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Q10

 中学1年生になる息子のことでご相談します。
 息子は知的障害があり、IQ68くらいです。アニメが大好きで、幼児番組などを好んで見ています。そんな中、番組が盛り上がってくると、そわそわ落ち着かなくなります。いつの間にか立ち上がり、感情を抑えきれなくなると、家中を走り回る始末です。たまには、「もう聞きたくない!」と言って、耳をふさいでいる時がありますが、本当に聞きたくないわけではないようです。以前、感情を無理に抑えることはないと言われたことがあるのですが、ずっとこの調子なので気になります。どう対処すればよいでしょうか?

A10

■  お手紙ありがとうございました。
 さて、まず感情の問題をどう扱うかについては、いろいろな考え方があるように思います。どなたかに言われたように、感情を無理に抑えつけることはない、というのは、まさにその通りだと思います。私たちは、さまざまな行動を起こしますが、感情は多くの行動の原動力になるものです。息子さんの場合も、アニメのテレビを見て、何かの感情がわきおこり、なんとも言えず、座っていられなくさせられ、走り回るという行動がうまれるわけです。これは、何も感じないで、ただ見ているだけよりはずっと、ずっと意味のあることと言えます。
 また、嬉しい時に思わずガッツポーズをするとか、すごく緊張したりすれば体がガクガクとふるえてしまうなど、感情と身体は切っても切り離せない関係にあるようです。ただ、年齢が小さければ興奮して走り回ることなども許容範囲と思われますが、年齢が高くなるとそうは言ってもいられません。
 感情を表すことは大切で、意味のあることですが、生活や年齢を考えて、不自然と思えることは、適切な表し方に変えていけるとよいですね。
 ここでは、感情の発達も紹介しながら、どのように抑えることを教えていくか、一緒に考えてみたいと思います。

●感情表現の発達
 感情の基本となるものは、うまれて数ヶ月の赤ちゃんの頃から育っていくと言われています。赤ちゃんは、生後2、3ヶ月もすると快か不快か、ということをはっきり感じるようになり、不快であれば泣く、という行動で感情を表します。それに対して、大人はおしめをかえるなど、不快なものを取り除くことや、揺する、歌を歌うなどの関わりをして、感情をなだめ、おさめることを教えていきます。自分の身体を思い通りに動かせないような時期から、人からの関わりによって、自分の気分を変えることを学びます。
 だんだん、身体が動くようになってくると、泣き方も激しくなってきたり、ひっくり返って泣いてみせたりするようになります。身体全身を使って、自分の感情を表します。一方で、嬉しい、大好き、と思っても、それをすぐに抱きつくといったストレートな表し方ではなく、近づかずに照れたような表情をしてみせるだけになるなど、身体全身で表さなくなることで、少し高度とも言える感情を、別の形で表すことを覚えてもいきます。
 また、2歳近くになれば、ことばで表現できるようにもなるので、泣くだけではなく、「やあだ」とか「やなの」といったことばによって自分のやりたくない、という気持ちを表現します。また、この時期には、ことばが爆発的に増えると言われていますが、ママ、パパ、ブーブ、アイスなどのものの名称といったことばが増えるだけではなく、「ぅわっ(びっくりした)」とか「すずしぃー」「こわーい」「こわくなーい」「だいじょうぶ」「こぼしちゃった」などのような、自分のやったことや、自分の感じた状態を表すことばが増えていく時期でもあります。
 基本的にこの時期に、自分の状態を表すことばをどう学んでいくのかについては、おそらく、そういう行動をした時や感じた時に、まわりの大人がそれにあったことばをかけ、一緒に体験することで学んでいくものだろうと思います。

