子育てが楽になることばかけ 
関わりことば26

湯汲英史 著
マンガ・イラスト 齊藤 恵


「関わりことば」とは、こどものコミュニケーション力を伸ばし、
社会性をはぐくむことばのこと。
「そっと」「だめ」「できた」「大丈夫」「いっしょに」など、
子育てが楽になる魔法のことばをコミックでわかりやすく
解説しています。

仕様 四六判 168ページ
定価:1,760円(10%税込)
発行 鈴木出版


目次
はじめに
1「そっと」・・・行動をコントロールする力を高めることば
2「大事、大切」・・・人や物への理解を深めることば
3「だめ」・・・自分で判断できるようにすることば
4「できた」・・・気持ちを落ち着かせてくれることば
6「~やって、~して」・・・聞く力・理解する力を高めることば
7「いっしょに」・・・人への関心を持たせ、社会性を育てることば
8「~したら、○○ね」・・・相手の考えを受け入れるためのことば
9「はんぶんこ」・・・相手への思いやりを促すことば
10「あげる-もらう」・・・相手との関わりを考えさせることば
11「貸して」・・・≪所有≫について理解させることば
12「~の仕事」・・・≪物事の決定権≫を教えてくれることば
13「大きくなったね」・・・自分への見方を肯定的にすることば
14「楽しかったね」・・・自分の気持ちを表現することば
15「残念、仕方がない」・・・気持ちをコントロールする力をつけることば
16「だって」・・・考えをまとめ、相手の理解を促すことば
17「さみしい」・・・人と関わりたい気持ちを強めることば
18「怖い顔をしない」・・・ほかの人の感じ方を教えてくれることば
19「好き」・・・≪自分という存在≫に気づかせることば
20「名前」・・・人への意識を確かなものにすることば
21「おはようございます」・・・仲間への配慮を表すことば
22「順番」・・・仲間集団を意識させることば
23「わざとじゃない」・・・人の内面に気づかせることば
24「上手」・・・必ずできるという自信を持たせることば
25「さようなら」・・・未来のことを想像させることば
26「ありがとう」・・・感謝の気持ちを教えることば
おわりに

鈴木出版『子育てが楽になることばかけ 関わりことば26』
湯汲英史(著者)X 齊藤恵(マンガ家) 対談

 


このたび、『子育てが楽になることばかけ 関わりことば26』を刊行しました。本書は、2006年に刊行し、ご好評いただいている『子どもが伸びる 関わりことば26』を育児本として、より気軽に読んでもらうために、マンガを織り交ぜ、さらに充実した内容にまとめたものです。
マンガを担当していただいたのは、マンガ家兼イラストレーターの齊藤恵さん。以前、齊藤さんの息子さんが発達協会の療育指導を受けていたということもあり、二人には20年来の親交があります。本書は、二人のコラボレーションで生まれた渾身の1冊。今回は、この本に対する思いを語っていただきました。(インタビュー:鈴木出版)

――本書では、「そっと」「大事・大切」「大丈夫」「いっしょに」など、子どもの発達に欠かせない26の言葉を紹介しています。「関わりことば」とは、湯汲先生が命名された造語ということですが、どのような経緯で生まれたのですか?

湯汲:私は言語聴覚士として発達につまずきのある子ども達のコミュニケーション指導に携わっています。指導としては、名詞・動詞、文章の作り方を教える、気持ちを言葉にする方法を教えるというのが大きな柱になりますが、この仕事を30年以上やってきて、単語を教えること、文章にすることが本当に重要なのかと疑問を感じるようになりました。その一方で、子どもは何をもって物事を判断しているのだろうと考えるようになりました。例えば、「勝ち・負け」の判断基準は1歳にはないけれど、4歳代では出てくる。「善・悪」の判断基準も6歳くらいから出てくる。果たしてその「判断基準」は、どのように発達していくのか…と考えるようになったのです。
そこで、お母さん達に協力してもらって、子どもが「いつごろ、こういう判断をするようになる」といった研究を始めました。その中で、子どもの判断基準を助けてくれる「言葉かけ」があるのでは、と考えるようになったのです。子どもが他の人との関わり方や自分自身をどうとらえるか、どう判断していくかという時に、何か言語が介在しているに違いないと考え、言葉を探していったのです。
保育園の巡回相談をやっている時のことです。子どもが机の上からスプーンやコップを落とすと、「大事だから落としてはいけません」と注意する先生がいました。そういえば、こういう時、大人って「大事だから」とか「大切だから」とみんな同じことを言うんですよね。きっと何か基準があり、子どもに教えたいことがあるからだろうと思ったのです。

