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■ 小学2年生の息子のご相談です。息子には広汎性発達障害があります。
 以前と比べると、話をしたいという意欲はあるようですが、会話がなかなかつながりません。すきなアニメの話にしても、いろいろなキャラクターの名前を羅列していて、つながりがわかりにくいのです。
 親だから内容を分析すれば理解できることもありますが、ほかの人はどんなふうに息子の話を聞いているのだろうと気になります。どのようにおしえていけばよいのでしょうか。アドバイスをお願いいたします。

■ ある子が3つのお話をしてくれました。
@「新幹線、プシュー」
A「いっぱい、いっぱい」
B「いやだ、いやだ、ダメ」
……さて、これはどういうお話でしょうか。いろいろな内容が頭に浮かび悩みます。
 ところが、これに「九州から家族旅行でディズニーランドに行きました」というヒントが加わると、がぜん具体的なイメージが湧いてきます。新幹線で東京に行った、ディズニーランドは人やアトラクションでいっぱいだった、長い時間列に並んだ、待てずに泣いた子がいて誰かから叱られた、などなど。イメージが豊かに広がります。


絵(映像)が話のもとになっている
 子どもは、映像的記憶、映像的思考をするとされます。どういうことかと言えば、頭の中の写真をもとに話すということです。絵日記は、おおむね小学校三年生くらいまでで、それから上の学年になると文章だけの日記になります。3年生くらいまでは具体的な絵(映像)がないと物事を思い出しにくく、また相手にわかるような文章をつくれないのでしょう。

 『新幹線に乗って東京に行きました。そして幕張のホテルに泊まりました。とても大きくきれいなホテルでした。次の朝、ディズニーランドに行きました。たくさんの人がいて、二時間並んで見たアトラクションもありました。並んでいる時、前の子どもがあきて「いやだ」と泣きました。それで親から叱られました。』
 お読みになればわかるとおり、子どもがどういう体験をしたかがよくわかります。これは時間の経過に沿って、因果関係なども含め大人にわかりやすい説明になっているからです。ただわかりやすいものの、冒頭に上げた三つの文章ほどには心に響きません。冒頭の文を、背景情報を知って再度読むと、子どもがその場その場で感じたことが臨場感いっぱいで伝わってきます。


話を映像として読み解く
 ある子に「日曜日にどこに行きましたか?」と質問しました。その子は「遊園地」と答えました。「遊園地は面白かった?」とたずねると、「くらーいの、ビュービューのってゴトンゴトン。大きい大きい、真っ黒だったよ、こわいこわい」と笑いながら答えてくれました。横で聞いているお母さんも笑っていました。ただ、これではまったく何の話かわかりません。お母さんによると、これは「幽霊屋敷」の話で、その中をミニ電車にまたがって進んだそうです。その屋敷の出口には、大きな怪獣がいてお母さんもびっくりしたそうです。なお、お母さんは、子どもがいろいろなことを感じ、またこんなに覚えていたのには驚いたと話されました。
 子どもの語り口を再度分析すると、自分で見たこと、感じたことを素直に表現していることがわかります。内容には「驚き度レベル」があり、驚きが大きいものは優先的に、また相応に表現されているようです。
 子どもの話はたしかに理解しにくいことが多いのですが、頭の中の写真をもとに話していると考えると、聞くほうの想像力も働き理解しやすくなります。映像を共有できれば、共感も生まれて話がはずみます。


順序だてて話すよう伝える
 ご質問に、「親だから内容を分析すれば理解できる」とあります。それは背景情報を持っているから、推測が可能なのだと思います。情報がない人には話の内容は伝わりにくいといえます。少しでも、相手にわかってもらえるような話し方になってほしいものです。
 さてここで、冒頭の文をもとに、わかりやすい話し方を考えてみます。たとえば、
○「新幹線にのったね、プシューていって閉まったね」
○「東京駅にいったね。いっぱい、いっぱい人がいたね。びっくりしたよね」
○「小さい子が、いやだ、いやだって泣いてたよね、待っててね、って、お母さんがお話したね」
 というように、時間の流れに沿って、話を整理してやることも必要でしょう。また、「びっくりしたね」という気持ちの表現の仕方も伝えたいものです。


助詞でパニック!?
 「棚にある黄色い紙袋の中から、赤い表紙の本をとって」というような指示を出すと、パニックを起こす自閉的な子や青年がいます。こういう指示でパニックを起こす理由のひとつは、指示の中のことばの数が多すぎて理解できないことが考えられます。
 さらには助詞の問題があります。助詞は物と物との関係を示します。「に」「の」「〜から」がわからない場合は、基本単語は「棚、ある、黄色い、紙袋、中、赤い、表紙、本」となり、さまざまな解釈がありえます。
○「棚にある本の表紙を黄色に、紙袋を赤にしてください」
○「紙袋と本を棚においてください」
などが解釈の例です。

 写真は、一目瞭然の世界とも言えます。助詞を入れながら、関係をきちんと説明しないと、相手に理解してもらえない世界ではありません。助詞を教える必要はありますが、子どもたちが一目瞭然の世界で生きていることも押さえ、大人は子どもの理解に合わせた簡潔な話し方を心がけたほうがよいように思います。そういう配慮があれば、意味がわからないで混乱し、パニックになることを防げる可能性があります。
 助詞を教える時は、子どもの記憶できる単語の数を考慮して、教えていく必要があるでしょう。


湯汲英史(発達協会)言語聴覚士・精神保健福祉士


Q18

■ 小学校1年生の男の子です。幼児の頃は毎日会っている人にも挨拶ができなかったくらいなのですが、最近はまわりの人に興味が出てきて、知らない人にでも挨拶をしたり、状況に合わないことを話しかけたりしています。身体も小さいのでまだ許される部分があると思うのですが、大きくなったらどんなふうに見られるか心配です。どのように教えていったらよいでしょうか。

A18

■ ことばを使って人と積極的に関わろうとする力が伸びてきたこと、これはすばらしいことです。おそらくお子さんは、幼児期、ことばの獲得が遅く、ご両親が話しかけても上手く伝わらないなど、ことばの発達について心配されていた経緯があるのではないでしょうか。また、人への関わりが弱く、大人や友達と上手に遊ぶことが苦手なお子さんだったのではないかと想像します。
 やっと人に興味が広がり、楽しくおしゃべりできるようになったと思ったのに、新たな心配が生まれたというところでしょうか。
 一般に小さい子には、「知らない人には話しかけない。ついていかない」と教えると思います。
 保育園や学童クラブを訪問すると初めて会った子は「だれ?」と聞いてきます。小学生になると「何しに来たの?」と理由を尋ねてくる子が増えてきます。相手の様子をうかがってから遊びに誘ってくる感じです。これは怪しい人かどうか自分で見定める練習をしているようにも見えます。
 ところが、知的発達に遅れを持つ子どもたちは、ことばの使い方や状況の理解に弱さがあります。また、話しかけてよい人を判断する力や社会性の発達にも弱さがあります。

●ことばを使う時のルールを教える
 人に話しかける機会が増えてきたら、それだけ丁寧に、ことばを使う時のルールを教えていく必要も増えると考えてください。
 私のところに通ってきていた小学1年生のKくんは、誰にでも一方的に話しかける子でした。私に話しかけてきた時、「(誰と話しているのか)名前がわかる?」と尋ねても首を傾げるだけでした。毎回名前を教えましたが、それでも覚える気がありません。そこでお母さんと相談して、「声をかけるからには、相手の名前を言って、きちっと挨拶をすること」という約束をその子としました。
 次に話しかけてきた時、約束どおり「名前と挨拶」を言うように促しましたが、やはり思い出せません。約束でしたのでかわいそうでしたがすぐには教えず、さんざん困らせた後に名前を教えました。
 その時よほど困ったのでしょう、それ以来名前を忘れず、しっかり挨拶をしてくるようになりました。
 それから、お母さんは、誰に対しても「名前と挨拶」のルールを徹底させたそうです。次第にこの習慣が身につき始め、誉められて「しっかり挨拶ができた」という満足感があるためか、挨拶の後も一方的な話をすることが減ってきました。
 新しい先生が来た時には、名前がわからないので困ってしまって、話しかけられなくなる場面も見られるようになりました。
 そこで、お母さんは改めて「名前の尋ね方」を教えたそうです。大人を相手にしての挨拶ですから「名前教えて」ではなく、「お名前を教えてください」とするなど、相手にしっかり伝わる尋ね方を丁寧に教えていきました。
 おしゃべりができているように見えていても、会話のルールを意識し始めると、まだ正しくはわかっていないことが多いものです。
 これはひとつの例ですが、その子の能力に合わせて、小さな、具体的なルールを決めて、少しずつ身につけていく以外に方法はないと思います。

●ルールを守ることを教える
 誰にでも話しかけてしまう子は、ことばだけでなく行動もコントロールできていない場合があります。
 たとえば、「終わるまで席を立たない」という約束を守れない子は、しゃべらないでいられる時間も短いでしょう。
 「大切なものは、許可なしに使わない」というルールも教えましょう。話しかけてよい人の区別と同じように、勝手に触ってはいけないものの判断ができるようにするためでもあります。
 また、友達と交互に物を使うことや順番を守ることを学べる遊びをたくさん経験させてあげてください。
 大人がひとつずつルールを決め、身の回りのことから毅然とした態度で教えていくことが大切です。

●状況を考えるやりとりを増やす
 また、状況に対する理解の弱さがありますので、その場の状況を考えて行動することや、一方的に話しかけるだけではなく、質問に答える力を伸ばすことも大切です。
 「物を借りてくる」「人に伝える」などの練習もお勧めです。たとえば、おやつの袋が開けられなくて困った時、どうすればよいのかを考えさせ、「お父さんにはさみを借りてくる」とか、バースデーケーキをみんなで切り分けて食べる時は、「お母さん、ケーキを切ってください」としっかり考えさせて言わせるなどです。簡単な課題をゲーム感覚で設定して練習します。
 また、質問に答える練習では、質問の意味や答え方がわからないことが多いようです。その場合、答えられる簡単な質問のレパートリーを増やしましょう。たとえばおやつの場面で、「『りんご』と『バナナ』では、どっちが好き?」というように、選択肢を提示して答える方法だとわかりやすい子もいます。

 誰にでもしっかりとした挨拶ができることは、大きな長所となります。時間をかけて教え、その力を伸ばしてあげてください。

林 祐一(発達協会)言語聴覚士・社会福祉士

 


Q17

■娘のことで質問いたします。娘も小学校2年生になりました。今のところ、学校で勉強や運動に取り組んだり、お友達と一緒に遊んだりと楽しくやっています。
 最近、気になることがあります。国語の読解力が弱いようで、週1回必ず図書館で本や紙芝居を借りて読んで聞かせたり、その感想を聞いたりしながら補っております。しかし、国語の文章問題になると、ただ読むだけになってしまいます。情景を思い浮かべながら読み、頭で想像したことをもとにして問題を解くのがどうも難しいようです。
 本人にも、質問事項を読んだら文章をもう一度読み返すとか線を引いて印をつけておくといった工夫をするように、と指導してもなかなか変化があらわれません。
 読んで内容わかる? と尋ねると、わかるよと言うのです。でも、いざ問題を解くとなると、まったく頓珍漢な答えが出てきてしまいます。
 何かよい方法はないでしょうか。アドバイスをお願いします。

A17

■ たとえば
 ・かにが海辺を歩いていました。  
 ・棒が一本落ちていました。かにはその棒をいつものように拾いました。
 ・その棒を使って岩を叩きました。
 ・かには太鼓が大好きでした。
 ・海辺に魚たちが集まってきました。

 という文章があったとします。これらの文章は独立しているものの、ある情景が頭に浮かんできます。その情景をもとにして、
 ・「かには、海辺で棒を探している」
 ・「その棒で、岩を太鼓がわりにして叩くために歩いているな」
 ・「かにが楽しそうに上手に岩を叩いているから、魚も寄ってきたのだろう」

というように想像することができます。  
 この複数の文章がバラバラにしか理解されないと、
 ・かにと海辺
 ・棒が落ちている  
 ・かにが棒を拾った
 ・棒で岩を叩いた
 ・魚が海辺にやってきた

 という絵が、脈絡なく浮かぶだけという可能性があります。つながりが理解できないと、ストーリーが浮かばず、「かにが探していたのは何と何?」「どうして魚が集まってきたの?」といった質問に答えることはできないでしょう。なかには、「拾いません」「棒で叩いてはいけません」と答える子がいるかもしれません。断片的にことばをとらえ、一般的知識だけで善悪判断をしてしまいます。
 こういうことが、お子さんに起こっている可能性があります。以下に対応法をあげてみます。