●感情をコントロールする
 
本人が感じている感情について、感じてしまうものは仕方ないわけですが、問題はどう表すか、ということになります。感情はことばで表すことによって、コントロールされる、という面があります。また、ことばに出した時に気持ちがすっきりする、という効果もあります。息子さんの場合、アニメの番組はきっと見たいものなのでしょうから、見たいのならば、まず、一定の場所に座ってみる、とか、そこから動かずに見ることにしよう、と約束をします。そのほうがかっこいいよ、とか中学生らしいよ、などの話し合いのもとに約束をします。もし、動いてしまったら、消すことにしようね、という約束も必要かもしれませんね。その上で、お母さんも一緒にそのアニメを見て、お子さんがソワソワしてきたら、「怖くなってきたねぇ」とか「どきどきだねぇ」などのお子さんの感情をことばで伝えるようにします。自分の感情にぴったりくるようなことばを自分のものにできると、おそらく、激しい行動は減ってくるでしょう。
 また、このテレビ番組の場面に限らず、さまざまな感情を体験した時、それにあったことばをまわりの大人が意識的に声をかけるようにして、自分の感情とそれを表すことばがあることを伝えていきましょう。そうした関わりは、感情をことばで表現することを助ける練習になると思います。


相談員:一松 麻実子(発達協会)言語聴覚士・社会福祉士




■思春期と反抗期が重なりますが、善悪の判断や人との協調性、自律性などを今後どのようにつけさせていったらよいでしょうか。



■「自分で決めていいこと」と「大人が決めること」を区別して教えたり許される範囲をはっきりさせ、適切に判断する力・自己管理する力を育てましょう。
子ども達は思春期から始まる反抗期を迎えると、親や先生の言うことに一つ一つ反発を感じてイライラするようになります。「僕(私)のやることに口出ししないでほしい」という態度で、大人が頭ごなしに指示すると猛反発します。ところが、あんまり反発するので「どうしたらよいと思う?」と聞くと、案外答えられず、「言うとおりにすればいいんだろ!」と捨てぜりふを吐いたりします。大人に指示されるのは嫌だけど自分で判断する力は育っていないのでしょう。また、反対に何でも自分の思い通りに決めていこうとする子もいます。
 子どもが自分で適切に判断する力をつけるためには、「自分で決めていいこと」と「大人が決めること」を区別して教える必要があります。特に、社会の約束事とも言える場所や時間、お金等に関連することについては、大人が決定し守らせていきましょう。例えばお金について言えば、お小遣いの金額は(多少の交渉の余地はあると思いますが)大人が決めるようにします。その範囲内なら好きなものを買っても良いことにしますが、無計画に使ってそれ以上ほしがっても、子どもの言うままにあげてはいけません。他にも、「帰宅時間を守る」「行き先を告げてから出かける」など、許される範囲をはっきりさせましょう。
 同時に自己管理する力を育てることも大切です。先ほどのお小遣いの例でいえば、計画的に使うためにお小遣い帳のつけ方を教えていきます。「自分の衣類を選ぶ」「持ち物を準備する」「時間に合わせて行動する」なども任せていきましょう。大人が手取り足取り教えるのではなく、時には失敗させることも必要です。失敗の中から、自分で考えたり責任を感じたりといったことを学んでいくと思います。
 もう一つ重要なのは、お手伝いを家庭での役割として任せていくことです。「自分は頼りにされている存在だ」という誇りが、不安定な思春期を乗り越えていく支えになると思います。

