身辺自立の指導法

指導の目的身辺自立の指導目的とは?具体的な指導の前に是非お読みください。

 大人は、身の回りの始末をあらためて意識して行なうわけではありません。教わった記憶もほとんどありません。気づいたらできるようになっていて自動的に体が動いています。
 「自然にできた」と思っているのに教えるなんていったら、いったいどうやればいいのか見当がつきません。子どもも自分と同じに何となくいつかできるだろうと考えます。
 それが漠然と感じている「身辺自立」へのとらえ方でしょう。学校で習った記憶のある「読み書き算数」、「跳び箱鉄棒縄跳び」のたぐいの方がスゴイことに思えてきます。
 「身辺自立」との出会いは人生で記憶にならないほど初めの方です。教わらなかったわけでなく覚えていないだけです。
 子ども達にとって初めに出会う学びの場面であり、生活全般の基盤をつくっているのは「身辺自立」のシーンです。

■月刊 発達教育より 武藤 英夫(発達協会)臨床心理士


■誰に何をどう教えるのか

理解の中心が名詞である時期の指導のポイントを紹介します。この時期は、模倣できる動きが広がり、「同じにする」だけでなく、示された意味もつかめてくる時期だと考えています。

外出編

■交通機関の使用

■外食

■歩く

■歩く(つづき)

■買い物

■傘をさす

お手伝い編

■「お手伝い」の基本−その展開方法

■調理の手前のお手伝い−台拭き・配膳編

■お料理を手伝う

食事編

■食事場面での指導法−箸の使い方

■食事場面の指導法−器の持ち方・そしゃく編

■食事場面での指導法−技能面の指導を中心に

着替え編

■着替−ズボンやパンツ・靴の履き方

■着替−かぶりのシャツ編

■着替編−注意が途切れる場合の対応法

■ 着替編−4つのポイントとは

着替−ボタン編

■着替−くつした・前開きシャツ編

清潔編

■男児の排尿

■排泄のトレーニング

■清潔編−髪を洗う

そのほか

■時間

■電話をかける

番外編

■夏の思い出

 

■誰に何をどう教えるのか

理解の中心が名詞である時期は、目安が使えるようになるだけではなく、模倣できる動きが広がって「見本と同じにすること」のほか、示された意味もつかめてくる時期だと考えています。
 身近な範囲の名詞がわかって、言われた物を手渡せるようになる子や、サインをまねるだけでなく、「トイレ」と伝える手段に使える子もいます。
 大人の指示に応じられる場面が増える一方で、実際にはパターンや名詞の断片で行動している場合があります。
 この時期は、何となく動くのではなく、行動の流れを左右するキーとして、目安を使えるようになってほしいものです。

●この時期のポイント

@ 行動を変えるキーとして目安を使う
 目安の導入として思い浮かぶのが、服の前後マークです(写真1)。大人は、判断基準として目安を求める傾向があり、そうしたマークさえあれば、当然子どももわかって動けるだろうと思いがちです。ところが、「目安」「適切な行動を促す助け」「行動」のそれぞれがつながっていかないと、子どもは動き始めません。
 「マーク」ということばと「探す促し」「マークへの指差し」という動きで、マークを持ち着始める流れにつなげていきます。
 信号を教える時も「アオハススメ」と言うだけでは動かない人が多くいます。ここで「歩く」のサインを仲立ちにすると行動が誘発されやすいようです。
 写真カードも「トイレ」「歯磨き」「車」など、名詞だけの対応でなく、その行動と結びつけられると本人の表現へと展開していきます。



A 手順:見通し
 写真やシンボルと行動が結びついてくると、手順やスケジュール表示にそれを使うことができます。
 着替えや歯磨き、入浴といった手順の長いものに、写真や絵でするべきことを示せると、本人もいちいち指示されず自分でやれたという感じが持ててよいです(写真2)
 一覧表示だとどこを見たらよいのかわからない人には、一手順ずつ区切って裏返したり、めくるかたちにするとわかりやすいです。
 一手順終わると「めくる」という手続きが加わるので、注意が途切れてこれからめくるのか、もうめくり終わったのかわからなくなる人は、手順の区切れ目で間髪入れずめくる動作を促して練習します。
 学校、車、スーパー、公園など写真にとってスケジュール表示で使うと、イライラしていた子が落ち着くことがあります。先のことが見通せずいかに不安だったことか。
 もっとも逆に、先が見通せると予定外の事柄に過敏になる人もいるので、さらに説明する対応が求められます。

B 成否判断の導入
 自分のしたことがうまくいったのか、そうでなく間違い・失敗だったのか。大人の指摘でなく、自分で判断できると、自分からうまくいく方向にがんばることができます。私たちは、子ども自身が表示できることから○(マル)と×(バツ)をよく使います。
 教え始めは、たとえば、ボールキャッチなど「手元にあるとマル」「取れないとバツ」のように『証拠』が明確な題材で行ないます。「バツ」と言われても「だからどうしたの?」と何も感じないという反応の人も多いので、「マル」と「バツ」での大人のリアクションを派手に、差をつけて天国と地獄のように示します。はたで見ていると「バツ」の示し方が「キビシイ」と言われることもありますが。
 このなかで「できれば、『バツ』でなく『マル』がいい」という価値観や感情も伝えるので、自分の間違いや失敗を認めない人や過敏に反応する人も現れます。
 そうした場合も含めて、違いがわかり、結果から冷静に「バツ」だと判断がつくことをほめたり、「失敗しても泣かない人が立派」というやりとりに移っていきます。失敗をバネにして、うまくいくためには、どうするのか対応する方向に気持ちを向けていきます。
 身辺面の指導のなかでは、すべき手順をしたか、きちんとやれているか、などチェック表で本人に確認する場面でもマルとバツが使われます(図1)

 



■月刊 発達教育より 武藤 英夫(発達協会)臨床心理士

 

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