・説明を加える
 文章で表現されていない部分を、補足説明します。たとえば、「かには、棒を探して海辺を歩いていました」「かには、棒で太鼓のように岩を叩きたかったのです」「かには音楽が大好きでした」「魚たちも音楽が大好きで、かにの太鼓を聞きにきました」という具合にです。

B絵を描いて説明する
 ある有名なお寺に行った時に、お寺のできた経緯が一巻の「縁起絵巻」に描かれているとの説明を受けました。縁起絵巻は、話だけではわからない人たちのためにつくられたとのことです。このように絵巻物風につくって見せる方法もあります。

C絵をストーリーに合わせて一枚ずつ書き、その順番を当てさせる
 紙芝居のように、筋に沿って一枚ずつ分割して描き、話の順番に並ばせます。

D重要な部分をマーカーで強調する
 文章で大切な部分をマーカーで強調します。たとえばこの文では、棒を拾った部分に線を引き、なぜ拾ったのかを話してもらいます。

Eタイトルをつけさせる
 タイトルには、しばしば要旨が示されています。物語を読んだあとに、タイトルをつけさせる、あるいは題名を意識して読むように伝えます。

 さて、文章のイメージが浮かばず理解しにくい場合について、いくつか対応法をあげました。
 また、文章のイメージが浮かばないという問題だけでなく、質問事項のことばがきちんと理解できていないこともあるかもしれません。その場合には、体験したことで、「だれと公園であそんだの?」「どうやって公園まで行ったの?」など「だれ」や「どこ」、「何を」「どのように」「どうして」などの疑問詞に正しく答えられるのか、確認することも必要だと思います。ただそれぞれの疑問詞によっても難易度がちがいます。「だれ」や「何」には答えられても、「どうして」「どのように」などはわかりにくい傾向にあります。
 …絵本の読み聞かせなど、これまでがんばってこられたようで、それでもわかりにくいのが実際のようです。  子どもには、固有の成長の時期があります。現段階では、お子さんにあった対応をしつつ、わかってくる時期を待つ気持ちも必要かと思います。

 

湯汲 英史 (言語聴覚士・社会福祉士) 早稲田大学第一文学部心理学専攻卒。
(社)発達協会王子クリニックにて相談にあたっている。

 


Q16

■小学校2年生の息子のことで相談いたします。息子は、広汎性発達障害で、普通学級に通っています。昨年より、療育センターの軽度発達障害児を対象とした少人数指導を受けています。
 本来、親は別室で待つのですが、不安から「一緒にいて」と言うので、同席することにしました。でも、私がいることで、できることもできなくなってしまったように思います。息子は「やりたい」と「不安」の両方の気持ちの間で揺れているようです。「お母さんは別室で待つよ。それでダメなら帰ろう」と話しました。息子は「がんばれる」と答えました。
 他のところでもまだまだ依存心が強く、母親の私が付き添わないと、泣いたりパニックになったりしやすいので、どうしたらよいか迷っています。あまり突き放しすぎてわが子を傷つけてはしまわないか、親としてどのように対応したらよいのか迷っています。アドバイスをお願いいたします。

A16

●子育ては子離れ・親離れ
■ 幼い頃から人との関わりがうまくいかない息子さんのことが気がかりで、今まで何かにつけて手助けや配慮をしながら育ててこられたことでしょう。貴女の丁寧な関わりの中で、基本的な生活の手立て(食事・排泄・着替えなど)はおおよそできるようになって成長されて、学校生活も過ごされているようですね。
 慣れない集団の中や知らない人とのやりとりは、自信がなく心細く、不安になってしまうのでしょう。そして、貴女自身もそうした息子さんを見ていて、揺れ動いてしまい、親子で自信をなくして戸惑っているご様子ですね。
 母親の胎内で大切にはぐくまれた赤ちゃんが誕生して、自分で呼吸をし、乳房に吸い付いて栄養を取り込み、動き始めます。まだ、頼りない赤ちゃんを前に親は丁寧に関わりますが、それは、子離れのための助走です。子どもたちは自分で自立に向けて行動し、乳幼児から学童へと脱皮し、やがて来る成人期のために自立の準備をしていきます。
 幼児期に何らかのハンディを告げられると「この子は障害があるから、親が手をかけてやらねば!」と必要以上にかばってしまい過保護になりがちで、子どもも親に依存してしまい、子離れ・親離れができにくいようです。
 今、息子さんは、親から離れて自分の力で生きていけるか、親に依存して生きていくのか岐路にさしかかっています。
 さまざまなハンディを持っていても、いずれ親の手元から巣立ち、人の中で生きていかなければならない人生が待っています。不安で辛いけれど「頑張れる」とけなげに答えている息子さんに貴女もきっぱりと「頑張っておいで!」と背中を押してあげるといいですね! 「あの子はしっかりやれる!」と貴女自身が心を決め、子離れしてあげると息子さんも強くなり自立していきます。
 子どもは親の鏡のようです。親の意識が子どもの自立に影響するのだと多くの親子の歩みを見ていると実感します。

●自立のための生活のすすめ
 やがて来る親離れのために、学童期の子どもたちは生活の中での自立の準備が必要です。人とのやりとりがうまくできず困っているこの子たちに生活力がつくと、自信もつき、社会性も育つものです。

@食事
 食べることやマナーだけでなく、自分でつくること、片付けることに取り組みます。全部は無理ですが献立の中の一種類はひとりでつくってみる。たとえばお米とぎをさせるのだったら、量ること、とぐ、電気釜にセットする、ご飯をよそうまで、完全にマスターさせ、手伝いから仕事への移行を心がけていくことが大切です。食事づくりは目標が判りやすく自信が育ちます。

A排泄
 家以外のお便所にひとりで行くなど、様々なところでもできるよう経験をしていきましょう。
 タオル交換、ペーパーの補充など、役割を持たせるようにします。家族のために力を出すことは自信になります。

B着替え
 着られればよいという段階から、準備や洗濯、衣服の出し入れなど、ひとりで生活する上で必要な手立てを丁寧に身につけるよう関わっていかれるとよいと思います。

C入浴・掃除・留守番など
 学童期に経験を通して力をつけて、ひとりでできるよう育て、親の力を借りずにできるまで根気よく練習していきます。

D社会性を育てる
 息子さんに必要な働きかけは、町の中での様々な経験です。
 スーパー以外のお店でもやりとりする経験もして自信をつけてあげたいですね。たとえば郵便局へ葉書や切手を買いにいく、花屋さんで好きな花を買う、チケットを買うなど、自分でやりとりして、お金を払って買い物をする。
 レストランで自分のものは自分で注文してみるなど、人を介して様々な取り組みをして、人との関わりに自信を持つよう働きかけていくと、不安が減少して、自信のある行動がとれるようになるものです。 

 ハンディがあるなしに関わらず、親が子どもの歩む前を掃いて清め、安全な道を歩かせたいと思いすぎると子どもはたくましく生きていけません。自分の力で生きられず、人頼みの生き方をして、寂しい人生を送ることになってしまいます。
 石ころもある「でこぼこ道」を自分で歩きながら、転んだり辛さもほどほど体験しながら、たくましい体と心を育てて、充実した青年期・成人期を迎える準備を学童期からしていきましょう。

相談員:辻 滋子(発達協会)保育士

 


Q15

 小学校2年生の息子(広汎性発達障害と中度の知的障害があります)のことで相談します。「靴を履いて」「お皿を持ってきて」など簡単な指示ならわかりますが、自分から伝えられることはまだ少ないです。  今困っているのは、独り言や歌が止まらないことです。お気に入りのCMなどその場の状況とは関係のない内容なので、止めさせたいと思っています。その都度「しずか」と伝えていますが、「しずか〜」とオウム返しするだけでなかなか止まりません。どうしたらよいでしょうか。

A15

■ 「やっとことばが出てきました」と喜んでいた親御さんが、しばらく経つと「独り言が多い」「ずっと歌を歌っている」などと相談されることがあります。お話を詳しく伺ってみると、「ことば」が出てきたことが嬉しくて、しばらくは自由にお話させていたとのこと。また、「しずか」と止めてしまって「もししゃべらなくなったらどうしよう」という不安もあったとおっしゃっていました。
 お子さんの場合も、独り言が止まらないとのこと。いくつか対応法をご紹介します。

●意識して黙る練習をする
 
独り言や歌を歌うのは、どんな場面の時に多いのでしょう。自由時間に好きな歌を歌っているのであれば、それほど問題ではないですね(声が大きすぎる時は注意が必要ですが)。問題になるのは、今やるべきことに集中しないで自分の世界に入っている時などではないでしょうか。集中していればしずかに取り組めることが多いはずです。
 課題中や着脱などの時にお話している場合は「やるべきことに集中していない」ので、「しずか」と軽く口を閉じさせてやるべきことを示します。「しずか〜」と言うお子さんのことばに反応しすぎて、「しずかでしょ!」と言い返してしまうと、やるべきことがかえっておろそかになり、何をすべきかわからなくなることがあります。口を閉じさせて、よそ見を止めて、やるべきことに集中させます。
 また、黙っていることがどういうことか教えるために、親御さんが10数える間、黙っている練習をしましょう。途中でしゃべってしまったらやり直しです。意識して止めることができたら、ほめてあげましょう。少しずつカウントをのばしたりタイマーにしたりします。タイマーを使うことで見通しの立たない状況でも意識して黙る練習になります。また、「課題中しゃべったらやり直し」とあらかじめ約束をして取り組むのもよい練習になります。
 また時には、「難しい、わからない」とお子さんが感じた時に独り言や歌が出てしまうこともあります。その時は、やり方を教えて成功させていくことも必要です。
 また、オウム返しをするお子さんの中には「何か言わなければならないけれど、どう答えればよいかわからない」と思っている子も多いようです。頭の中をことばが素通りしているので、聞いたことばを一度頭の中にためて考えてから答えるという練習をすることも大切です。
 たとえば、大人が「お名前は?」と聞いたら、オウム返しをしようとするお子さんの口にすかさず手を当てオウム返しをさせないようにして、ヒントになる名前の一番上の音を聞かせてあげます。わからない時は質問に対する正しい答え方を教えてあげます。繰り返し練習をし、少しずつヒントを減らして答えられるようにしていきます。

●身体の緊張をゆるめる
 しゃべり続けているお子さんのおなかに触れてみると、カチカチに力が入っていて、驚くことがあります。私たちは普通、状況に応じて力を入れたりゆるめたり調整しながら生活をしています。ところが力を入れたままでゆるめられないお子さんの中には声が出やすくなる子がいて、止めようと思っても止まりにくいことがあるようです。そういう子には、おなかをゆるめる「あぐらそり」という体操が有効です。
 まず、足の裏を合わせてあぐら座になり、そのまま仰向けに寝かせます。両手はバンザイの形で上にあげさせます。このまま1分から3分、寝ています(中学生以上は5分から10分くらいが目安です)。また、この形がとりにくい場合は、座布団を半分に折った上に腰をのせて仰向けに寝かせ身体を反らせるだけでもよいと思います。

●コミュニケーションとしてのことば
 「ことば」が出たからと言って、それだけでコミュニケーションできるというものではありません。人とやりとりをする手段・表現方法のひとつとして「ことば」を使う練習をすることが大切なのだと思います。
 お子さんは、自分の身近な生活での指示ならばわかるようになっているということなので、相手に合わせようとする姿勢ができつつあるのでしょう。身辺面のことやお手伝いなどを通して、さらにわかる物の名称、動きのことばを覚えていくことで、ことばの理解を広げていきます。
 たとえば、調理の時にお母さんが言った食材を出す、お皿などを用意する、ピーラーで野菜の皮をむくなど。この時に大事なことは勝手にやらず、お母さんの話を聞いてから動くことです。また、身辺面では朝の仕度、学校から帰ってきた時の片付けなど自分でできることを増やしていきましょう。
   このように、自分からは言えないけれど、言われればわかる、動くことができることばを「内言語」と呼んでいます。まずはこの「内言語」を増やしていくことが大切です。
 また、「お名前は?」「誰と来たの?」「いってきます・いってらっしゃい」「お帰りなさい・ただいま」などの簡単な日常会話も含めてことばでのやりとりを学ぶことも必要です。

 「ことば」に振り回されることなく、やるべきことは最後までやりとげさせることや、流暢ではなくても、自分の気持ちや要求を伝えたり、相手とのコミュニケーションとして利用したりできるようにしていくことが大切なのだと思います。お手伝いや生活のいろいろな場面を通して練習していってくださいね。

井上 智佳 (言語聴覚士・社会福祉士)