相談員:小倉 尚子(発達協会)言語聴覚士

  
Q8 

■義務教育終了後、行き先があるのか、どこにも行けず「在宅」になってしまうのではないか、と不安です。将来どのような選択肢があるのでしょうか。

A8

■地域によって、差があるようですが、考えられる選択肢はいくつかあります。一般就労、福祉工場・通所授産施設・通所更生施設・小規模作業所などでしょう。親御さんたちが協力して作業所を作ったところもあります。
 今、大切なことは、できることを少しずつ増やしお子さんが選べる選択肢を広げることです。手を使う仕事が多くなりますから、家事仕事などは良い練習になります。和菓子の工場へ青年たちと実習に行ったときに、きちんと手が洗えるか、テーブルをきれいに拭くことができているか、お茶をいれることができるかなど、本当に基本的なことを指摘されました。さらに、梅ゼリーに小梅を2個入れる仕事だったのですが片手でやっていたら、両手でやるようにと指摘され、とても勉強になりました。また、ようかんを包丁で均等に切る仕事や、カップにゼリーを注ぐ仕事など家事仕事をきちんと行っている人ならば誰でもできそうな仕事でした。また、使った道具をきれいに片づけることができることも必要です。家庭において、食器を洗うお手伝いを任されているお子さんは、得意な分野になることでしょう。
 校外実習を通していろいろな仕事を経験するのもよいですし、実習先を親御さん自身が探してこられることもあります。実習を経験された方や、実際に作業所で働いている青年たちに仕事内容を聞いてみると、様々な仕事があることに驚かされます。ボールペンの組み立て、ダイレクトメールの封入、宛名貼り、縫いあがった靴下を表にひっくり返す、タオルをたたむ、ギフト用の箱を組み立てる、ガソリンスタンドから依頼され景品用に段ボールにジャガイモを入れる仕事などなど。普段、何気なく手に取って見ている品物が、彼らの仕事になっている物もたくさんあります。
 不景気な時代、先が読めない不安もありますが、「お子さんの力をつけておくことがまず第一歩」です。着実に力をつけていきましょう。

相談員:井上智佳(発達協会)言語聴覚士

  
Q7 

■自分の性格や能力等にも関心を持ち出す思春期、何かに取り組んでも「どうせ自分はやってもできない」とネガティブになる子がいます。自信をつけさせるにはどうすればよいでしょうか。

A7

■「口の手術をしたい」と、ある男の子が言いました。彼は中学1年生です。手術をすればみんなと同じように上手に話しができるようになると考えたようです。自分の能力を周囲の友だちと比べてみて「何かが違う」と感じ始めています。まじめなお子さんに多いのですが、思春期にはかなり悩むようです。けれども、「みんな違っていていい」「僕は家族の中で役割がある」「みんなから認められる存在だ」ということが、小さい頃からプラスイメージとしてあるお子さんは、何とか乗り越えられます。
 また、進路を考えるにあたっても(途中で移る場合においても)、勝手に決めたり(変えたり)ではなく、お子さんときちんと話し合いをすることが必要です。時には、説得することも必要になるかもしれません。しかし、自分の大事な将来の話ですから、本人をないがしろにするのは、ネガティブになる原因を生み出します。
 自信をつけるためには、「役割を果たす」ことが大切です。そのためには、そのための場を設定すること、成功経験を増やしていくことが必要になります。一生懸命料理を作った時に「おいしくできた!」また、『おいしい』と皆から誉められたときには、今度も作ってみよう、新しい料理にもチャレンジしてみようと思いますね。
 逆に失敗が多く、文句ばかり言われるとやる気もなくなります。まずは、成功経験を増やすことが自信につながります。また、やる前から諦めてしまう場合、経験不足からくる不安から後ろ向きになっている事があります。やり方を教えて励まし、成功に導いていくと「案外できるものだ」と次にチャレンジするときのステップになります。
 一方で、どうやっても勝てない、できない事も世の中にはあります。マルかバツの判断だけでなくサンカクも存在する事を学ばせていきましょう。努力を称えることも必要でしょう。学校などで役割が果たせない場合、他の場での役割を与えることが必要になります。家庭において、家事仕事をすることで家族から感謝され、誉められることが心の支えになっているお子さんもいます。

相談員:井上智佳(発達協会)言語聴覚士

  
Q6 

■ほかの子と違う行動などがいじめの対象になったり、友達から都合よく利用されてしまうのではないかと心配しています。どのような点に気をつけさせればいいでしょうか。
A6

