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医療コラム3. 小児の言語障害の種類と原因 本間慎治(言語聴覚士)

2024.09.13

小児に多く見られる言語障害として、以下のものがあります。

1.聴覚障害

聴覚障害によって、音声言語の入力に困難や制限が生じることで、音声言語理解の遅れや構音の誤りが見られることがあります。聴力の程度により、手話の習得、補聴器や人工内耳の装用による聴覚活用等を進めていきます。

標準的な純音聴力検査では、125Hz、250Hz、500Hz、1,000Hz、2,000Hz、4,000Hz、8,000Hzの7つの周波数の聞こえを測定します。30dB未満の音の強さで聞き取ることができると、正常範囲内とされています。音を伝える外耳や中耳、音を脳に送る役割を果たす内耳、音を伝える聴神経、音を認識する大脳の聴覚野のいずれかに障害が生じると、その程度により聞こえや言語音の聞き取り能力が低下します。全く音が聞き取れない方から、特定の高さの音のみが聞き取れない方、滲出性中耳炎等により一時的に聞こえが低下している方など聞こえの低下の程度や状態は様々です。一般的に、片耳が全く聞こえなくても、もう一方の耳の聞こえが正常範囲の場合、言語発達への影響は見られないとされています。


城丸みさと:聴覚障害Ⅰ,第3章,p49,山田弘幸 佐場野優一編,建帛社,2000.


2.知的能力障害

知的発達の遅れにより、言語理解・表出にも遅れを伴うことが多く見られます。大脳の機能として、言語理解をつかさどる領域(ウェルニッケ野)と言語表出をつかさどる領域(ブローカ野)は分かれているため、理解と表出の両方に遅れが見られる方ばかりでなく、理解に比べて特に表出面に遅れが目立つ方、理解はできていなくてもCMのフレーズなどは正しく話せる方などのタイプが見られます。理解の程度も、ことばの理解ができない段階の方から、助詞の意味や受動態などの理解や表出はできるけれど発話の意図やニュアンスの違いなどが理解できない方など様々です。

寺村衆一:言語聴覚障害総論Ⅱ,第2章,p25,山崎京子編,建帛社,2000.

3.コミュニケーション障害 

自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症により、他者とのコミュニケーションが円滑に成立しないことが見られます。知的能力障害と合併している場合が多く見られます。 相手の声のトーンや表情・態度などから意図を察する、他者の意見を受け入れる、急な判断ができず何も言えなくなってしまう、思いつくと制止されていると分かっていても止まれないなどの行動が見られることがあります。結果として、社会生活上困難が生じてしまい、学生生活や職業生活が維持できないなど社会的不利益を被る場合が見られます。 

4.流暢性の障害

吃音や場面緘黙症など、思うように音声表出ができない症状があります。

 吃音の症状には、最初の音を繰り返す、ことばが出てこないといった分かりやすい症状のほか、身体を揺らしてことばを出そうとするといった身体症状を伴うこともあります。一般的に、音読や歌唱場面では症状が出にくい方が多いようです。

場面緘黙のお子さんを考える上で重要なことは、「しゃべらない」のではなく「しゃべりたいのにしゃべれない」という点です。書字やスマホアプリなど、表現可能なツールを探してコミュニケーションを楽しみましょう。なお、臨床経験上、自閉性スペクトラム症の方で、こだわりの一つとして「ここではしゃべらない」と決めてしまう場合もあるように感じています。

5.語音障害/構音障害

口唇口蓋裂あるいは原因が特定できない発音の誤り、脳外傷や脳性麻痺等による運動障害性の構音障害が見られます。 口唇口蓋裂の方は、多くは出生時に発見されます。哺乳が難しくなる場合がありますので、専門機関との連係が早期から必要となります。その後、手術等を経て、日本語音を産生するための口唇や舌の使い方を学びます。

機能性構音障害と呼ばれる『原因は特定できないが発音が誤っている状態』があります。自然な改善が見られない場合には、音韻発達の観点から、4歳過ぎを目安に指導を開始します。日本語音産生のための口唇や舌の使い方を学ぶことは、口唇口蓋裂の方と同様です。発達性協調運動障害がかかわる場合も見られるように思います。

脳外傷や脳性麻痺による運動障害の場合、口唇や舌などの構音器官の運動範囲やパワー、速度が低下あるいは自律的にコントロールできないという症状を呈します。

6.学習障害/読み書きの障害

文字言語の読み、理解、書字に困難が生じることがあります。お子さんが有している認知能力から考えて学習が可能と思われるにもかかわらず、ひらがな、カタカナ、漢字の読み、書きあるいはその両方の学習に困難が見られる状態です。形の視覚的認知・再生、語彙の広がり、音韻発達などとの関連が考えられています。眼球の運動や白い紙をまぶしく感じてしまうことなどが影響することも考えられます。

 以上、小児にみられる主な言語障害を上げましたが、これらは、重なっていることも少なくなく、客観的に評価を行い、理解あるかかわりや治療的な対応につなげることが大切と思います。