Q14

■ 小学校2年生になる娘のことで相談いたします。4歳の時に、AD/HDの疑いがあるとの診断を受けました。  最近、いろいろと気にするようになり、なぜ自分が我慢できないで怒ってしまうのか、どうしてお友達ができないのか、などと訴えるようになりました。また、忘れ物をよくするのですが、「どうして私ってこんなに忘れんぼうなんだろう。どうしたら忘れないようになるの? おしえて」と言うこともあります。お母さんも勉強して考えてあげるからね、とは言っていますが、障害について本人に伝えたほうが本人にとってよいのでしょうか。まだ幼いので、迷っています。アドバイスをお願いします。

A14

 AD/HDのお子さんは、一般的に小学校中学年位から徐々に行動が落ち着いてくると言われています。走り回ったり高い所に登ったりすることが減り、授業中なども席に座っていられるようになります。行動が落ち着いてくると、周りの状況が少しずつ見えてきて、先生やお友達など他の人からの評価が気になり始めます。ご相談の娘さんも、この時期に入ってきたのでしょう。
 「私はどうして○○ができないの?」と落ち込む娘さんを前にして、お母さんは心を痛めていることと思います。しかし、別の見方をすれば、できないことを思い悩むのは『自分の行動を振り返る力がついてきた』からこそなのです。おそらくこれまでも、集団生活に適応できるようにと様々なことを教えてきたと思いますが、今は娘さん自身が手助けを求めてきているのですから、教えたことを吸収していけるでしょう。今こそ教え時です。どうしたらうまくいくのか、ひとつひとつ丁寧に教え、できることを増やして自信をつけてあげましょう。

●身の回りのことを自分でできるように
 「先生の言うことを聞けない」「お友達としょっちゅうけんかになる」といった話をよく耳にします。先日も同様のご相談があり、お子さんの学校での様子を見にいきました。すると、授業が始まってもランドセルを片付けていない、体育の前に着替えが終わらない、食事の食べ方が汚いなど、身の回りのことが自分でできないことがわかりました。そのことを先生に注意されて反発したり、お友達にひやかされて叩いてしまったりと、身の回りのことができないことからトラブルに発展していたのです。お母さんには、まずは着替えや食事など基本的な身の回りのことを丁寧に教えていこう、とお話しました。
 娘さんも忘れ物が多いようですが、時間割通りに学校の支度をしたり、荷物の用意は自分でできているでしょうか? まずは家庭の中で、やり方を具体的に教えていきましょう。ことばで説明するだけではミスがあるようなら、手順を紙に書いて見せるようにします。ひとつカバンに入れたら○をつけるようにすると確実です。お母さんは横で見守り、ひとつ○が増えるたびに「そうそう、上手」と誉めて励ましてあげてください。
 他にも、入浴の前に着替えを用意する、翌日の服を選ぶ、学用品は一緒に買いに行くなどに取り組むと「自分の物」という意識が高まります。また、学習机の整理整頓も重要です。仕切り箱や小袋を使う、色分けする、ラベルを貼るなどすると整理しやすいようです。わかりやすく工夫し、丁寧に教えてあげてください。

●家族の中で役割を持つ
 
子どもの成長・発達において、周りの人から認められたり、年齢相応の役割を任されたりすることは、どの子にとっても大事な栄養素です。たとえば、おゆうぎ会で上手に踊れて拍手喝采を浴びたり、「1年生のお世話をお願いね」と任されたりすると、大きな自信になります。ところが、AD/HDのお子さんは、同年齢の子どもたちと比べるとうまくできないことが多いため、どうしても認められる場面が少なくなってしまいます。幼い頃からお友達にお世話されることが多く、「自分はダメな子だ」と意欲を失ってしまう子もいます。周囲の人から認められ頼りにされる場面として、ぜひともご家庭でお手伝いなどの役割を持たせていってほしいと思います。
 ある小学4年生の男の子は、ゴミ出しの係を任されていました。各部屋のゴミを集めたり、ペットボトルをつぶしたりと案外手間がかかるので、お母さんはとても助かると言います。お母さんの心からの「ありがとう」が励みになるようで、ゴミ出しのある日は自分で目覚ましをかけて早起きするそうです。
 「自分は頼りにされている・役に立っている」と感じられると、他の面でも意欲が出てくることでしょう。そのうち、お料理なども興味を持つかもしれませんね。

●お友達との関わり方を教える
 
友達関係は相手のあることですので、本人の努力だけで解決しないことも多いのですが、どうしてお友達と上手に遊べないのか、原因を探っていくことは大切だと思います。たとえば、
・遊びのやり方を知らない、できない
・順番や遊びのルールを守れない
・相手の話を聞けない
・ジャンケン、多数決など意見の決め方を知らない
・競争やゲームで負けると騒ぐ
・「いれて」など仲間に入ることばを使えない

などが考えられます。
 休日などに家族みんなでトランプをしたり、公園でボール遊びをしたりと、遊び方やルールを教えていきましょう。「子どもだから」と勝ちを譲りたくなりますが、時には負けを経験して我慢する力をつけることも必要です。
 また、お母さん同士が仲良くなってお家に招待し、お友達と遊ぶ機会をつくっていたお母さんもいました。本人たちに任せていると、別々に遊んでいたり、けんかになったりするので、お母さんも一緒に遊びお友達との橋渡しをしてあげるとよいでしょう。

 最後に、障害について本人に伝えるかどうかですが、これは非常に難しい問題です。娘さんはまだ2年生。今後、適切な対応を受けて様々なことを学んでいけば、AD/HDの特徴を残しながらも、社会に適応する可能性を持っています。娘さんの「学ぶ力」を信じて、将来社会で自立していける力をじっくりと育ててほしいと思います。がんばってください。

小倉 尚子(発達協会)言語聴覚士・社会福祉士


Q13

 発達障害を持つ子どもたちと関わる仕事をしています。小学校2年生になる自閉症のお子さんのことでご相談します。
 真面目でがんばり屋の子で身の回りのことはずいぶんできるようになりました。文字の読み書きも覚え、知っていることばも多いのですが、人に伝えることは苦手です。
 今困っていることは、自分の「つもり」と違うことが起こったり、失敗したりすると、パニックになることです。以前はそうなると大声を出したり、泣いたりしていましたが、最近は、「静かだよ」と言われると、自分でガマンしようとします。でもそれが、大人のほうに顔を接近させて自分の腕や手の甲を噛むことでガマンしようとするのです。違う形で表現することを教えていきたいのですが、どうしたらよいでしょうか。

A13

■ ご質問は、パニックになった時の我慢の表現を変える方法を知りたい、ということですが、そこだけに目を向けるのではなく、パニックになる原因についても考えてお答えしたいと思います。
 子どもたちは2歳前後から、経験の中で子どもたちなりの見通しを立てるようになります。たとえば、お母さんが買い物袋を持って出かける時は、「いつものスーパーに行くに違いない」と、経験の中から予測をして行動します。大人から見れば「勝手に思い込んで困る」こともある時期ですが、たとえば大人が顔を洗っているとタオルを持ってきてくれるのは、このような見通しが立つからなのでしょう。
 自閉症の子どもは、コミュニケーションの能力に遅れや偏りがあります。わからない時や困った時に、「教えてください」などのことばがスムーズに出てこない子どもたちが多くいます。また、他者がどう思っているかなどを推測する力も弱いので、本人の「つもり」と周りの思いとのズレがよく問題になります。
 身の回りのことができるようになってきたことは、毎日の積み重ねの成果と言えますが、まだ、ことばでの説明だけでは不十分な時期なのですね。経験の中で得てきた、自分の「つもり」で動くだけではなく、周りの人の指示を聞いて柔軟に行動を変えることや、「いいですか?」と尋ねてから行動することなども経験させていきましょう。
 以下、具体的な練習方法を紹介します。

大人の指示で柔軟に動く経験として
 
私たちの指導室では、買い物の練習を取り入れています。まず、指導室の中で、並んでいる果物の中から、絵カードや文字で指示された物を、正確に買い物籠に入れてくる練習をします。自分がほしい物ではなく、指示された物を覚えて取ってくる課題です。求められた指示通りにできた、カードやメモの文字とマッチングさせて正しかった、間違っていたという判断が自分でできるように丁寧に確認させていきます。
 指導室で理解できたように見えても、実際に街に出てスーパーで練習すると、やはり勝手が違います。たとえば、同じスーパーで前回買った品物の前に来ると、メモにないのに籠に入れてしまう子。いつもお母さんに頼まれている牛乳の前に来ると買ってしまう子。
 初期の練習段階ではとくに、少ない経験や「つもり」が邪魔をして、迷ったり失敗したりすることがあります。メモやカードを見て指示通りできたか確かめること。わからない時には、「教えてください」とか、「〜を買ってもいいですか」と尋ねたりすること。こういう確認ややりとりの練習をしっかりやっていくようにします。

丁寧に説明する
 生活の様々な活動の中で正しく見通しを立てることはもっと複雑で難しいことです。たとえば、カレーに必要なものは? という質問には正確に答えられる子でも、「今日は、家にジャガイモはあるからね」くらいの簡単な説明では、スーパーでやはりよけいに買ってしまうでしょう。
 大人の指示を聞こうとする姿勢はできていても、説明が不十分だと正しく理解できません。子どもとしては、いつも通り、と思ってやったのに怒られてしまう、というようなギャップは埋まりません。
 スーパーに行く前に、家にあるジャガイモを見せながら、買ってくるものは何か、ジャガイモは買うのか買わないのか、判断を促しながらメモに書き出させる。いつものようにメモに書き出してから、はっきりと「ジャガイモ ×」と書く配慮が必要な子もいます。
 絵や文字を使うだけでなく、子どもがどう理解したかを聞き直したりして、確かめ、伝え方の工夫をするなど丁寧なやりとりが必要です。

失敗への対処法を教える
 給食の時間に牛乳をこぼして、大騒ぎになった子がいました。大騒ぎの原因はいくつか考えられました。@ 飲むはずの牛乳がなくなってしまったから 、A こぼした牛乳をどうしてよいかわからなかったから 、B 失敗しても、次に気をつければよいことがわからなかったから
 でも、おもな原因はまだことばでは整理がつかないような、漠然としたショックでした。そして、代わりの牛乳があるかもしれないとか、拭けば大丈夫というような具体的な見通しを立てられないことが、その混乱を長引かせているようでした。そこで、似たような状況の時に、拭き方、後始末の仕方や、どうしたらこぼれないのかなどを一緒に練習していきました。そのうち極端なパニックはなくなりました。
 失敗は誰にでもあるもの。どう対処すれば、「×」を「○」に移行できるのか、時に手をとって教えていきます。
 ことばでは、「もう一度」「拭いたら○」などと本人に言わせて次にとるべき行動の見通しが立つように教えます。文字で書き出すこともあります。
 ショックを受けている時は、「ま、いいか」「しょうがない」「大丈夫」と気持ちを切り替えることばを教えるのもよいかもしれません。気分転換が下手な子が多いからです。

 担当のお子さんの場合、パニックの原因に対しても、ご紹介したような様々な方法で経験を増やしてみてください。ただ、それでも、自分の腕や手の甲を噛もうとしてしまう時には、噛まないように手を膝において座らせます。短時間静かにガマンができたら、間違いをどう修正すればよいのか、その時に応じたやり方を大人が教えて、そのことに集中させましょう。真面目な子は「失敗したらもうダメ」と強く思い込むことが多いので、対処法を教え、努力すれば挽回できることを繰り返し経験させていくとよいと思います。

相談員:林 祐一(発達協会)言語聴覚士・社会福祉士

 


Q12

■ 娘のことで相談させてください。娘は現在小学5年生。療育手帳A、重度の自閉症です。いま悩んでいるのは、食事についてのことです。娘は、遠足や一時預かり所などで食べる冷たいお弁当にまったく手をつけません。先生が食べるように促しても、ヘラヘラ笑って先生に食べさせようとするそうです。  もともとこだわりが強く、小学1、2年生の頃まで給食はほとんど食べず、帰ってきてから家でラーメンなどを食べることも多くありました。3年生を過ぎた頃から、からだが大きくなってきたせいか、ようやく給食で食べられるものも増えてきました。しかし、いまだに冷えたお弁当は食べることができず、食べる前にレンジを何度もかけなければなりません。環境も関係あるのか、大勢いるところではよけいに食べられなくなるようです。  家でもお弁当箱に詰めてごはんを出してみたり、食事を抜いたりと、いろいろ試してみたのですが、毎日そのような機会をつくれないこともあり、なかなか成功に結びつきません。このままでは、大人になった時が心配です。アドバイスをよろしくお願いいたします。