■ほかの子と違う行動をする子に対して、子どもたちの対応は年齢によって違いを見せます。干渉のしすぎが、子どもどうしの関係を壊すこともあり、過干渉に注意しながら慎重に行動したいものです。

ほかの子と違う行動をする子に対して、子どもたちの対応は年齢によって違いを見せます。小学校低学年では、違う子に対して、自分たちと同じにさせたいとの「同調圧力」が働きます。小学校高学年では、グループを作り目的に向かってみんなで挑戦します。このときに、グループ内で一定の役割を果たせないと非難されます。中学生になると、上下関係が明確になります。「パシリ」「タカリ」などは、この関係から生まれます。
同調圧力、グループ活動、上下関係の明確化など、年齢によって「いじめ」や「利用されること」の背景が違い、対応は相応に変える必要があります。原則的には、小学生段階では大人が子ども同士の関係を調整する必要があります。
中学生以降では、子ども自身が自分のことを話さなくなることが多く、周囲との関係がわかりにくくなります。このために、ときには学校の先生など周囲の人たちに様子を聞いたり、支援を求めることもありえます。ただ、大人には「いじめられている」「利用されている」ように思えても、本人も含め子ども同士ではそう感じていないことも多いものです。干渉のしすぎが、子どもどうしの関係を壊すこともあり、過干渉に注意しながら慎重に行動したいものです。

相談員:湯汲英史(発達協会)言語聴覚士

  
Q5 

■自分の身体の変化への戸惑いはわかりますが、人前で性器を触ったり時や場所を考えずに性的な言葉を口にしてしまうのは困ります。どう説明していけばいいのでしょうか。
A5

■他の社会生活技能と同様に、わかりやすく繰り返し教えていくことが必要です。

一般に性に関することは、あからさまに指導しないで、アンダーグラウンドに伝えられていくことが多いのですが、ハンディのある子にとっては、わかりにくいことです。他の社会生活技能と同様に、わかりやすく繰り返し教えていくことが必要です。
人前で性器に触れたり性的なことを言うことは、社会的に許されないことなので禁止しなくてはなりませんが、この子達は、恥ずかしいという気持ちを持ちにくいので大変です。この恥ずかしいという気持ちは、生まれながらに持っているものではなく、経験を通して身につきます。
例えば、人前で着替えたり、お尻を出したりするたびに、『恥ずかしい』という言葉と同時に個室に連れて行かれ、着替えさせられることが繰り返されると、『恥ずかしい』という言葉かけと同時に着替えを止めたり、あらかじめ着替えてもよい場所を探して着替えるようになります。他人を意識していないようでも、その都度恥ずかしくない振る舞いを教えていくことで、パターンとして恥ずかしい行動をとらなくなります。たとえ家の中でも、平然と裸になったりすることは厳禁です。人前で性器を触ってしまう行動は、これで止められます。
しかし、性的な言葉をわざと言っている場合は、これで人の気を引く面がありますので、まわりの人が騒いだり叱ったりと反応すると、ますます口にすることがあります。この場合は、子どもが期待しているのとは違う反応(無視、仲間はずれなど)をすると、言わなくなります。ただし、性衝動については、禁止するだけではなく、『人前ではだめだが、トイレで一人の時は良い』など、許される範囲で行うことも教える必要があります。

相談員:倉持親優(発達協会)社会福祉士

  
Q4

異性に対する興味や性欲が出てきますが、男の子の場合、父親が性的な衝動の抑え方などを教えるのがよいのでしょうか。運動などで気を紛らわせたりできるのでしょうか。

A4−1.

