ADHDとは
■AD/HDとは何か
 最近、AD/HD(注意欠陥・多動性障害)への関心が高まってきています。まず、実際の子どもの姿を通して、AD/HDとは何かについて紹介します。

 Aくんは保育園の年長です。絵本の読み聞かせなどでは座っていられず、勝手に園庭に出たりします。気も散りやすく、興味が持てないことには、先生のいうことをまったく聞こうとしません。友達と遊びたいものの、順番が待てず、すぐにいさかいになってしまいます。急にほかの子を突き飛ばしたりと、乱暴が目立ちます。

 Bくんは小学校2年生。最近は、教室から出ていくことはなくなりましたが、授業中に他の子にちょっかいを出しては、嫌がられています。忘れ物も多く、何度いっても直りません。ただ、授業態度には問題があるものの、勉強がまったくわからないわけではありません。

  C子さんは小学校5年生です。授業中のおしゃべりが止まらず、まわりからうるさがられています。また、一言も二言も多く、友達を怒らせてしまい、責められていることもあります。

1.AD/HDの三つの特徴
 3人の子ども達の姿にはそれぞれ、AD/HDの特徴が現れています。ここで、その特徴をまとめてみます。

@多動性
 Aくんは座っていられず、Bくんは教室から飛び出していたとあります。他の子よりも動きが多いこういった状態を、多動性といいます。ただこの多動性は、年齢が進むと減少する傾向があります。かわりに、C子さんのように「お口の多動」ともいえる、ひっきりなしのおしゃべりが目立つようになることがあります。

A注意の転導性
 気が散りやすく、興味がもてない授業だとまったく集中できなかったりします。忘れ物も多いのですが、これは不注意のためと思われます。ただその反面で、自分が好きなことにはすごい集中を示すことがあります。何かを製作するときや受験などで、それこそ「寝食を忘れて取り組む」子たちもいます。このような極端な姿から、注意の範囲の狭いことや、注意を適度に保てないところに問題があるともされています。
 
B衝動性
 突然、園庭に飛び出す、ほかの子に乱暴するなど、衝動的な行動が見られることも特徴の一つです。この衝動性が原因でしばしば怪我をしたり、事故にもあいがちです。C子さんは、一言も二言も多いとありますが、自分を抑えることができずに、いけないとわかっていても、言葉に出してしまいます。多動の子たちは、心に浮かんだ最初のことばをいってしまうともいわれ、これもまた、衝動性の高さが原因と思われます。
 
2.その他の特徴
 このほかにも、同じことを繰り返し話したりする子もいます。このような強迫的な姿とともに、顔をしかめたり、声を出すなどのチック症状もしばしば見られます。また、ちょっとしたことで興奮してしまい、すぐにパニックを起こす子もいます。ただ、そういった興奮状態のあと、すぐに「ケロリ」としてしまうのも特徴の一つといえます。このように、すぐにケロリとできることも影響しているのか、失敗から学ぶことが苦手で、同じあやまちをおかしがちともされています。似たようなことですが、まわりから注意されても、行動の修正がなかなかスム−ズにいかない傾向があります。
 
 心理面の特徴として、うまくできなかったり、叱られることが多いためか、被害的に物事をとらえることが目立つ子たちもいます。こういう子たちからは、クラスのみんなから嫌われている、いじめられているといった話が聞かれたりします。実際にそうである場合もありますが、極端に悪く受けとめていることも少なくありません。こういうときには、本人の誤解を解いていくことも必要となります。

子どもは一般的に、うまくいかなかったことの理由を、しばしば他の人やもの、場所のせいにしがちです。多動の子の中には、この責任の転嫁が目立つ子がいます。いくら説明されても、「自分は悪くない」とガンと主張し、それが変えられないこともあります。このために、素直に謝罪ができなかったりします。

3.発達障害とAD/HD
 このようなAD/HDですが、医学的な診断では、自閉性障害や知的障害があれば、AD/HDとは見なさないことになっています。自閉症や知的障害があっても、みんなが多動というわけではありませんが、たとえば自閉症で多動な子の場合、実際の子育てや指導場面では、自閉性障害とAD/HDが重なっていると考えた方が、子どもへの見方に整理がつきやすいと思います。また、AD/HDに向いているとされる対応が適用でき、つきあい方の糸口が見つかりやすくなります。

■月刊 発達教育より 湯汲 英史(発達協会)言語聴覚士