A12

●食べものにおけるさまざまな「こだわり」
 偏食のあるお子さんの中には、野菜などの特定の食べものが食べられないというだけではなく、初めてのもの、色や形、匂い、かみごたえなどにこだわりがある子がいます。またお嬢さんのように特定の温度のものしか食べられない子もいます。冷めたお弁当を食べないだけでなく、極端な場合には、食べている間に冷めると、何度も温め直してもらいたがることさえあります。

●ほかの場面でも見られるマイペース
 偏食の強いお子さんは、食事場面だけでなく、ほかの生活場面においてもマイペースな面が多いように思います。「こだわりだから仕方がない」とあきらめていると、できることも少なくなり、ほめられる機会も減り、だんだん自信を失っていきます。子どもが嫌がるからと何もさせないでいると、大人に評価されることも、信頼されることも少なくなります。子どもたちが学ぶチャンスを、大人が奪ってしまっているのではないかと残念に思います。
 確かに子どもたちが、おいしそうに食事をする場面を見ると、とても嬉しくなります。食事の場面は、家族や仲間など人とのコミュニケーションを図る大切な場でもあります。知的障害がある場合は、健康かどうかを確認する場ともなります。つい「楽しみにしている食事くらい、自由にさせてあげないと」と思ったりします。しかし、「嫌がっているのに、食べさせるのはかわいそうだ」と言っている間に子どもは大きくなり、偏食を直そうにも直せなくなってしまいます。
 さらには、好きなものはたくさん食べるのに(時には人の分まで)、それ以外のものは「気が向いたら」といったムラのある食べ方も問題です。
 給食やお弁当を食べなかったからと、ラーメンやスナック菓子などを食べさせていては、「お昼ごはんを食べなければ、好きなものが食べられる」と誤解します。また、食べる時間も不規則になり、「おなかがすいた」というからだの状態に気づかなくなります。そのため夕飯もおいしく食べられずに悪循環になっていきます。

●「食べられた」という実績を
 基本の対応についてですが、まずは家事仕事や運動を通して、充分に頭を働かせ、からだを動かして、空腹で食事の時間を迎えるようにしましょう。飴やチョコレート、くだもの、ジュース、牛乳などは意外とカロリーが高く空腹感を鈍らせるので、食べさせる時間によっては注意が必要です。
 そして、苦手である「冷めたもの」についてですが、ほんの少量食べるところから始めて、食べたら好きなものが食べられるという経験をさせたいものです。はじめは家庭や少人数の場面でチャレンジさせたほうがよいでしょう。大勢の人がいるところでは、気が散ってしまったり、騒ぎ声に反応してしまったりする人もいます。ここで大切なのは、ほんの少量でも「食べられた」という実績をつくることだと思います。食べられたら、たくさんほめてあげたいものです。
 なお、その時には、大人が「絶対、食べられるはず」と子どもを信じて、毅然とした態度で接したいものです。「どうせ食べないだろう」と思っていると、その気持ちが子どもに伝わります。

●変えたい、つきあいの質
 偏食を改善していくなかで子どもたちが学んでいく大切な点は、「苦手なものでもがんばって食べる」という経験から、「苦手なことに挑戦し、それを乗り越える達成感」や「自分に対する自信」を育てるということだと思います。
 お嬢さんと同じように「冷めたお弁当は食べない」と決めているお子さんや、青年たちに時々お会いします。家庭で運動や家事仕事など一生懸命取り組み、ほめられる場面が増えてくると、食事についても、がんばる姿勢が見られるようになり「食べることができた」というお話をききます。
 食事だけでなく、生活のいろいろな場面でつきあい方を変える必要性があると思います。
 たとえば身の回りのことから、自分でできることを増やしていくようにします(マナー面も含めて)。洗濯物をたたむ、食器を洗う、調理を手伝う、など家事仕事にも積極的に参加させます。
 評価されることが増えてくると、意欲的に取り組もうとする姿勢が見られるようになるのではと思います。それが食事にもつながってほしいものです。小学校高学年ですから「おねえさん」としての自覚を促したい時期でもあります。幼児扱いを続けていると、時には力をふるうこともあります。力をふるうことを覚えた「おねえさん」は自分の要求ばかり通して、困った存在になりかねません。大人のほうもお子さんとのつきあいの質を変えていくことで、次のステップである「おねえさん」にも気づかせたいと思います。
 親子でともに「できた」という経験を増やして、お互いに達成感や信頼感を深めたいものです。まずはお子さんの力を信じて、あきらめずにがんばってください。                   

井上 智佳(発達協会)言語聴覚士・社会福祉士


Q11

■ 娘は小学5年生です。5歳の時にAD/HDと診断されました。現在、学校での学習面ではなんとかついていっているようですし、小さい頃と比べて情緒も安定してきました。
 ただ最近気になっているのは、「コミュニケーション」の問題です。会話の時に、こちらの話をわかっているかどうか確認の質問をしても返答をしなかったり、ボソボソと小声で話したりと、意思がこちらに伝わってこないのです。
 そのためこちらも、「わかったの?」としつこく聞いたり、繰り返し説明をしたりすると、最後にはベソをかき出し悪循環です。
 私としては、意思をうまく伝えられなくても「わからなかった」とか「聞いていませんでした」ということぐらいは言ってほしいと思っています。このような態度では、大人になったあとで一番困るのは、本人だと思います。
 家族でも話し合いましたが、なかなか解決策が見つかりません。アドバイスをお願いします。

A11

■ AD/HDのお子さんは、3〜4年生になると一般的に『多動』の面は落ち着いてくると言われています。授業中に座っていられるようになるとまわりの状況が見えてきます。それだけ友だちからの評価に敏感になってきます。
 今まで元気に話をしていた子が、みんなの前で何かを発表する場面になって、急に黙ってしまうことがありました。
 その子は、答えに失敗しないよう、みんなと同じ行動がとれるように、思った以上に神経を使っていました。でもどう答えたらよいのかわからず、思考が停止しているような状態だったようです。
 さて「失敗しないように」と思ってはみても、状況や相手に合わせた「コミュニケーション」をとるというのは非常に複雑で難しいものです。特にAD/HDのお子さんでは、「コミュニケーションのとり方」について基本的なことを知らないことがあります。知識や経験が不足していて、頑張ろうにも、うまくいきません。たとえば、
 ・説明のことばや内容がわからない
 ・質問の仕方がわからない
 ・答え方がわからない
 ・失敗に敏感すぎる

 などがあります。
 娘さんの場合、「ボソボソ」小声になったり、意思がうまく伝えられないのは、いくつかの原因が考えられます。
 うまくいかないことが重なって、情緒的に不安定になる子もいるので、この時期は丁寧な対応をして、自己評価を安定させてあげたいものです。

●説明はできるだけ簡潔にする
 
長すぎる説明やことばの理解でつまずいている子が少なくありません。
 一般的に、説明は詳しいほうが親切なのですが、話が長すぎて聞きとるだけの集中が続かない子もいます。情報が多すぎて、かえって混乱することもあります。
 伝えるポイントを文字にして書き出し、簡単な絵や図を使うとさらに伝わりやすくなります。
 やるべきことを話す時も、一度に覚えていられる量を目安に、短いことばで伝えます。次の指示は、ひとつのことをやり終えた後に出すようにします。
 子どもたちに、『みんなで協力してがんばろう』という話をした後、『協力ってなに?』と子どもから質問されたことがありました。抽象的なことばは、どのように理解しているか確かめながら、使いましょう。
 また、話し合いを持つ時には「間違っても、思っていることを話せばいい」という雰囲気をつくり、それをことばでも伝えましょう。「心配して尋ねている」という意図が読めずに、「怒っている」「嫌われている」と、誤解する子がいます。
 判断の基準が充分に育っていない子ほど、質問の語調の強さに合わせて答えを変えたりして、話が混乱することもあります。

●質問の仕方や答え方を教える
 質問に答える前に、質問の内容を復唱させてみることはとても有効です、質問を聞き取れたかどうかがはっきりします。
 また、答えられない時には、「○○」かな「△△」かな、など選択肢をあげて答えを探させましょう。「わかる」・「わからない」と、ゆっくり、はっきりと選択肢を提示すれば、答えられる子が多いものです。
 わからない時に「わかりません」「知りません」「もう一度言ってください」と伝えることが、「良いこと」「必要なこと」という知識も教えていきます。
 というのも「わかりません」と言ってはいけないと思い込んでいる子もいるからです。すべて「わかりません」ですます子もいます。やりとりの中で、使い方を教えていきましょう。

●得意なことを伸ばす
 苦手なことは誰にでもあることです。でもAD/HDの子どもは、マイナスの評価を受けたり、何かをやりとげた経験が少ないので、そのまま高学年を迎えると、努力を放棄したり、意欲を失ってしまう子が増えてくると言われています。
 たとえば調理やお菓子づくりなど、自分の好きなことに挑戦してみてはいかがでしょうか。得意なことで、みんなを驚かせ、喜ばせるような経験ができると自信がつくと思います。
 簡単なクッキーをつくって、家族や友だちにプレゼントした子がいました。思った以上に喜ばれたので、自分から挑戦することが増えていきました。
 お菓子を手渡す時に「誕生日おめでとう」「食べてみてください」と、相手や状況にふさわしいことばを添えてプレゼントすれば、コミュニケーションの練習もできます。

●生活の中で経験を増やす
 生活の中で、親子で楽しく学ぶ機会を増やしていってください。実際には説明のとおりにお菓子をつくることは難しいことです。ことばや文字だけでなく見本を見せ、丁寧に教えていきましょう。娘さんが、どのことばでつまずくのか。どんな状況の時に困るのかが見えてくれば、丁寧に教えてあげられると思います。
 「失敗しないように」「ちゃんとやろう」と思うとよけいにことばが出なくなる場合は、ことばだけでなく、失敗した時の対応を教えます。たとえば、こぼしたら何で拭くのか、こぼさないようにするにはどうするのかなどです。状況に応じて、相手に合わせて判断し行動することは、そのつど具体的に教えていくことの積み重ねしかありません。
 娘さんは、いつもは元気に話をしているとのこと。失敗した時に立ちつくさず、適切な行動が取れるようになれば、自信を持って話ができるようになると思います。
 このように、自分が上達していく、という評価ができれば、セルフ・エスティーム(自己評価)も安定していきます。     

相談員:林 祐一(発達協会)言語聴覚士・社会福祉士

★コミュニケーションについては、『なぜ伝わらないのか、どうしたら伝わるのか・・・「双方向性」のコミュニケーションを求めて』(大揚社)も参考にしてください。ホームページからもご注文できます。くわしくはこちら



Q10

■息子は1年生の男の子、重度の知的障害を持っています。
 お風呂の後の着がえや、食事の時の着席といった日常的な習慣が、毎日のことなのになかなか定着しません。ことばかけをしたり、物を見せたりしているのですが、逃げ回ったりして、言われた通りにやろうとはしません(いざやり始めるとできるのですが……)。最近とくにふざけ方がひどいので、厳しく叱っていたら自傷行為がはげしくなってしまいました。あまり厳しく叱らないほうがよいのでしょうか。
 日常生活に関わることは自分で少しでもできるようにしていきたいと思っているのですが、よい知恵をお貸しください。

A10

■お母さんのご質問から、お子さんが「言われていることばがわからない」とか「見せられている物がわからない」という状態ではないように思いますが、いかがでしょうか。
 「お母さんは最後には手をかけてくれる、それまではお母さんの言うことなんか聞かなくていいんだ。お母さんが言っていることにボクのほうから応じるなんてとんでもない」と思いこんでいるのではないかと思います。

 たぶん今まで、ご両親ともお子さんの言いなりになってこられたのではありませんか? もちろん「ダメよ!」とか「いけません!」とか叱ったりはされたのでしょうが、最終的には「しょうがない子だ」と彼の思い通りにさせてしまっていたのではないかと思います。
 その結果、彼はお母さん達に叱られても、少々厳しく対応されても「恐れ入りました」とはならず、「ボクのほうが優位にいるんだ」「ボクが王さまなんだ」と思ってしまっているのでしょう。
 『厳しくしたら自傷行為をするようになった』というエピソードも、「王さまに向ってその態度はなんだ!」とばかりに、「これでもか!」とお母さん達にオドシをかけているのだろうと思います。自傷行為でお母さん達がビビることを、ちゃんと承知しているのだとも思います。
 ですから、今のような対応をしている限り、お子さんの思うツボ。カッカとして疲れるのは大人だけ、ということになりますね。カッカとして、叱ってエネルギーを消耗し、疲れてむなしい思いに捉われるのは大人のほうで、お子さんはますます「自分本位で行動する」ことを学んでしまいます。
 では、どうすればよいのでしょうか。