■個人差の大きな性について教える時期は、自然に逆らわず本人の気づきの時期を待っても決して遅くはありません。

 好きな人について顔を赤らめながら話をする。性に関することには、恥ずかしそうにしながら興味を示すなど、思春期の到来とともに、多くの子どもたちがその時期特有の姿を見せ出します。性についての知識を教えていくべき時がやってきたといえます。
 
 ただここで注意したいのは、思春期の男子の場合、イライラしやすい、ひとに乱暴するなどの理由を、安易に「性的欲求」と結びつけてしまうことです。まわりの、自分への対応が不満という場合もあります。エネルギーの満ちる思春期だから、行動がやや過剰になったりもします。人を求めるゆえに、エネルギーが人に向かうこともあります。思春期の行動の問題は、決して「性」ばかりが原因ではありません。行動の原因を性的欲求と結びつけ、たとえばことばも不十分な自閉的な青年に自慰行為を教える大人がいます。無理やりに寝た子を起こした結果、性へのコントロールがきかず、社会不適応につながったりします。
 
 性については個人差も大きく、自然に逆らわず、気づきの時期を待っても決して遅くはありません。


相談員:湯汲英史(発達協会)言語聴覚士

A4−2.

■性的な衝動のコントロールについては、父親が同性の先輩として伝えるのがよいでしょう。運動も一つの解消方法ですが、爽快感や達成感を味わえるようにしましょう。

 母親は、子どもが女の子の場合、同性でもあり、経験もあるので、自然に対応できることが多いようですが、男の子が異性に対する興味や関心を示すと、わが子が悪くなったと思うことが多いようです。しかし、これはある年齢に達した子にとっては自然な成長です。男の子の場合、同性のお父さんが先輩としてどのように性衝動をコントロールしたらよいのかを教えていくとよいでしょう。

 性衝動を運動で解消することもひとつの方法ですが、ただ動きまわって疲れさせれば安心というものではありません。運動による爽快感、満足感、達成感、また運動への興味を拡げていくことが大切です。そうすることで性への関心ばかりにとらわれることなく、意識が外に向いていきます。

 取り組む運動の適量がどのくらいかは子どもによって違いますが、汗をしっかりとかくくらいの運動量がないと爽快感、満足感は得られません。本格的なスポーツをする必要はありませんが、小手先の技能よりも、体力を使う方が適しています。タイムを測って記録したり、目標を決めて挑戦したりすることを続けていくなかで、市民マラソン大会に参加することを趣味として日々練習に励んでいる人もいます。一人では難しいのですが、サッカーやバスケットボールなどは、技術面からも達成感を持つことができますね。

 普段子どもと接したことのないお父さんが、急に性衝動の抑え方を教えようとしても、うまく対応することはできないでしょう。普段から子どもと一緒の時間を作り、気楽に付き合える関係を作っておくことは、思春期を迎える前の子を持つ父親の課題といえます。 


相談員:倉持親優(発達協会)社会福祉士

  
Q3

いまは自分自身の障害のことをあまり意識していないようです。今後、どのように受け入れさせていけばいいでしょうか。

A3

■ほかの人と「違っていて当り前」ということを伝え、本人の自己受容を促していきましょう。

 小学校5年生になったダウン症の女の子が、「自分の顔が他の人と違う」と話すようになりました。ご両親から、このことへの対応について相談されたことがあります。ひとと自分の違いに気づき出すのは、一般的にはおおむね3歳台です。違いに気づき出したことは、発達的に見れば当然のことといえます。ただその頃には、「好き嫌い」もはっきりしだします。「違うことへの気づき」が、「ひとと違う自分が嫌い」になってもらっては困ります。自分には、ほかの人と違う自分だけの名前があります。名前の話などを使い、違っていて当り前なことを話します。特に日本では、人と違っていることが「ヘンなこと」、「いけないこと」と捉えられがちです。「違っていていいのだ」という考え方を、まずはまわりの大人が持つ必要があります。 
 こういう時に禁物なのが笑ってごまかすことです。子どもはある時期までは、まわりから笑われることを喜びます。ところが、違いに気づき出す頃になると、「笑われる」と怒り出すようになります。きっと、ばかにされたと思うからなのでしょう。子どもだと軽視せず、折りにふれ「違っていて当り前」ということを伝え、本人の自己受容を促していきたいものです。 