――そういった、子どもの発達を助けてくれる言葉が「関わりことば」であり、大人は子どもとの関わりの中で意識的にかけていきたい言葉なのですね。

湯汲:「いっしょに」は2歳代の子どもが使うようになりますが、数か月経つとあまり言わなくなる。それは、判断基準が自分の身に付いて、判断の基礎になり、当たり前のことになったので、言わなくなるんだなって思ったのです。判断基準を学習しながら、自分の中に取り込む。そのことによって社会性が発達していくのです。
一方、みんなと「いっしょに」やれず、先生に注意される子がいますが、そういう子は、「いっしょに」という判断基準を身に付けていない可能性があります。そういう時にいくら注意しても効きません。それどころか注意された子どもは、「先生は僕のことが嫌いだから怒るんだ」といった被害的な考えになってしまうことがあります。
このように「大事・大切」「いっしょに」など、社会の中で生きていくために必要な基準となる共通の言葉があり、それらを「関わりことば」と命名しました。「関わりことば」は知識というより、知恵みないなもの。だいたい1~4歳までに獲得していく言葉で、集団を形成する5歳くらいまでに獲得しておくべきではないかと思います。これが獲得できていないとうまく集団に入れない。うちのクリニックには、知的障害を伴わず、学力は非常に優秀な子も来ます。しかし何が問題かというと、やはり集団の中に入っていくための基準を獲得していないのだと感じます。



対談

「関わりことば」には、集団の中で生きていくための知恵が込められているのです
(湯汲)


――そこで今回、より多くの親や保育者に対して「関わりことば」を知ってほしいということで、読みやすいコミック版を発行することにしました。齊藤さんは「関わりことば」についてご存知でしたか?

齊藤:お仕事をいただいた時は、もう子どもが大きくなっていたので、「関わりことば」を子育て中に意識的に取り入れたことはありませんでした。マンガを描くにあたり、コミック版の元となった『子どもが伸びる 関わりことば26』を読ませていただきましたが、その時、いろいろな場面がバーっと頭に浮かんできました。その場面というのは、私には発達に障害のある息子の子育て経験があるので、その息子との場面も多いのですが、下の娘のことだったり、子どもの友達のこと、自分の小さい頃のことだったり。だからこそ、「関わりことば」って、発達障害がある、ないに関わらず、親が知っておいて子どもに教えていくべき言葉だなと痛感しました。もし子育て中に私がこれを知っていたら発達に障害のある息子だけでなく、下の娘にも取り入れていきたかったなと思います。
例えば「いっしょに」の場合、「いっしょに」をそもそも理解していないからできない場合があったりとか、「いっしょに」ができるようになると、その先「模倣をする、他の人と合わせていく」など、次の大切な社会的発達につながっていくことなど、子どもと関わる人は、それをわかっていて教えるのと、わかっていないで教えるのでは、全然違ってくると思います。

――齊藤さんのマンガは、ストーリーや状況がリアルで、まさに子育て経験がある方ならではだと思いました。

齊藤:子育て中は、悩みも多かったので、自分が経験したことから「こんなこともある、あんなこともある」って思いながら描いていました。

湯汲:読んでいて面白かったです。とってもリアルだなって思いました。

――今回、この本で取り上げた「関わりことば」には、「上手」「大きくなったね」「ありがとう」のように、子どもを認める言葉かけも多く含まれていますね。

湯汲:認められたいという気持ちを「社会的承認欲求」といいます。子どもは承認欲求が満たされないと不安定になります。できるだけ子どもには「ありがとう」を言いましょう、と本にも書きましたが、「ありがとう」は子どもに「自分は役に立つ存在」ということを伝え、精神的に安定します。親は小さいころからそういう視点で子どもを見ていくことが大切だと思います。