 状況にもよりますが、@一貫して方針に従わせること。「ダメよ」と言ったら、決して妥協せず最後まで(自傷行為などするでしょうが)それを通す。「○○をしますよ」と言ったら、手を添えてでもいいから最後までさせて、「えらかったね、がんばったね」と評価する。A 子どものほうから、その働きかけに応じないと困るように状況を工夫する。
 例えば「パジャマに着がえたら、ジュースを飲む」という約束をし、「パジャマに着がえなかったら、ジュースは飲めない」という状況をつくっておけばいいのですね。テーブルの上など、お子さんの見える所にジュースを置いて「飲みたい!」という気持ちを高める、などという工夫も大事でしょうね。

 もちろん、パジャマを着ないままで飲もうとしたら、「パジャマを着てからね」と言って絶対に裸のままでは飲まさない(この時、お母さんのほうに「彼の思い通りにはさせないゾ」という断固たる決意が必要です)。彼は、なんとか思い通りにジュースを手に入れようと「自傷行為」など今までの経験から有効だと学んだ手段を使って、「自分の思い通りに」しようとするでしょうが、それには反応しない忍耐が大事です。
 彼はいつものようにお母さんが反応してくれないので「アレ?」と、その行為をしながらお母さんの様子をうかがうでしょう。自傷行為をしてもお母さんは動じないし、ジュースも手に入らない、となれば彼はそれらの手段を止めるでしょう。

 そこでお母さんはいつものようにニコニコして、「早くパジャマを着て、ジュースを飲もうね」と話しかける、これを根気よく繰り返すと、「パジャマを着る以外に、ジュースを手に入れる手段はないんだ」と彼は納得して、自分でパジャマを着るでしょう。その時に、しっかり「えらいね、ひとりでパジャマを着たね、ジュースをどうぞ」とほめて、ジュースをあげる、というようにします。

 食事の時も同様です。「座らなければ食事はできない」という方針で、目の前でお母さん達はおいしそうに食べ始めればよいのだと思います。近づいてきて立ったまま食卓に手を出そうとしたら「座って食べるの」と言って、決してテーブルの上の物を取らせないことです。
 お腹がすいていて、食べたい物があれば、自分から座るでしょう。そうしたらすかさず、ほめて、「おいしいよ、食べようね」などことばをかければいいと思います。

 「厳しさ」というのは、大きい声で叱ったり、叩いたりすることではありません。
 時には、お子さんがハッと注目するように大きい声で注意したり、勝手な動きを止めるために身体で押さえたりすることも必要ですが、それは、その時々の「手段」であって、目的ではありません。大事なのは、お子さんが周囲の状況や人からの働きかけにアンテナを張れるようになること。そのために、「これは、どうしても学んで欲しいこと」と確信することは、学びやすい工夫をしながらも、決してあきらめず、妥協せず、働きかけていく根気が要求されます。それが「厳しさ」なのです。

 ともかく「自分の思い通りにしたい」と思っているお子さんに、「周囲の状況、ルールに従う」ことを教えるのですから根気がいります。けれど、このハードルを乗り越えると、多くのことが学べるようになります。お子さんは今、とても大事な岐路に立っているのだと思います。これからのお子さん自身の長い人生のために多くのことを学んでいける道を歩き出せるように、がんばって取り組んでください。しっかりと学んでいく力を持っているわが子を信じながら。


相談員:石井 葉(発達協会)保育士


Q9

■4月から小学4年生になる私の息子Aには、軽度の知的な遅れがありますが、現在普通学級に通っています。これから高学年に向かっていく上での、放課後の過ごし方についてご相談させてください。
 今までは、学校が終わるとお友達がうちに遊びに来てくれ、私や2歳下の弟も間に入って一緒にゲームをしたり、ビデオをみたり、近くの公園に行って遊具で遊んだりしていました。でも、ここ最近は、うちに遊びに来てくれるお友達も減り、弟も自分の同級生と遊ぶようになり、Aは一人でふらふらと外に出かけたり、家の中でテレビをみたり、手持ち無沙汰に過ごすことが多くなってきました。私がいつもつきっきりで遊ぶわけにもいきませんし、どのようなことをして放課後を過ごさせればいいのか悩んでいます。
 地域の学童クラブやスイミングスクールや塾などに行かせれば、友達もでき、集団の中で社会性も身につくのかと思いますが、Aにとってはどのような場がいいのでしょうか? 放課後を有意義に過ごせればと思っています。

A9

■友達が出来ない、みんなの輪の中に入れない、余暇を充実して過ごせない原因は、
*社会性が幼い
*生活が受身で自発性が育っていない
*自己コントロールが出来ない
*ルールが理解できない
*見たり聞いたりが不得意
*体がぎこちない
*手指の操作が苦手
*一人が好きである(一人の方が気楽)
などいろいろあると思います。
 発達につまずきや遅れがあると、親や周囲の人々が配慮や手助けをしすぎて、子ども自身が苦労し試行錯誤をしながら様々なことを学び、「やれた!」と実感するような機会もなく、受け身で自発性のない子どもに育ってしまいがちです。
 息子さんももう4年生、そろそろ思春期が近くなります。これからは受け身でなく自分で考え行動する力を育ててあげたいですね!

 K君も少し遅れがあり、4歳頃は何でも親にやってもらって気ままに育てられていました。それではいけないと気づいた親は、身の回りの始末、早寝早起きして生活のリズムを整えること、お手伝いなど、どんなことにも努力が必要でしたが、懸命に取り組みました。少し厳しいと思われるくらい、自分で考えて行動するよう働きかけてきました。そして、様々な失敗も経験しながら自分で考えて行動する力が育ちました。    4年生になった時、K君は自分の字が下手なことが気になりだしました。そしてお習字を習えばうまくなると考えたのでした。母に頼みましたが、「いいよ」の答えはすぐに返ってはきません。「三日坊主になるよ」と母。彼は三日間、坊主にならなくてはいけないのかと心配で「坊主にはなりたくない!」と頭を押さえたものでした。
 辞書で「三日坊主」とはどんなことかを調べ、今まで以上に、母の手伝いをして「やっぱりお習字が習いたい」と努力しました。やっとやっと、親からの許可が出ました。重なったり、曲がったりしていた作文がきれいになったのでした。今、彼は高校生。様々な苦手を克服して学んでいます。

 子どもの要求をすぐには適えず、「どうしてもこれがしたい」と思う気持ちを高めていくこと。学童クラブや塾へ入れれば社会性が育つわけではなく、子ども自身の意欲をつけていくような働きかけがなければ、どこに行かせても受け身で、無為な時間を費やしてしまいます。
 意欲を育てるには、うまく動ける身体や手指が育っていないと自信がなくなって、集中できません。また様々なルールの理解ができないと遊びも楽しめず、充実した活動ができないと思います。まずは、様々な運動トレーニングをして柔軟に動ける体づくり、そして、手指の働きを高めていくことをおすすめします。家庭の仕事には手指を育てる良い素材があります。忙しい母親です、一緒に家事をしながら息子さんの動く力と心を育ててあげられたらどうでしょう。風呂掃除、掃除などには様々な動きが必要ですし、息子さんと一緒にお料理をされても手は育ちます。「今日のおかずは彼が作ったのよ!」というお母さんの言葉で家族が「おいしい!」と食べてくれたとき「やったー!」と実感して自信がひとつ育っていくと思います。

 S君、17歳の青年です。自閉症で養護学校の高等部にいます。様々なパニックやこだわりのあった幼児期、学童期に親が丁寧にかかわり、「手を育て」ました。調理、掃除、洗濯、アイロン掛け、家事が得意です。5年生の頃は、様々なレパートリーが増えました。母の手助けがなくても、家族の食事は用意します。様々な家事の中で手を育てられました。幼児の時、太鼓が好きだったこともあって、ピアノも習いました。
 先日の音楽祭では、500名の観客の前で、モーツアルトの「ピアノソナタ」を3楽章まで、堂々と弾きこなしました。母親と家で取り組んだ家事が彼の手指を育て、集中力が確かに育ったのです。
 S君の母親は自分勝手な行動、次々に出てくるこだわりに向き合いながら、人任せにせず、子どもの意思を探り、得意を育て、やる気を育ててきました。カラオケも好き、仕事も好き、充実した余暇を過ごしています。  
                   
  現在、親たちの多くは「子どもをどこかにお願いすれば力がつき、社会性が育ち、人とうまくやっていける」とあちこち行かせていて、子どもは受け身に親の言うままに忙しく暮らしています。
 K君のように「字がきれいに書きたい」という意欲と主体性があればいいのですが、親が選んで「行かせる」やり方は子どもの動機もなく、意欲も育たず、社会性も育ちません。子どもの「放課後を充実させたい」と思う親の願いは、とてもよくわかります。でも本当に充実させたいのでしたら人任せにせず、苦手を避けることなく、気持ちを確かめ、子ども自身が選べるような進め方が大切だと思うのです。             遊びも余暇もただ楽しければいいのでなく、懸命に力を出しきった時に、成長が促され集中力を育て生きるための力になると考えています。子どもが遊んでいる時、その表情は真剣です。うまくいった時、弾けるような笑いがこぼれます。
 また、一人でいても、とても充実した時間を過ごせる人もいます。一人でいることも楽しむ子たちは、幼い時から親に遊び方や家事を丁寧に教えられて、自信を持って食事づくりなどをして余暇を楽しんでいます。 あなたもこれまで丁寧に息子さんと関わり、良い力を育てられました。これからは息子さんが「自分で切り開いていく道」です。その道の前ではなく、横で見守ってあげられるといいですね。

相談員:辻 滋子(発達協会)保育士


Q8

■息子のことで相談したく筆をとりました。息子は小学校6年生、軽度の知的障害があります。小さい頃から穏やかな性格で、わが子ながら素直だなあと感じるくらい大きな反抗期もなく過ごしてきました。現在、普通級に通っているのですが、苦手なことがあっても、自分なりに「がんばってやってみよう」という気持ちも強く明るいため、友達も多いようです。
 ただ最近の息子の様子を見ていて気がかりなことは、親のことばに素直でなくなってきたことです。
 テレビの影響か、近頃は料理に興味を持ちはじめ、私が食事の支度をしているといろいろとやりたがるようになってきました。その気持ちは嬉しいのですが、いざ包丁を持たせても危なっかしい手つきなので、教えようとすると「わかってるよ!」、「いちいちうるせえなあ!」などと文句を言ったり、怒ったりします。黙って見ていると自分なりにつくるのですが、手元も危ないし、手順もいい加減なので放っておけません。父親は失敗をすれば自分で気をつけるようになるだろうと言うのですが、けがをするかもしれないし、中学生になるともっと反抗的になるかもしれないと心配です。どのように息子に教えていけばよいのでしょうか。アドバイスを頂ければと思います。

A8

■そろそろ息子さんも思春期を迎えられましたね。これまで、親の言うことにも素直に応じておとなしい良い子だった息子さんが、少し注意しても「うるせえな!」などと言うと、びっくりしたり、戸惑ったりなさっていることでしょう。こうした態度の変化は、彼が確実に、大人への一歩を歩みだし、思春期に入ったからでしょう。これから、子どもから大人へ脱皮し始めるのですから、周りも関わり方を変える時期になったのですね。
 思春期を迎える子どもの親は今まで以上にどんどん子離れして、子どもが自分で生きていく力をつけていけるような、側面援助が必要だと思います。
 順調に育った息子さんが、これから思春期に自己を育て自分で生きていく力をつけていくと考えて、適切な対応が必要に思います。「失敗すれば、自分で気をつけるようになるだろう」というお父様の言われることはあたっていると思います。親は失敗を恐れず、本人に任せて見守ること。困ったら聞いてくるでしょう。これまで丁寧にお育てになったのですから、息子さんは、必ず自分で苦労を重ねながら習得されると思います。 思春期は幼児期・学童期の延長線上にある時期です。料理をつくることを例にとりますと、幼児期から少しずつ指示に従ってやる力をつけていきます。台所や調理道具や、様々な食材に慣れさせていく、幼児から四年生くらいまでは、かなり徹底して指示どおり動く練習を積み重ねていきます。小学生になると、包丁の持ち方、置き方、洗い方、渡し方などをはじめ、様々な道具の使い方など、根気よく丁寧に教えていきます。また簡単なレシピ(文字が読めない子には絵や写真レシピを用意する)を作って、レシピを見て正しい工程を理解して動く練習をしていきます。こうした土台をつくって、思春期を迎えます。後はあれこれ指示を出さず任せて見守っていきます。私たちが考えるよりはるかに、彼らはしっかりと料理をつくりあげます。  次の記録は、私が関わっている学童訓練会「さくらんぼ会」の課題で、5年生の男の子が夏休みに23食、自分で献立をたててつくった記録の一部です。