  
相談員:湯汲英史(発達協会)言語聴覚士

  
Q2

ホルモンのバランスが崩れて情緒不安定になった時、精神面でどんなケアをしたらよいでしょうか。感情がコントロールできず人に暴力をふるったりするのではと心配です。

A2

■思春期特有の感情の葛藤を理解しつつも、手をかけすぎず年齢相応の対応をすることが必要です。

 前思春期といわれる十歳頃からは、男性ホルモンや女性ホルモンの分泌が促進され、それ以降に異性への意識が高まってきます。ホルモンバランスの変化が精神的に影響する面としては、気持ちが昂揚することも考えられます。
 
 思春期というのは、発達の過程で「母子分離」や「自我の確立」が課題になってくる時期と捉えられるものですが、障害の有無に関わらず誰にでも多かれ少なかれ見られることで、これは自然の姿です。そして、この時期には、"自立したい"という気持ちと"甘えたい"という気持ちの葛藤がおこり、情緒不安定になります。精神的に幼くてその状態に達していない場合には、成人期以降に思春期の特徴が現れることがあります(私達は「心の思春期が訪れる」と言っています)が、いずれにしても、成長への一過程と捉えてうまく援助していくことが必要です。
 
 この時期までに、母子分離がうまくいっていなかったり自我や自信が育っていないと、大きな荒れになることがありますので、思春期になって慌てるのではなくて、学童期、遅くとも3、4年生からは母子分離の準備を始めたり、自分で考える姿勢や自我や自己尊重感を育てる取り組みをしていくことが大切になってきます。同時に、いけないことをした時には毅然と対応し、間違いを正していく姿勢ももちろん必要です。
 
 思春期になったら、ご家庭では、彼らの気持ちの葛藤を理解して、甘えたい気持ちを適度に受け入れ(甘えさせすぎはよくありません)、自立に向けて手をかけすぎずに援助し、年齢相応に対応するといったことが必要です。
 
 もし、あまりにもひどい荒れが見られるときには、くすりを利用するのもよいでしょう。全てがくすりで解決できるわけではないのですが、十ある激しさやひどさを、八〜七に抑えることで、本人と周囲の辛さを少しでも軽減できるのではないかと思います。そのような時には医師に相談してみてください。


相談員:石崎朝世(発達協会王子クリニック)医師

  
Q1

通所訓練施設に勤務している指導員です。担当しているK君のことで相談いたします。

 K君は現在中学3年生で自閉傾向があり、言語も少ない子どもです。けれどこれまでの様々な訓練や家庭での働きかけの中で、いろいろな力を獲得してきました。身の周りのことが一通りできるようになったこと、作業能力が高まってきたこと、人との関係を楽しめるようになってきたこと、物事へ取りくむ意欲が出てきたこと、がそれらの力です。まだまだ自分中心のところがある彼ですが、色々なことに興味を持て、日々の生活を楽しんでいる様子を見ると、生きる活力に溢れているようで、逞しささえ感じます。

  しかし、先日1年ぶりの合宿を行ない、気づかされたことがあります。それは、身の周りのことのマナーの悪さです。特に顕著だったのは食事場面です。こぼしには無頓着ですし、器はもたないし、かきこみはするし、「それはもう」という世界でした。私達が注意をすれば、気をつけるし、だんだん間接的な声かけで意識できるようになってはきます。しかし問題なのは、その時の彼の迷惑そうな顔です。言われたことを自分のこととして受けとめられずに、周りがうるさいから渋々といった様子がありありとしていました。

 K君だって小さい時は、それからのマナーについて学んできていて、技術的には十分できるはずなのです。けれどそれが本人の意識や自覚のところには浸透していなかったのです。良い面も沢山育ってきているのにとても残念なことでした。

