職員の読書日記 職員の読書日記

このページでは、職員の読書日記を紹介いたします。
発達協会の職員である私たちが、出会った本の感想などを紹介するページです。


第31回

『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に働くための本』

(對馬陽一郎/著 翔泳社/出版社 定価/本体1,600円+税)


公益社団法人 発達協会 王子クリニック  鈴木さやか(言語聴覚士)

リハビリテーション室にいらっしゃるお子さんたち本人から、または保護者の方から、「集中力が続かない」「分かっているのにケアレスミスが多い」「忘れ物、失くしものが多い」等々、沢山の『困りごと』の相談を受けます。これらはどれも学生の時期ならば、学校で苦労していることが想像できます。周囲から“やる気がない”等と誤解されて評価が下がり、本人の自己肯定感も下がってしまうという状況になることも少なくないと思います。本人なりの対処の仕方を身に付けることができ、徐々に改善されていく方も多いですが、社会に出た後もこれらの『困りごと』を抱えておられる方もいらっしゃいます。保護者の方から「大人になったときに働けるのでしょうか…?」といった不安の声をお聞きすることもあります。では、多くの『困りごと』を抱える方たちに、支援する立場の私たちはどんなことを提案していけるとよいのでしょうか。

この本の著者は、発達障害など様々な障害を持つ方へ向けて職業訓練を行っている就労移行支援事業所にて、パソコンや事務作業を中心とした職業訓練を実際に担当されています。そのため、今の仕事や会社で頑張っていきたいという方に向けて、特にオフィスでの仕事の仕方に的を絞った内容になっています。発達障害を持つ方がオフィスの中で直面する様々な悩みの事例が挙げられ、どのような原因で事例の特性が出ているのかを医学的な面からも解説されているので、発達障害を持つ方がどうして仕事上で困ってしまうのかも理解しながら読み進めていくことができます。そして、施設での実例がベースになっており、すぐに使える上手に働くための工夫が満載です。こうした工夫がイラストや写真を多く用いて紹介されている点も、見て分かりやすく、本書のおすすめポイントだと思います。本書で紹介されている工夫は、実際にお仕事をされている方だけでなく、学齢期のお子さんにも使えるものだと思います。工夫によって『困りごと』が軽減されれば、本人が自信をもって取り組めることが増え将来の自立につながることでしょう。『困りごと』を抱えている方たちにとって、支援する私たちにとっても沢山のヒントをもらえる一冊です。




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