献立作りの感想表見本

献立表感想


 家族の感想の欄では、小さく読みづらいのですが、本児が「魚がこげてしまいました」と感想を書いたら、お兄さんが「野菜サラダが少し切り方が太かったです。でもソーミンチャンプルーやみそ汁はとてもおいしかったです。ぶりの照り焼きは、『こげてしまった』と書いていますが、僕はあれぐらいでもけっこう好きです。」と書いています。優しく励ましてくれるお兄さんです。お母さんは「鳥の唐揚げ」の時の感想に「熱くて大変でしたが、とてもおいしい唐揚げでした」と書いています。時には彼の間違いも指摘して、「今度は失敗しないように!」と釘をさすこともされています。     
 家族の応援の中で、少年たちは確かな力を育てていけるのですが、小さい子への対応のようでは、少年たちは納得しません。
 時には指を切ったり、軽いやけどをしたり、器具を壊したりもしますが、「失敗は成功の母」と考えるようにしていきましょう。
 貴女も息子さんを信じて、少しの失敗に、はらはらせず見守っていかれることと、許されない勝手なやり方には、毅然とした態度で向き合い、料理することも含めて、生活全体に計画性を持たせるよう、息子さんとよく話し合われることが必要に思います。  
 自分でやりぬく力を獲得し、自信が育てば中学生になる頃には、更に、たくましく成長されることでしょう。  成人を迎える日を楽しみに、充実した日々を過ごされますように、お返事まで。

相談員:辻 滋子(発達協会)保育士
 


Q7

■私の息子は、今年小学校2年生になりました。私が仕事を持っているため、息子は、放課後には学童クラブに行っています。学校でも落ち着きがないのですが、学童クラブでも毎日のようにトラブルを起こし、指導員の先生も対応に困っています。
 息子はすぐに友達に乱暴をしてしまいます。ちょっとしたことですぐカッとして、友達をなぐったり蹴ったりします。手加減を知らず、相手にけがをさせたこともあります。わざといたずらをして先生や友達を困らせることもあります。先生が注意をすると、その時は反省しますが、次の日にはもう忘れているようで、トラブルが絶えません。
 先生には、「親のしつけが悪い」「愛情不足ではないか」「これ以上続いたら面倒を見きれない」などと言われます。
 私も、どのように子どもに接したらいいのか自信がなくなっています。また、先生方への理解の求め方もわかりません。一体、この子には今何が必要なのでしょうか。アドバイスをお願いします。

A7

■ 毎日子育てやお仕事でさぞお忙しいことでしょう。お母さんが安心して働くには学童の助けが欠かせませんが、そこでお子さんが毎日のようにトラブルを起こしては気の休まるときがありませんね。けれども、他の親御さんも同じに学童が頼り。そこで大切なわが子が被害を受けたりすれば安心して働いていられません。学童側としても何とかならないかというのは当たり前ではありますが、「このままでは学童には居られなくなるかもしれない」と言われては、お母さんはどんなにかご心配なことでしょう。
 
  そこで、私もあなたのご質問について考えてみました。お母さんはあなたのお子さんの現状や問題についてどの程度把握し、知識をもっていらっしゃいますか? 彼の良いところや、困る点、問題点は? 医師から医学的な説明は受けていますか? これらのことを知った上で、生活の中でどのように取り組んでいくかを考え、学童の先生と話し合うと良いと思います。
 このお子さんのような「ADHD」と言われる子ども達は、落ち着いてじっくり物事に取り組むことが苦手で、すぐかっとなり暴力的になりやすい、興奮が興奮を呼び我を忘れてしまう、我慢や忍耐を要することが苦手といった特徴があります。

 お母さんは心のどこかで「こういう子どもだから仕方がない。周りが理解して我慢し、許してやって本人に合わせてもらえないだろうか」「なるべく刺激をしないでほしい」などと思っていないでしょうか。しかし、学童内でのトラブルを客観的に考えてみますと周りの子ども達は大なり少なりの被害を被り迷惑を受けています。そのため皆から嫌がられたり避けられたりするのですね。本人も疎外感を味わい寂しくて仲間に入ろうとしても、付き合い下手で表現の仕方もわからず、結局嫌がらせをしたり気を引く行動に出て、ますます皆から避けられることになります。本人を変えていかなければ周りの子ども達との関係はなかなか良くなってゆかないでしょう。

 現状を改善していくために「今、家庭で何をどのようにすればよいか?」ですが、彼のかんしゃくや暴力を我慢してやるのでなく正面から向き合うことだと思います。彼はまだ2年生です。例えば振り上げかけた手をしっかり押さえ、「叩いてはいけない!」と強さと気迫で迫る、彼のかんしゃくを許さず振り回されない、興奮に乗せられないように気を付けること。一方で外食をするときに待つ経験をさせたり、家の中で彼にできるお手伝い(配膳・お茶碗を拭いて食器棚にしまうなど)を毎日こつこつとさせ、「よくやったね」「ちゃんと待っていられて立派だ」と褒める。「友だちを叩かない」「友だちを蹴らない」「ひとの嫌がることをしない」と約束をさせる。一日を振り返り自分のしたことについて考えさせる、本人が約束を守れるように励ましてやる…このようなことを辛抱強く積み重ねていくと良いと思います。

 次に、家庭の中のお父さんの役割を考えてみましょう。お父さんとお母さんは車の両輪のようなものです。ご両親が力を合わせてじっくりお子さんと向き合う、特にお父さんには力強くダイナミックな遊び、体を使うことをやっていただきたいですね。運動やハイキング、大工道具を使って工作をするなど、きっと親子で楽しめるでしょう。その中で様々なルールや常識を教えることができますし、粘り強く物事に取り組んだあとの達成感や満足感も味わえるはずです。

 このように家庭での過ごさせ方や接し方を工夫していきながら、もう一度学童の指導員の方達にお子さんについて説明し、これからのことを相談してはどうでしょうか? このお子さんの乱暴な行動やいたずらは、愛情不足やしつけが足りないためではなく「ADHD」であるためだということ、わが子に対するご両親の考えや願い、今家庭でどんな努力をしているかなどをはっきり伝え、わかっていただけるようにすると良いと思います。
 学校の中でも落ち着きがないとのこと、お友だちとの関係はどうなのかわかりませんが、大体学童内と似たような様子でしょうか? 家庭・学童だけでなく学校の先生とも連絡を取り合い、三者で連携してさまざまな取り組みを工夫していって、お子さんがみんなの中になんとかとけ込んでいき、周りの人たちと良い関係を築いていくことができれば、お母さんも安心してお仕事に打ち込めるようになるでしょう。どうぞ頑張ってください。


相談員:神田 武子(発達協会)保育士


Q6

■学童クラブの指導員をしています。
 通常受け入れは3年生までなのですが、我が区では、障害を持つ子どもは特例で4年生ま
で延長できます。今年4年生になったO君がその制度を利用して、通うことになりました。 
 
O君は普通学級に在籍しています。軽度の知的障害を持つお子さんで、学校での勉強はすでについていけていないようです。親ごさんは障害のことをあまり認めていらっしゃらないようで、我々とO君の障害について話をしたことは今までに一度もありません。
親ごさんとしては障害のことについては触れないでほしい、かくしておきたい、といった感じです。とはいえ、障害児枠としての延長保育を希望したわけですから、認めていない一方で制度は利用されているわけなのですが……。

 また、なぜO君だけが4年生なのに学童に残っているのか、周りの子どもたちに聞かれたときにどう説明してよいのかと迷っています。本人への説明も同様です。
 
それから、4年生としての活動(例えばリーダーシップをとってもらうなど)もさせてあげたいのですが、行動としては年齢より幼いO君なので、どうとりもってやればいいか、ということも悩んでいます。
 親ごさんへの対応も含めて、以上について、アドバイスをいただければと思います。

A6

■まず、O君の母親と面接して単刀直入に話を切り出してみたらどうでしょう。
 お母さんは子どもにどう説明しているのか、また、どんな思いで子育てしているのか、どんな希望を持っているのか、よく話し合ってみることが必要だと思います。
 指摘されるまでもなく、幼い時から困って悩みながら育ててきた親には、子どもの問題は判っていると思います。普通学級へ子どもを出しながら、様々な思いや悩みのなかで日々を送っていると思います。そうした親の気持ちを受けとめて、話し合いを持たれたらと思います。
 子どもの遅れを認められず、なるべく遅れを周りの人に知られないようにしている親の気持ちも判らないわけではありません。
 現在、子どもたちを取り巻く社会では、知的に高い人や力のある人が評価されていて、遅れや弱さがあることは困ったこととされています。親もそうした社会で育ってきたのですから、我が子の遅れは認めにくいのだと思います。
しかし、そうした思いのなかで育てられ、教育を受ける子どもたちは大変です。丁寧に教えてもらえば判るはずのこともよく判らず、自信も持てず、力もつけられません。親があるがままの我が子を受け入れ、適切な教育を受ければ、子どもは自信を持って生活をしていけます。
 親と話し合うときには、親や子どものおかれた状況を理解し、親の気持ちを考えながら、なるべく具体的に子どもの問題を話し合うことが大切だと思います。子どもが学童クラブで充実した日々を過ごせるようにと願いながら話し合えば、親と心が通じあえて、子どものことを一緒に考えていかれることでしょう。

次に、友だちに「4年生なのにどうして学童にいるのか」と聞かれたら、ありのまま伝えればいいと思います。「O君はひとりで家でお母さんの帰りを待っているより、学童クラブでみんなと一緒に待っている方が、お母さんも安心できるしO君もそうしたいのです」と。子どもはあいまいに話すより、きっぱり本当のことを知らせるほうが、納得します。
 障害児だけ特例という区の規定もおかしいと思います。子どもの中には、一人で過ごすのは不安になったり、寂しくなる子もいます。夏休みなど長い休暇は、共働きや片親家庭の親たちは4年生になると学童クラブをやめなければならないことに不安を持っています。昔のように異年齢の子どもが集まって遊んだり、安心して遊べる空間や自然、子どもを見守る地域の社会があればいいのですが、現在の子どもたちを取り巻く環境を考えますと、"障害を持った子ども"と限定するのも考えものです。O君が豊かな時間を学童の中で過ごせることで、枠をどの子にも広げることができればいいですね。

 O君の活動の内容ですが、無理してリーダーにしなくても、彼の充実した活動と休息が保証されればいいと思います。
 学童クラブに見学に行って感じるのですが、先生方の努力でいろいろな工夫がなされ子どもたちが様々な行動や遊びをしているのですが、中にはとても騒々しい学童クラブがあり、活動にうまく参加できずに取り残されている子を見かけます。O君のような活動に参加しにくい子の対応は考えていかなければならないと思います。
 グループに入りづらいようでしたら無理に誘わなくてもよいと思いますが、工作や木工、編み物や縫い物、おやつ作り、ミシンがけなど、「手」をしっかり使って余暇を過ごすことも大切です。
私たちも子どもたちと本物の道具を使って余暇活動をしています。鋸や金槌を使って簡単な台や巣箱を作ったり、スウェーデン刺繍、刺し子、調理などをしていますが、低学年とは思えないほど、しっかりと活動します。おだんごや野菜炒め、簡単な味噌汁などを作って、いきいきと活動しています。遊びよりこうしたことの方が打ち込める子もいます。O君もこうしたことで自信がつけられるといいですね。
 普通学級にいるO君ですから、学習も判らないまま、困っているところもあるでしょう。
予習や復習、基礎的な学習など短時間でも学習する習慣をつけることも大切です。
 こうした具体的な学童クラブでの過ごし方を親ときめ細かく話し合うなかで、親との意思疎通も深まり、子どもが日々安定していくのだと思います。障害を持ったり遅れのある子どもたちに必要なことは普通の子どもたちにも大切なことです。
 学童保育が充実していけば、親も安心して働くことができ、子どもも安定して放課後や休暇を過ごすことができるでしょう。
 ご苦労もあるかと思いますが、どうぞお体に気をつけて頑張ってください。