齊藤:今回、マンガを描いていて、親って無意識のうちに、縦糸と横糸を細かく編むように毎日丁寧に子どもに物事を教えていって、少しずつ成長を進めているのだなぁと感動しました。こうやって築いた土台があれば、子どもが思春期などに自分を否定されることがあったとしても、それを跳ね返していけるような力がついていく。やっぱり土台ができていないと崩れてしまう。最近は、そういう子が多いのかなって感じがします。

湯汲:人間は連続体なので、6歳になったからとか、12歳になったから、というように変身するわけではありません。毎日の積み重ねがあって、先に進めます。だからこそ、「判断基準」をひとつひとつクリアしていかなければならない。子どもが理解・納得して、当たり前にしておかないと、どこかでまたひっかかってしまうのです。先日、自分のやりたいことを優先して順番が守れず、すぐけんかしてしまう6歳の男の子がいました。その子は知的には全然劣っていないし、社会性もある。しかし、「順番を守る」というのは、通常3歳でできるようになることですが、この「順番」の理解をクリアしていない。クリアしていないと、集団に入っていけないから学校でもうまくいかなくなってしまいます。

 

対談

子育てで方向を見失って
しまった時の心強いガイドブックになると思います
(齊藤)


――親にとって「関わりことば」は、その意味や役割をしっかり理解しておくと、子育てに余裕が生まれる、そんな気がしますよね。

湯汲:「関わりことば」は、特別な言葉ではなく、自然に子どもと関わっていると大多数の人が言ってしまう言葉です。なぜみんな同じことを言うのかというと、それはたぶん社会性も含めて、集団の中で生きていくための知恵みたいなものが込められた言葉なのだと思います。

-齊藤さんは、子育ての経験もふまえて、とてもパワフルなマンガを描いてくださいましたが、読者にどのようなことを伝えたいと思って描かれましたか?

齊藤:子育て中、私もずいぶん迷ったり、なかなか結果がでなくて苦しんだりした時期がありました。そんな時、もしこの本を読んでいたら、見通しがついて楽になっていたと思うんです。今、子育て中で、方向を見失ってしまったり、うまくいかなかったりしている人にとって、こういうガイドブックがあるというのは、ものすごく心強いと思います。

――齊藤さんは、この本の「おわりに」で、読んでくださったみなさんの「毎日に笑顔と余裕が増えたなら、これほどすてきなことはない」と書いていましたが、本当にそうあってほしいですね。

齊藤:自分自身もそうでしたが、やはり子育て中は余裕がないんですよね。だけど本当は、もっと面白くて、楽しいことがたくさんあったはずだと思うのです。それを眉間にしわを寄せてやっていたというのは、もったいなかったかなって。

湯汲:そう、楽しまなくてはいけませんね。でも子育てって、特に子どもに言葉や思いが伝わらないとうんざりしてしまう。疲れてしまって・・・。でも、うんざりした状態で子どもと関わることは、まちがいなくマイナスでしかないんです。この本が、子育てにうんざりせず、余裕をもって楽しめるようなガイドブックになるといいな、と願っています。



プロフィール

湯汲英史(ゆくみ・えいし)
言語聴覚士・精神保健福祉士 早稲田大学第一文学部卒
公益社団法人発達協会 王子クリニック リハビリテーション室、同協会常務理事
早稲田大学非常勤講師、練馬区保育園および学童保育巡回相談員など
『「わがまま」といわれる子どもたち』(鈴木出版)、『切りかえことば22』(鈴木出版)、『発達促進ドリル』(鈴木出版)、『なぜ伝わらないのか、どうしたら伝わるのか』(大揚社)、『決定権を誤解する子、理由を言えない子』(かもがわ出版)など著書多数

齊藤恵(さいとう・めぐみ)
マンガ家・イラストレーター。主な著書に『子育てはつらいよ!』(家の光協会)、他に『赤ちゃんの小児科BOOK』(他、赤ちゃんのBOOKシリーズ、小西行郎・小西薫著/海竜社)、『子どもの本当の気持ちが見えるようになる本』(原坂一郎著/すばる舎)、『アドラー博士が教える 10代の子には「親の話し方」を変えなさい』(星一郎 著/青春出版社)など、主に子どもに関する書籍のイラストとマンガを担当




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