 ご相談したいのは、食事場面に代表されるK君の生活面に欠けているところについて、本人の自覚に訴えていくことには、今後どういう働きかけが大切か、ということです。どうぞよろしくお願いいたします。

A1

■中学3年生というと、これから社会への巣立ちを目指して生活を充実させていく時期ですね。
人と一緒にいろいろ楽しむことができ、作業の取り組み意欲的で身辺面も一通り自立の段階にあるようでいい成長をされていると思います。幼い時から手を沢山使わせたり友だちと協力する作業をしたり、運動やゲームなどをするといった生活を積み重ねてきたからでしょう。


 けれども、まだこのままでは実際に通用するのは難しいと思います。小さい時から育ててきたはずの身辺処理の力の基礎がかなりゆるんでいて、特に食事においては始めからおさらいし直さなければならないと思います。なぜこのようなことになったのでしょう。

 K君が小さい頃、特に幼児時代は行動全体にまとまりがなく泣いたり騒いだりの日々で、人との付き合い方から身の回りのことなど、一から教えなければならなかったことでしょう。お家の方たちも必死になって真剣に様々なことに取り組んでいったと思うのですが、その努力のおかげで一応一人で食事ができるようになり、トイレで排泄ができ、着たり脱いだりが誰の助けも要らなくなると安心して、少しくらいおかしい所があっても「K君がするのだからこの辺でいいか、下手でも汚くても仕方ない」と適当なところ妥協し許してしまう、これはK君限らず大部分の人に共通するのではないでしょうか。

 また、一方では、本人が切り抜けていかなければならないことまで先廻りして注意を与えたり、やってあげての手出し口出しがあって、芯のところで自立をさせていないのですね。
 家の中と外を使い分けのできない不器用なK君たちです。いい加減なところで許されてしまうとそれでいいものだと思い込んで、どこに行っても同じいい加減なことをしてしまうのでしょう。

 基本的な生活習慣は家庭の中で力を養っていくものです。そしてできるようになったから気を抜き、手をゆるめるとすぐ元にもどってしまう子どもたち。毎日根気よく、きちんとやらないと気分が落ち着かない、というくらいにしっかり浸し込むまでやり続け、積み重ねていくことが大切でしょう。K君は注意されればきれいな食べ方ができるのですから、それだけの力はつけられているはずです。今までおかしさを指摘されないまま折角持っている立派な力を出し損ねていたのですね。食事だけではなく他の面でも丁寧にチェックしていくと問題がはっきり見えてくるものもありそうです。社会に出ていってからでは遅いので、今のうちに見直していくといいでしょう。

 また、時々家での様子をたしかめたり、合宿のような機会に実際の姿を知って家庭と一緒にすすめていけるように思います。
自立ということばに含まれるものにはいろいろありますが、本当の意味するものはどんなことでしょうか。技術的な面、例えばボタンをはめられるかはめられないかということもそうですが、それよりも、人に頼らないで自分から気づいて身の回りのことをきちんと処理していく力が育っていることを言うのではないでしょうか。

 彼への働きかけ方については、直接的な指摘から徐々に自分で気づけるように変えていくこと、朝誰かに起こしてもらったり、〜しなさいと指示されないでも、誰も何も言わなくても次はどうすればいいか考えて行動するように、周りを見たり、自分を振り返れる力をつけていきたいものです。

 社会に出ると一々指示したり助けたりしてくれません。誰か世話係をしてくれないかと甘えていては働くことができません。読み書き計算以前に身辺面の自立ができていないと世の中に受け入れられないというのが現実です。誰とでも気持ち良くつき合うためにはまず生活習慣を。

 いつまでも親がついているわけにはいかないし子どもも親を頼っていられないことを念頭に置きながらコツコツ一歩先をめざしていくように、特に家庭の生活に重点を置く指導をと思います。

相談員:神田 武子(発達協会)保育士