相談員:辻 滋子(発達協会)保育士
                        


Q5

■小学校2年になる娘の「ことば」についてお聞きします。娘は療育手帳ではA、重度の自閉症と診断されています。
 彼女は7歳になるというのに、いまだに「イヤ!」くらいしか言えず、あとは「アバババ」など、言葉にならないわけのわからないことを言っています。特殊学級に通っていますが、学級のなかでしゃべることができないのはうちの子だけです。どうしたら言葉が出るようになるのか、先生達と日々頭を悩ませています。
 また、自分でもしゃべることができないのが悔しいのか、2歳になる弟がしゃべろうとすると怒って押し倒したりするので困っています。
 以前通っていた療育センターの先生に、「この子は能力的にはかなり高いところがあるのだけれど、マイペースが強く、言葉の必要をあまり感じていませんね」と言われました。
 今は、取り組みとして、生活の中に身振り手振りを少々オーバーに取り入れるようにしています。そのかいがあってか、学校での「さようなら」の時は、(まだ初語には至っていませんが)先生に向かって頭を下げられるようになりました。
 しかし、このままの指導で良いのか、時が来ればしゃべるようになってくれるのか、と不安がつのります。
 このような中で、親としてはどのように関わっていけばよいのでしょうか。また、ことばを引き出すための具体的な方法はあるのでしょうか? どうぞアドバイスをお願いします。

A5

■お手紙拝見いたしました。私は「ことば」の専門家ではありませんので、「ことば」を出すのに必要な機能に問題があるのかどうかはわかりません。その点は専門の方に診て頂く必要があるのかもしれませんが、今まで、なかなか言葉を話せなかった子達と歩いてきた経験の中で、日常的な働きかけで配慮している点について書いてみようと思います。

 当然のことですが、"ことば"は人とわかり合うための手段ですね。ですからまず、相手が自分に向かって何を伝えようとしているのか、相手の言葉に対して耳を傾け、理解しようとする意識、相手に理解してもらおう、自分の思いを伝えたい、と思う意識が育っていなければならない、ということになります。
 大部分の人は、そういう働きをする脳の分野に障害を受けていないので、「オギャー」と生まれた時から(ひょっとするとそれ以前から)、その機能を働かせて情報を取りこみ、言葉に馴じみ、人とやりとりをする手段として"言葉を使う"ようになってきました。
 お嬢さんは、「重度の自閉症」と診断されているということですから、この機能の働きが弱かったのでしょう。でも、「だから仕方ないんだ」と周囲の人があきらめてしまったら、いつまでたっても"言葉で伝え合う"ようにはならないでしょう。どの程度話せるようになるのかは、お嬢さん自信の取りこむ力にかかっていますから、予測することはできませんけれど、お嬢さんの取りこむ力を信じて、関わる大人、特にお母さんは、「言葉を使う機会」を沢山用意してあげる工夫はできます。

 療育センターの先生に、お嬢さんについて「能力的には高いけれど、マイペースで彼女自身が"言葉を必要とする」ように、日常の働きかけを変えていければいいのです。彼女のマイペースを、どれだけ崩してあげることができるか、がカギになると思います。
 彼女のマイペースの行動に、「その方が面倒ではないから」と周囲が応じている限り、彼女はわかり合う対象としての「人」を意識する必要を感じないでしょうし、自分の思いを伝えなければ、自分の要求はわかってもらえない、という経験もできません。人は経験を通して学ぶのですから。
 お嬢さんは、「小学校」という集団に入って、かなり成長されたのではありませんか。先生方も熱心に働きかけて下さっているようですし、そこには、彼女が得意とする"マイペース"を許さない「集団のルール」がありますから、彼女もそのルールに"従う"経験をいろいろな場でして、「人や状況を自分に合わせる」のではなく、「人や状況に自分を合わせる」ことを学んでいるのだと思います。

 嫌なことを「イヤ!」と言えるのですから、話せるようになる可能性は大きいと思います。手振り身振りを入れての働きかけですが、それに応じているのですから、人とコミュニケーションをはかろうとする意識は芽生えてきているのですね。先生の「さようなら」の言葉に応じて、おじぎをするのも嬉しい成長です。
 現在おうちで、弟さんがお母さんと話をしようとすると、怒って押し倒したりする、ということの原因は、"ことば"だけのことではないのかもしれませんが、自分が使えない手段を、弟さんが使っていることへのいらだちもあるのかもしれません。
 これからも、身振り手振りを活用しながら働きかけていくわけですが、必ずそれにはっきりとした言葉を添えていくことが大事です。要求を満たそうとする時、人に訴えるよりは、直接行動でやろうとする状態だと思いますが、その機会を逃がさないで、その対象と彼女との間に入って、「何が欲しいの?」などときいて、「人に訴える」経験をさせてあげてください。お母さんが示したルール(「○○をしてからね」とか「今は××をします」など)は、必ず守らせることも大事です。

 2音くらいの名詞は、お母さんのマネをしていわせるのもいいと思います。が、焦りは禁物です。マネようとする態度が見えればいいのです。「そうね、アメね」なんて認めてあげればいいのです。お母さんの示したルールに応じた時、しっかり誉めてあげて下さい。
 6年生頃から話せるようになった子もいます。お嬢さんの力を信じて、焦らずに、しかし一貫した態度で根気よく、関わってあげて下さい。

相談員:石井 葉(発達協会)保育士


Q4

■私の娘のことでご相談したく、ペンをとりました。娘は今春小学校1年生になりました。彼女はとても臆病なところがあり、幼稚園の時も、何か行事のあるたびにお腹が痛くなったり、熱が出たり、ぐずったりしていました。
 乳児期に大病をわずらったり、ことばがなかなか出なかったり、運動発達も遅かったりしたせいもあり、両親ともに過保護に育ててきてしまったように思いますが、それも影響しているのでしょうか。
 これから小学校生活が始まり、新しいことの連続で、娘も緊張が続くと思いますが、家ではどのように関わっていけばいいでしょうか。また、学校の先生には、注意してみてもらうよう伝えておいたほうが良いのでしょうか。

A4

■ 我が子が真新しいランドセルを背負って初めて小学校の門をくぐる時は、子どもよりも親のほうが緊張しますね。赤ちゃんの時大病をわずらってようやくここまで来たあなたの娘さんの場合は、大切に育ててきた分ご両親の感慨はどんなに深いことかと思います。そしてこれから始まる新しい生活に不安と期待で胸を震わせているのでしょうね。

 しかし当の本人にしてみると、幼稚園の行事も学校生活も緊張することが沢山あって、そこから受けるプレッシャーは家で大切にされている人ほど大きいようで、腹痛や発熱といった身体的反応を示す場合も出てきます。一般的に言って、過保護な家庭では子どもが自分からやり出す前に大人が何でも至れり尽くせりに世話をしてあげるので、本人はしてもらうことに慣れてしまいます。ところが家以外の所では自分でしなければならないことや頑張らなければならないことが次々と出てきますし、特に経験の無いことは自身が持てなくて、家と外のギャップの大きさに一層緊張が高まりそこから逃げ出したくなるのですね。
 親御さんにしてみれば、娘さんは大病のせいで言葉も運動発達も遅くなったのだから可哀そうだ、身の回りのことも手伝ってやり周りが判ってやらなければと、気付かないうちに過保護になってしまったのではないかと思います。その結果、本人は自信が持てず臆病で緊張の強い子になったのでしょう。
 親の翼の下で暮らしてきた子どもが徐々に巣立ちを目指していくにはどうすれば良いか、娘さんが楽しい学校生活を送れるようにするには? を考える為に、今までの生活を見直してみましょう。

 娘さんは家族の中でどんな位置に置かれていますか? 「まだ小さいから」「うまくできない子だから代わりにやってあげなければ」「泣くから仕方ない」と"おまめ"にしていないでしょうか? 世話され受け身で当然と、本人もご家族も思い込んでいませんか?
考えてみると、娘さんは6歳です。手伝い無しでも身の回りのことを自分でやりとげられることが出てくる年齢です。子どもが衣類を脱ぎ落としながら歩く後からお母さんが拾って行くという話を聞くことがあります。先回りや余分な助けをしている結果、落とし物・忘れ物の多い、注意力・集中力の弱い子が育てられてしまうのです。靴を出してやる、履かしてやる、次の日の時間割を揃えてやる、ハンカチやティッシュをポケットに入れてやる、「早く起きなさい」「顔を洗いなさい」と細かく世話を焼く等々…。これでは言われないと何もしようとしない周りを頼る人になって当然ですね。
 自信のない子には家のなかのお手伝いに挑戦させるのも良いでしょう。例えばテーブルを拭く・食べ終わった食器を流しに運ぶなど。初めは手を添えてやり方を具体的に丁寧に教えてあげます(徐々に彼女に任せる方向で)。買い物にも連れ出してかごを持つ、お母さんに言われたものを取らせる等、実際にやってみて「出来た」という経験が積み重ねられると自分のすることに自信が持てるようになり、もっといろいろな事にも挑戦してみようという意欲が湧いてきます。また、お手伝いを褒められることで"信頼されている"と自信が強められます。
 山歩きのようなハイキングやきちんとプログラムされた運動からは努力・協力・忍耐力などが育てられます。
ちょっとやってみても出来ないと「やっぱりこの子には無理だ」とあっさりさじを投げてしまいがちですが、出来るようになるまで辛抱強く続けていくと、必ず出来るようになるもの。便のおもらしがあった子を、毎朝トイレに座らせて排便を促し続けて5年余り経った時、失敗なしでトイレで排便が出来るようになったという例もあります。本人の力を信じて働きかけ続けたお母さんのおかげです。

 次に、学校生活について考えてみましょう。学校の先生にいきなり子どもを注意して見てほしいと頼む前に、やるべきことがあります。まず第一に娘さんの様子を注意深く観察します。
* 登校時、下校時、帰宅後は?
* 平日と休み明けの違いは?
* 友だちとの関係、遊び方は?
* 学校のことを話すか?
* 授業参観の時の様子、学習内容の理解は?興味を持って参加しているか?

第三は、家の人が、可能な限りPTAの活動に参加します。学校に行く機会を増やし、担任だけでなく他の先生方とも話す場ができます。
このような事をした上で心配なことがあれば、先生に質問や相談をすると良いと思います。
お母さんが考えているより案外娘さんは逞しい力を持っているのではないでしょうか?お母さんが思い切って子離れをする時です。子どもさんと一緒になってハラハラドキドキ過緊張にならないで、でーんと構えて腰を据えて! お母さんが自信を持って娘さんの背中を押してあげてください。

相談員:神田 武子(発達協会)保育士


Q3

■私の息子は現在12歳、小学校6年生です。彼には中度の発達遅滞がありますが、普通学級に在籍しています。
 最近、3歳違いの妹が、兄のことで学校でからかわれているようなのです。彼女自身、「どうしてお兄ちゃんは〜ができないの?」などと私に聞いてくるようになってきました。また、兄のことを馬鹿にするようなことを言ったりもします。
 このような時、親としてどのように説明したら良いのでしょうか?
 私はいつまでも、あやふやな説明をするのは良くないと思いながらも、時期が早いのではないか、妹に負担がかかるのではないか、などと思い、ふんぎりがつかないで悩んでいます。

A3

■私が28年前から関わっている障害児地域訓練会「さくらんぼ会」の会報の特集「兄弟姉妹」の中に、成人して社会人になった兄弟姉妹が、いくつか原稿を寄せてくれていますが、その中に、あるお姉さんが書いた「妹と私」という文章があります。
『「こいつボケてる」近所の男の子たちに妹のことをこう言われ、悔しくて、悲しくて、憤慨して家に帰ったのは何年前のことだろうか。あの時、憤慨している私に「そういうことを言う人の方が、人の気持ちのわからない可哀想な人なんだから、あの人は可哀想な人なんだと思っていればいいのよ」と母は言った。(中略)正直"もし妹が障害を持っていなかったら…"と思うことはあった。"どうしてこんなことも一人でできないの"とイライラすることもあった。(中略)
妹は二十歳の誕生日を迎えた。20年間、私も妹と一緒に様々なことを経験し、感じ考え、成長してきたのだ。そして今妹のことをこうやって思う私がいるのは、自然に、隠すことなく妹のことを伝えてくれた両親のおかげだと思っています。』
この姉も書いていますが、親の毅然とした態度と確かな考えに支えられて、多くの兄弟姉妹は様々な困難や試練を越えて、たくましく育っていくことを実感しています。
様々な障害を背負っていても、一生懸命生きている同胞たち。それを援助し、懸命に日々の生活をおくり続けている両親の姿。その中で兄弟姉妹たちは確かなものを見て、どう生きることが大切か学んでいくのだと思います。
ではここで、兄弟姉妹が同胞を受け入れ、ともに育っていくために何が大切か、3点述べてみます。

