らかに年齢相応の子ども達とは差がついているから、親御さんも覚悟を決めて、開き直るのが早いんですけど、別に五体に問題がなく、行動や言葉に「あれ?」と思うことがあっても「おくての子もいるし…」と受け止める余地のあるお子さんの場合、親のショックも大きいようですね。

 このショックの原因としては様々あるでしょうが、大部分のお母さん達は自分達が障害を持った道を歩いてきたわけではないので、人間というのは放っておいても自然に人間としての道を発達して行くものだと思っているわけです。そして、子どもに対しては、自分が果たせなかったものや夢を託すわけです。で、そういう所へ「遅れがあります」と宣告を受けると、今まで描いていた夢が全部壊れてしまうことになりますね。
 また、遅れをはかるテストというのは、現状では、人間の複雑な能力の一部でしかない知的な部分の遅れしか計れないわけですが、その部分で人間を判断するような価値観が社会的にありますよね。お母さん達は、そういう中で育ってきているから、「遅れてます」と言われると、その子の全部を否定しちゃう。そういった種種の要因が絡み合っているのだろうと思います。

 でも、お子さんに障害があるっていうのが事実ならば、いつかどこかでやっぱり直面しなくちゃならないので、できるだけ早くそこに直面して、ショックは受けるけれども、それを一日も早く乗り越えてハンディキャップを背負った我が子をどう育てていくかを考えられた方が、子ども達のためには、幸せですよね。だから、ショックの中にいるお母さんにはつらいことですがその時期が早ければ早い方がいいと思うんです。結果として立ち直るのも早い時期から始まるわけですから。

―そうすると、今がいい機会ということでしょうか?

■そうですね。親がそのショックを受けたあとに、どの方向に歩み出すかが子どもにとっての岐路になるんだと思います。
 もうこの子はしょうがないんだ、とあきらめたり、ふびんな子だからといって丸抱えするか、それとも、遅れがあっても、この子にはこの子の人生があるんだから、精一杯持っている力を発揮して生きるようにしていくことが大事なんだ、とお母さんが考えられるかというところが、この別れ道のところでのフォローにかかっていると思うんです。

―慰めようと思っても、しらじらしい感じがするように思えるのですが。

■いわゆるその場をごまかすみたいな慰めの言葉をかけてもだめだと思うんです。だから、フォローしていく側もつらいと思うんですが、やっぱり現実をしっかりと見てもらうというのがひとつ、だと思います。
 ただ、現実を見てもらうといっても、見っ放しじゃだめで、いかに他の子と違っているか、どこが問題なのかを、直視することは大事ですけれど、それは働きかけによって改善されていくものだという可能性や希望を持った直視でないといけないと思います。だから、その辺に保育者の側の人間観がまず大事になるんです。

―保育者の側の人間観というのはどういう意味でしょうか?

■保育者自身が障害のあることを人間としてだめだ、という風な意識をもっていると、これからそういう子を抱えて生きていこうというお母さんをきちっとフォローできないと思います。
 「人間が人間としてすばらしい」っていうのは、知的な部分が優秀なことだけじゃない、という認識を、まず保育者が持たないと、お母さんを支えられないだろうと思うんです。
 だから、その子のよさを「123」がわからなくても、わかろうとしている、ズボンがはけなくても一生懸命がこうと努力している、そういうその子が素晴らしいんだ、とそう信じないとだめなんです。それで、それを態度とか言葉でお母さんに帰していくようにしていくことだと思います。

―何か具体的な例があれば教えて下さい。

■ショックの時期を通りすぎて、我が子に対してあきらめているお母さんが子どもを保育園に入れたんです。幼児集団が精神発達に障害のある子の発達には非常にいい環境だと、どこででも言われるから、せめてそれくらいと思って入れましょうと連れてったわけです。
  で、「いろんな問題を起こして面倒見られません」て言われるんじゃないかとか思いながら連れてったわけですが、その子の担任になる保母さんが、「まず、朝来たらカバンをフックにかけさせましょう」と言ったんだそうです。お母さんは、この先生は障害児なんか知らないからこんなことを言うけれど、どうせ一週間くらいやってできっこないから、「ああやっぱりできませんね」て言うだろうって心ン中で思ってるんです。でも、「いいえこの子はカバンもかけられません」なんて言ったら「鞄もかけられないような子は保育園に入られません」て言われると困るから、「よろしくお願いします」といって帰ったんだそうです。
 ところが、毎朝その先生が出てきて、一緒に手を添えて鞄をかけにいってると、ついに一週間したら自分から鞄をかけに行ったんだそうです。そうしたら、先生が「自分でかけられたわね。」って喜んでくれている。その先生に対して、「こんな風に我が子を受け止めてくれた人は今までいなかった」とお母さんが言うんです。それからお母さんはその先生に絶対の信頼をおくようになったんです。
 ひょっとすると、この先生は障害児なんて知らなかったのかも知れないけど、そういうことに関係なく、この子がわかる子なんだと信ずる気持ちがお母さんにも伝わったんだと思います。

相談員:石井 葉(発達協会)保育士