職員の読書日記 職員の読書日記

このページでは、職員の読書日記を紹介いたします。
発達協会の職員である私たちが、出会った本の感想などを紹介するページです。


第30回

『知的障害や発達障害のある人とのコミュニケーションのトリセツ』

(坂井聡/著 エンパワメント研究所/出版社 本体1,800円+税)


公益社団法人発達協会 療育部 染谷里沙(精神保健福祉士)

「コミュニケーションのトリセツ」というタイトルと表紙のイラストを見て、「視覚的なツール等の紹介?」と内容を想像しながら、筆者は本書を開きました。しかし、本書の著者は長年特別支援教育に携わる香川大学の坂井聡先生です。筆者の想像を遥かに超え、圧倒されてしまうほど「支援の本質」に迫った内容が展開され、いつの間にか筆者は、自分自身の日頃の療育を見直し反省していました。

“障害があるとはどういうことか”、“診断は何のためにつくのか”、“困難とは何か”療育をしている時は、目の前のことにいっぱいいっぱいでなかなか考える機会がありません。しかし、そういった核心について坂井先生は深く考え、支援のあるべき方向性を示しています。その中で重要なことの一つは、障害のある人たちの「自己決定」「自己選択」であり、だからこそ「意思を伝えるための支援」に必要な具体的なアイデアやツールが写真付きで紹介されています。 また、支援の一つにスケジュール等の「構造化」のお話もありました。構造化すると見通しが持て、安心して行動しやすくなるのです。しかし、注意点として坂井先生は「構造化は、行動を管理するために行うのではない」とご自身の失敗談とともに述べています。

支援は、どこまでもご本人のために。指導・支援を見直し考えるきっかけとなり、また「クスッ」と笑える所もあり、事例も豊富で大変読みやすい一冊です。ぜひ読んでみてください。




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