1.親が確かな価値観を持つこと
障害があったり、遅れがあることを困ったことと思うことなく、様々な障害があっても、一生懸命生きていくことの大切さを子どもたちに伝え続ける親でありたいものです。
 また、障害があってもなくても、子どもにとって大切なことは兄弟たちにも根気よく知らせ、生活指導はきちんをしていきましょう。
 障害を持っている子には、生活の中でリズムをつけ、わがままは許さず、食事、着替え、など様々な生活の手立てを丁寧に教えていくことができるのに、兄弟姉妹たちは、なんでも当たり前にいつの間にかできてしまうこともあって、褒めもせず、さぼっても見逃してしまいがちになります。
 兄弟姉妹は一緒に育ち合うことを忘れないことです。

2.障害のことをよく知ること・深く知ることはよく理解すること
 私たちは子どもたちの行動や困っていることを正しく理解できないために、非難したり馬鹿にしがちです。子どもたちにも、正しく障害のことを理解してほしいと思います。
 大人でもなかなか理解しがたいのですから、兄弟姉妹たちに正しく理解させるのはなかなか大変です。
 「そういう理解を促すような本があったらいいナ」と思っていましたら、偕成社から「バリアフリーの本」(*)というのが出版されました。子ども向けにやさしくまとめてあり、兄弟や友だちたちにもわかりやすく、理解が深められると思います。そして、どれも明るいタッチで、写真が素敵で読みやすい本です。1から10までのシリーズで視力・聴力・肢体不自由・知的障害・重複障害についてわかりやすく解説されています。子どもたちにも読みやすいように、漢字にはルビもふってありますので、障害のことを正しく理解するにはよいと思います。
 そして、障害のことは、他人ごとではなく私たちみんなの問題であると、しっかりした考えで書かれてあることが、兄弟姉妹たちを励まし、力づけてくれると思います。

3.必ず兄弟姉妹たちは良き理解者になると信じて育てる。その力の大きさに気づくでしょう。
 「お兄ちゃんなんかいないほうがいい!」「恥ずかしくて友だちを家に呼べない!」などと親を悲しませていた子たちが、親の確かな関わりと障害を持っている子の真摯な生き方の中で学び、「お兄ちゃんはしっかり働いている」「妹は他人にとてもやさしい!」「私たちも頑張ろう」と気持ちを育てていくのです。
 そこまでの道は険しく、親も子も様々な試練や辛さもありますが、子どもたちは、しっかり成長していくことを、多くの兄弟たちから知りました。
 貴女も娘さんと息子さんに、しっかりと思いを伝え、必ず確かな育ちをしていくと信じて、日々の生活を過ごされるといいと思います。
 人間にとって大切なことを、この子たちは示唆し、それを兄弟姉妹たちは確かな糧にして自己実現をしていきます。日々の生活を大切にお子さん達と前進していってください。


相談員:辻 滋子(発達協会)保育士


(*)バリアフリーの本 「障害」のある子も"みんないっしょに"
 シリーズは、ホームページから注文することもできます。
 くわしい内容はこちらから。

   7.「知的障害のある子といっしょに」
   8.「重い障害のある子といっしょに」
   10.「障害ってなんだろう?」ほか
偕成社(本体価格 2500円)

 
Q2

■息子は小学校5年生で心障学級に入っています。自閉的で知的な遅れがあります。小さい頃は多動で偏食があり、少しのことでパニックになったり、身の回りの始末などもなかなか難しく大変でした。子どもに良いと言われたことは、親子で一生懸命やり、ひと通りの身の回りのこともできるようになり、家でも学校でも安定した日々を過ごしております。
 気になることは、人とのやりとりが苦手なこと、学校でも自由な時間が困るようで、校庭の周りをただひたすら、早足でくるくると回っていることが多いようです。家でも困ることはないようですが、ただ、言わないと動けず、ひとりにしておくとごろごろしていることが多く、私が居ないと、何をしていいのか判らないようです。来年は中学生になりますので、受け身で幼さが残る息子のことが気になり出しています。生活の中で、どんな関わりをしていけばいいでしょうか?

A2

■問題を克服して、今は安定した日々を過ごされている様子、なによりです。でも今のままでは、少し将来が心配です。
 幼い時が大変でしたので、貴女も懸命に子どもと向き合い、いろいろできることも増やし、今の安定した日があるのでしょうが、気がついてみるといつの間にか、受け身で、自分で考えて生活する力がそがれ、自発性がない子になってしまったのでしょう。自閉的な人は、受け身になりやすく、子育ての中で、そうならないための配慮が必要です。
 まず、生活全体を見直して、彼自身が自分で考えて、生活できるような手だてを工夫されることです。
 まず、朝、起きる時から、前の日に自分で時計をセットしておいて、ひとりで起きる習慣をつけることから始めましょう。着替え、洗顔など生活習慣も声かけではなく、自分で考えて進められるようにしたいものです。
 王子様の食事の様に上げ膳、据え膳で、子どもはただ、食べるだけ、朝食は母親が用意し、パンにバターまでぬってあげ、「朝は忙しいから…」これでは自立できません。
 まず、日々のプログラムを子どもと一緒につくって、それにそって生活を子どもが自分でしていかれるようにしていきましょう。
 子どもによっては、文字で書いたものが、理解できないことがありますが、写真や絵カードをならべて冷蔵庫の前などにとめ、ひとつプログラムが済んだら裏返していくなりして、自分で見て考えて生活をしていくよう工夫して、大人が声かけしたり、促すことを減らしていかれるといいと思います。はじめは親子で戸惑い、声かけや命令がしたくなります。でも、子どもたちは、いつまでも立ち止まってはいられません。根気よく関われば、必ず、自分で考えて行動していきます。
 あるグループホームの寮母さんが「この人は一般就労しているのですが、朝起こすことから、下着の洗濯まで、いちいち命令しないと自分では何もしないのです。今まで年取った母親が何から何までやっていたようですが、病気で倒れたので入所したのです。能力はあるのに、自立に向けての育て方ができていなかったようで、今、苦労しています。」
 この子たちは、そう遠くない将来、家庭から離れ、自分で生活を切り開き、生きていくことを心に留めながら、自立にむけて、根気よい関わりをしていくことが大切です。
 貴女のお子さんも言われれば、いろいろやれる力があるのですから、これからは自分で考えて動くことにポイントを切り替える時期が来たと認識を新たにして、育てていかれることが大切に思います。
 次に、身の回りの始末や生活の手だて、社会性を見直して見ましょう。
 手を洗う、顔を洗う、身だしなみを整える、食事をするなど何となくもうできていると考えがちですが、中高生たちの様子を見ますと、雑で形だけ、おざなりにやっている子が多いものです。また何処へ行くにも親が付き、買い物ひとつできない青年もいます。家庭や社会であたりまえに暮らせるように、年齢に合わせて身につけておきたいものです。
 貴女も息子さんの日常生活を見直して、いい加減なやり方をしているようでしたら、丁寧に付き合ってきちんとできるようにしておかれるといいですね。特にマナーになると、完全にできるまでは気を抜かずに練習が必要です。
 生活していく上でどんなことが必要か、見落としがないか、目安になるものが欲しいと思い「発達協会」では、療育に携わる職員たちが「くらしの中での指導書」をつくりました。(多くの方々のアンケートなどの協力で、様々な検討をして、幼児から学童・青年・成人までの、暮らしの中での手だて・進め方などを網羅してあります。)
 療育に来ている子の親に渡して、年一回、チェックをしていきます。あせらず、確実にひとつひとつ生活の手だてを身につけられるよう、子どもと親たちは努力しています。
 これからは今まで以上に、この子たちは地域の中で働き、暮らしていくことでしょう。自力で暮らしていく手だてをより多く身につけて、愉快な生活が送れますように、貴女も息子さんと生活を見直されると良いと思います。

相談員:辻 滋子(発達協会)保育士

 
Q1
私は、小学校の臨時採用で教員をやっています。現在、15名の1年生を受け持っていますが、そのうちの一人の子どものことでご相談したく、お手紙を書かせていただきました。

 15名の1年生全員が、入学当初から自分の名前だけは、書くことができました。2学期を終えた今では、M君を除いて、ひらがな、カタカナのほとんどを書くことができるようになりました。ただ、M君だけが、ひらがなを完全に読むことができず、当然書くこともできません。文字を自分で読むのはとても時間がかかったり、泣いたりしてぐずってしまうのですが、本を読んでもらうことは好きになってきて、読める文字は少しずつ増えてきています。
 また、算数でも、60くらいまで数えることはできるのですが、5は2といくつでできているか、といった問題などでは、そばに私がついてゆっくり説明すればやれるのですが、そうでないと問題をおいてさっさとどこかへ行ってしまいます。

 それから、友達とも関係についても、M君が友達をつついたりするので、(M君はこういう手段で人と関わろうとするだけで、悪気があるわけではないのですが)友達は、叩かれたと言い張ってもめてしまいます。叩かれた、と主張する子には、「M君は本気でやったんじゃないよ」と説明し、M君にも友達の名前を呼ぶように言うのですが、なかなか変わりません。いつもクラスのトラブルの種になってしまいます。

 M君は、祖父母も同居している大家族の中で、しかも末っ子で大変可愛がられて育ちました。けれども、そのせいか幼いところも多く、私はM君には小学校に入るまでの発達段階の中に、何か未熟なところがあったような気がしています。文字や数を覚えられないのも、その辺との関係があるのではないかと思うのですが、ご両親は、文字や算数を覚えないのは学校の指導が悪いからだと思っているようですし、専門機関へ相談しようなどとはまったく考えていらっしゃらないようです。もちろん私の指導の未熟さもあると思いますが、M君にやる気をおこさせ、クラスの中でも落ち着いていられるためにはどうすればいいのか、よいアドバイスをお願いいたします。

A1

■先生が感じていらっしゃるM君の未熟さという点について、家庭環境の中で作られてきた部分も大きいのではないかと思います。けれども、家庭環境や親ごさんの意識の問題は、第三者が割り込むことはできず、家族を構成している大人が努力しよう、と考えていかなければ解決できないことです。

 そこで、学校でのM君へのかかわりの中だけで問題を考えていくことにしましょう。
 まず、学習面のことですが、まわりが何とか「わかる」ようにさせたい、と躍起になればなるほど、彼の拒否反応は強くなるばかりでしょうね。「うわぁまた、字?数?」と思っただけでバリアをはってしまうのではないか、という気がします。文字って楽しいな、というように思わせていかないと、この拒否反応は取れないのではないかと思います。絵本を読んでもらうのが好きなようですから、しばらくはたっぷり読みきかせをしてあげたらどうでしょうか。「文字を書かされる」というプレッシャーから一度開放してあげる必要があるように思います。本を自分で読みたい、という意欲が生まれてくるまでは、「覚えさせなくては」「書かせなくては」という意識をちょっとお預けにしてみたらどうでしょう。
 そして、もし文字を書くならば、「あいうえお」を一字一字かくなんて、面白くも何ともないでしょうし、それだけで逃げ出したくなるでしょうから、簡単な絵日記とか一日一行日記などを、M君に書きたいことを言わせて、先生と一緒に書いていく、というようにした方がよいのではないかと思います。毎日その日の学校でのことを一つ書く、そうしたら終わりで帰っていい、という約束にして先生が手を添えて書いてもいいし、とにかく書きあげて「がんばったね」「約束守れたね」としっかり評価してあげるようにしたら、少しは見通しがでてくるのではないかという気がします。
 
  また、友達との関係についてですが、M君にある幼さのために、先生が特別扱いをしていらっしゃるのではありませんか。
 彼が呼びかけずにいきなり友達の頭を叩いたりするのは失礼なことですし、叩かれた友達が怒るのは当たり前のことです。そのときに、M君のことを本気でやったんじゃないんだから、と弁護してやる先生の意識の中には、彼に対して「わからない子なんだから」という見方があるのではないかと思いますが、いかがでしょう。M君には人を叩いたらいけない、と言い聞かせるとのことですが、その言い聞かせは怒っている子の手前「平等に」しているという形式を整えるための言い聞かせで、絶対にやめさせよう、という姿勢での注意ではないのはありませんか。

 こういうM君の人への関わり方は、彼をますます孤立させることになりますし、彼自身、自分が対等に扱われていないことを感じさせられる場面になっていくでしょう。対等に扱われていない寂しさを経験するけれど一方では、こうして許される気楽さもありますから、それが幼さとして残っていくことにもなります。

 彼が自分に自信がもてるようになるためには、彼にとってもちょっとしんどいなと思うことを要求し、それを乗り越えられるように援助し、彼のなかで「やったー」という充実感をもてるように、その努力を評価してやることだと思います。『がんばれば僕だってできるんだ』と思う経験をさせていく、題材は何でもいいのですが、そういう工夫が大事だと思います。

相談員:石井 葉(発達協会)保育士